「なんでこの前・・・途中でやめたの?」
そんなの答えられるわけがない。
なぜ?
なぜ聞けない?
だって、怖いから。
本当のことを聞くのが怖いから。
本当のこと?
智は俺を好きって言っているのに?
『聞イテミロ。・・・キットコウ答エテクレマスヨ』
声が聞こえる。
『知ってたの?本当は俺がニノを好きだってこと』
「潤くん!!」
智の声がして、俺は飛び起きた。
「・・・夢・・・」
「大丈夫?すごくうなされてたよ。汗もすごい」
「あ・・・」
朝の4時。まだ部屋は暗い。
ここは俺んちの・・・ベッド。
心配そうに智が顔を覗き込む。
あの初めての夜以来、何度もお互いの家に泊まってるけどしてはいない。
智の質問にも、「あの日はただ智といられるだけで満足しちゃった」とかなんとか言ってごまかしたんだ。
どうしてだろう。
智とすればするほど、逆にニノの存在が大きく影を落とす気がしてできない。
『ソンナコトデアノ人ヲ手ニ入レタト思ッテルンデスカ?』
そう、声が聞こえる気がして。
「大丈夫・・・夢見ただけ」
俺は智を抱きしめた。
「どんな夢?」
智が背中をさすってくれる。
目を閉じると、智をいっそう感じることができる。
「・・・なんか・・・超ゾンビに追いかけられた」
「ははっなにそれ。ゾンビドラマ観すぎだよ」
智のにおい。温度。声。
頼むから、俺から離れていかないで。
━─━─━─━─━─
「あれ」
智、携帯忘れてる。
昨日翔くんと飲んだらしく酔ってうちに来たから・・・。
今日の智のスケジュール・・・ニノと、二人きりのCM撮影だ。
俺は携帯を掴むと、現場に向かった。
スタジオを覗くと、まだ準備中のスタッフでいっぱいだった。
こっそりスタッフの人に楽屋を聞く。
楽屋に向かうとメイクさんらしき人が声をかけてきた。
「あの・・・今入らない方がいいと思いますよ。私出て行くように言われたので」
心臓が、大きく鳴った。
全身の血が引いて、目の前が暗くなった。
「あ、あの?」
「・・・や、ありがとう」
メイクさんは会釈すると喫煙室に入っていった。
・・・どうすればいい?
二人で何を話しているんだ?
どっちが二人になりたいと思ったんだ?
心臓は早鐘のように打って足が震える。
それでもなんとかドアの前に立った。
なにか・・・話しているのが聞こえる。
智の声?
すると突然。
「じゃあなんで潤くんを選んだんだよ!」
頭を殴られたような衝撃だった。
俺は、震える足の向きを変えると階段に向かった。
うまく走れなかったけど、急いでその場から離れた。
智の答えを、聞きたくなかったから。
きっと智はこう言うんだろ?
『違ウヨ。俺ガ本当ニ好キナノハニノナンダ・・・』