触れている髪は、ふわふわで柔らかくて。
こぼれる涙は、ガラス玉のように美しくて。
俺は。
「翔ちゃん・・・」
ニノの涙を、指で拭う。
「全部俺に預けて。全部受け止めるから。俺がニノのこと、守るから・・・」
そっと、抱きしめる。
ニノは抵抗するかなとも思ったけど、そのまま俺の腕の中で泣きじゃくっていた。
ニノがこんなに感情を出すなんてびっくりした。
それは俺の前だからなのかな、なんて自惚れていいのかな?
ニノには悪いけど、ちょっと嬉しい俺がいた。
━─━─━─━─━─
その日以来、メンバーの仲は完全に元のように戻った。
リーダーと松潤はソファでいちゃこらしてるけど微笑ましいくらいだ。
そこに普通にニノが割り込んで松潤が軽くキレ、リーダーがなだめる。
何にも知らない相葉ちゃんが3人のやり取りに笑う。
新聞越しに見るこの光景が、すごく大切なものなんだと改めて思う。
「翔さんも新聞ばっか読んでないでなんか言ってくださいよ」
ふいにニノに呼びかけられ、俺は新聞を置いた。
「まぁまぁ皆のリーダーだから仲良くね」
そう言ってリーダーとニノの間に割り込む。
「いやいやいやいや翔さんあのですね」
「ひゃひゃひゃひゃ、翔ちゃんうまいね~」
ん?『うまい』?
相葉ちゃんは意味深にウィンクしてリーダーの横に無理やり座った。
「ちょっと相葉ちゃん俺空気椅子!!」
今や端に追いやられた松潤がソファから完全にはみ出している。
それを見てまた皆で笑った。
こんな感じで俺とニノは何にもないけど、前ほど焦らないしこのままでもいいかななんて思う自分もいたりして。
そんなことを考えながら廊下を歩く。
「何ニヤニヤしてんですか?」
ふいに後ろで声がした。
「ニノ!え、俺ニヤニヤしてた?やっべ恥ずかしい」
「ね、昨日DVD買ったんだけど・・・一緒に観ません?」
「えっ!?」
それって、それってそういうこと!?家に行くってこと!?
どういうつもり!?イヤ深い意味はないよな!?
俺はてんぱりすぎて頭に浮かぶ色々な疑問が全然言葉にならなかった。
「あ、なんのDVDか気になりますよね?」
俺が好きなあどけない目で覗き込むと続けた。
「『鍵のかかった部屋』。SPドラマの前におさらいしようと思って。また名前忘れちゃったし」
「ちょ、リーダーのドラマかよ!」
期待していいのかだめなのか・・・これじゃニノの心を侵食するなんてまだまだ先だな。
「翔さんと観たいんですよ」