「相葉さんてさぁ、好きな人とかいないの?」
雑誌を読んでた潤くんがこっちをちらりとも見ずに言った。
「何いきなり。潤くん彼女とうまくいってないの?」
「彼女なんていねぇよ」
「そうだっけ?」
俺は平静を装って答えたけど、内心すごくどきどきしていた。
「なんかぁ、全然女の影ないじゃん?一途に想ってる人とかいんのかなーって」
つまんなそうに雑誌をぺらぺらとめくる。
「いちずに想う・・・ひと」
それはね、今俺の目の前にいるよ。
潤くんは冷めた目で俺を一瞥すると、また視線を落とす。
なんでこんな俺に興味ないひとを、俺はずっとすきなんだろう。
「まーいーやどっちでも。コーヒー飲む?」
「あ、うん」
潤くんは壁際に置いてあるコーヒーメーカーの方に向かった。
きれいな後姿だな・・・。
「はい。ブラックでいい?」
「あ、うんありがと」
潤くんはまた雑誌を開く。
長いまつげ、形のいい唇、きれいな指・・・。
「ぅあっち!!!」
潤くんに見とれてたら熱々のコーヒーを思いのほか勢いよく口につけてしまった。
「ええー相葉さん・・・持ったら熱いのわかるでしょうに。水持ってくるよ」
「ありあと~。。。」
唇がひりひりする。
「ハイ水。・・・見せてみ?」
潤くんが至近距離で俺の顔を見る。
俺の唇に、手を添える。
(いやいやおかしいでしょ!なんでやけどした唇そんな近くで見てどうすんの!?)
そう言いたいけど潤くんの目を見ていると魔法のように従順になってしまう。
どんどん顔がちかづく。
「じゅ・・・」
「はい、口用の塗り薬」
そういうと小さいチューブを目の前に出した。
「俺最近荒れててさ。やけどにも効くっぽいよ」
口の左端を上げて不敵に笑った。
「な・・・」
・・・なぁんだ・・・・・・・・・・・・
「ははっ。キスでもすると思った?」
顔がまっかなのが自分でもわかる。
潤くんはひらりと体を起こすと楽屋から出て行ってしまった。
取り残された俺は、むなしくてむなしくて消えてしまいたくなった。
━─━─━─━─━─
潤くんからもらった薬は全然効かなくて。
じんじんじんじん痛みは消えず。
潤くんへの想いは全然消えなくて。
じんじんじんじん心が痛む。
俺が男じゃなかったら・・・
潤くんは俺をすきになったかな?
━─━─━─━─━─
「おっ相葉さん。唇治った?」
「何唇って。どうかしたの?」
スタジオの隅でリーダーと話してた潤くんが俺を見つけると遠くから声をかけてきた。
「激しいちゅーしたら相葉さん唇けがしちゃったの」
「ちゅ、ちゅ、ちゅーーー!?」
「してねーよ!!」
そうやっていつも俺を笑いものにして。
俺のきもちをばかにして。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
潤くん、俺のきもち、きづいてる!?
「なに、そんな驚いた顔して」
きづいてる・・・これは絶対、きづいてる・・・。
俺バカだからわかんなかった・・・。
「あっ俺ニノに呼ばれてたんだ。じゃ、またあとで」
リーダーはさっさとスタジオから出て行ってしまった。
潤くんはセットされた簡易テーブルにコーヒーを置くと、座ってスタッフの動きを眺めていた。
「潤くん・・・もしかして」
「ほんとにキスして欲しかった?」
また不敵に笑い、コーヒーを飲む。
「え・・・あの潤くん」
紙コップを置くと、潤くんは無邪気に笑った。
「そんぐらいのやけど舐めときゃ治るよ」
そう言うと、昨日みたいにひらりと体を起こして―――
「だいじょーぶ。スタッフには見られてないよ♪」
俺は何が起こったのかまったく理解できないまま、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「続きは・・・今夜がいい?」
またしても、潤くんは不敵に笑ったのだった。