とりあえず、タクシーの運転手に自分のマンションまでお願いした。
『先に入ってて。コンビニで買い物してから入るから。』

そう言って部屋番号を教えて鍵を渡した。

「松本さん、私大丈夫ですから…」

『とりあえず、コンビニ行ってくる。』

彼女に背を向けて、コンビニに向かう。飲み物と食料を買って、自宅に戻ると彼女は携帯を手に玄関に座って俯いていた。

『遅くなって、ごめん。中に入っていればよかったのに…まずは、飲み物でも飲まない?』

暖かい紅茶を渡すも、いつもの笑顔はない。何を話していいかも分からず、コーヒーを開けて飲み始めた。

「昨日彼から、風邪を引いたって連絡が来たんです。メールを返しても返信がなくて、心配で電話したら女の人が出て…」

俯き携帯から目を逸らさず話す彼女。

「私がついてるから、大丈夫です。心配しないで下さいって。寝てるので、電源切りますねって電源まで切られてしまって…」

必死で泣くのを堪えている彼女を見たら、俺は抱きしめずにはいられなかった。タクシーに手を引っ張って乗せた時には気づかなかった。

『なんか、身体熱いけど…どれだけあそこにいたの?大丈夫?』

彼女の顔は、少し青ざめていた。

「寒いのは、気候のせいだと思ってた。」

ソファーに横になった彼女に毛布をかけると、そのまま眠ってしまった。