腕枕をそっと外されそうになるのを感じて目が覚めた。
「ん、朝…?」
「あぁゴメン起こした?まだ寝てていいよ。勝手に出てくからゆっくりしてって」
俺とは全然違う逞しい腕が今度は遠慮なく抜かれて、ソファの下の散らばった服を拾う。
まだ半分微睡みながら潤くんの背中が遠くなるのを見送って…シャワーの音を聞ききながらまた目を閉じた。
………嗚呼そうか、あのままソファで寝ちゃったんだ。
2人で寝られるくらい十分デカいソファなんてこの人やっぱ成功者だわ。
あ。
てかあの人いんじゃん。
潤くんが出てったらまた大野さんと二人きりじゃん。
起きてくる前に俺もここを出よう。
あの人はややこしい。
結局俺のことはどうでもいいのか
潤くんのことが好きなのか
潤くんとの始まりがややこしい上にあの人の気持ちもややこしい。
いっそ3人で腹割って話した方が…
いやそんな馬鹿らしい、大の男が何をそんな…
そんな……
………あー…やっぱ眠ぃ……
玄関の閉まる音がして現実に引き戻された。
何時だ?
寝てた?
どれくらい寝た?
慌てて身体を起こすとぺたぺたと廊下を歩く音が近付いてきて、
───もちろんそれは潤くんの足音とはちがうもので───
ドアが開いた。
「………あ」
「おはよ。よく寝た?」
この関係が始まってからほとんど無表情だったのに、自分の気持ちに整理がついたのか
俺にそれを伝えられたからなのか妙に笑顔が増えた気がする。
「や…うん」
下着しか身につけてないのを変に隠すのもわざとらしいから、まるでいつも裸で寝てるかのように
さも起きてすぐ外着になるかのように床のTシャツやらなんやらを拾ってそれを被った。
「なんでベッドで寝なかったの?」
ピクっと一瞬動きが止まったのを悟られないように無駄に携帯なんか確認しちゃって。
「なんでって…」
「俺と潤くんが寝てるベッドって入ってきづらい?」
………あれ、この人気付いてないのかな。
「あー…まぁ、うん…別に。ゲームとかしてたし」
隠すのもおかしいけど『そういうこと』をして寝落ちしたのをわざわざ言うことでもないし。
携帯は誰からの連絡もなかったから
今が10時近くだってことだけ確認した。
「ふーん。潤くんにいっぱい可愛いって言ってもらえてよかったね」
「っ、は?」
「そういう行為をゲームなんて言い方すんのダメだよ」
───見て、た?
見られてた?
てか俺の言った「ゲーム」は普通にゲームのことであってえっちのことじゃないし。
なんてわざわざ説明するのもおかしいし。
「可愛いは愛されることだもんね」
人のことはおもちゃみたいに扱う癖に。
フラフラしながらあっちともこっちとも簡単にしちゃう癖に。
あんたが1番ゲーム感覚でやってんじゃん。
「………なに」
「抜け駆け狡いよ。俺とは途中なのに」
だってあんたは俺のことはもう好きじゃないって言ったじゃない。
潤くんの方が良くなったんじゃないの?
なんで俺に絡むのよ。
そう言いたいのに簡単に俺はまたソファに沈められて。
「可愛い、ね」
どういうつもりでそんなキスするの。