どういうつもりでこの人は俺んちに上がろうとしてるんだろう。

「すげぇニノんち玄関がオートロックなの!?ホテルみたいじゃん」
一向に警戒心を解かない俺に潤くんは作ったように明るく話しかけてくる。

わざとらしく俺のマネージャーの車に一緒に乗って
俺んち着いたら「おつかれー俺もここでいいよ」ってなんだよそれ。


「翔くん今日は?いるのかと思ってた」

「翔さんは地方ロケ。多分泊まりか・・・どっちにしろ遅いから来ないよ」
飲み物はとりあえずビールと・・・あ、これ賞味期限もうすぐじゃん。
食べてもらっちゃおう。
スカスカの冷蔵庫を見渡して適当に見繕う。

「・・・知ってるよ」
「ん?なんか言った?」

「んーん。なんも言ってないよ。翔くん忙しいね」

翔さんがいたら3人で何話す気だったんだろこの人。
ほんと何考えてるかわかんなくて怖い。



他愛もない話をしてビールの空き缶が増えてって
段々潤くんが饒舌になってく。

「・・・ニノ幸せ?」
ビールをやめた潤くんが焼酎を作りながら突然そんなことを言い出した。

「翔くんといて幸せ?」

―――これを、聞きに来たんだろう。

その真っ直ぐな目で見られてないだけまだマシで、俺は余裕のフリして答える。

「何言ってんの。そんな気持ち悪いこと聞かないでよ」

はははって潤くんも笑うから少し俺はほっとして。
「そりゃもう愛されてますからね」
残り少ないビールを飲み干した。


テレビは俺の好きな芸人さんが出てきて後輩芸人との食事シーンを隠し撮りされてる。
これ俺やられたらやだなぁなんてワイプの彼に同情してみる。



「俺も」

「・・・ハイ?」
「俺もそうだって言ったら?」

テレビから視線を移すと潤くんはすっと俺を見据えてる。

俺はその目が怖くて。
何もかも見透かされてそうで、口先の言葉なんか意味はなくなるから。

「あの日から、ううん。あの日なんて関係ない。
ずっと、ずっと俺の気持ちは何にも変わってないって言ったら?」

―――潤くんは怖い。

「なに・・・言ってんの」
「俺も愛してるよ」

潤くんは真っ直ぐ過ぎて。


「なんで俺と別れたかったの」


潤くんは怖い。