彼が来てくれた安心感から、眠ってしまった私。喉が渇いて目が覚めると、おでこには冷えピタが貼ってあった。そして、枕元には清涼飲料水が置いてある。
「カズ君…」

キッチンに向かえば、ソファーで寝ているカズ君を見つけた。少し肌寒い今夜、身体を丸くして寝ている。毛布をとりに戻って、カズ君にそっとかけた。と、同時にまた咳が止まらなくなる。苦しくてしゃがみ込むと、カズ君が起きて背中をさすってくれた。

『何してんのよ、こんなとこで…大丈夫か?苦しい?』

心配してくれている声に、なぜか涙がでてきた。もし、一人だったら…

『何泣いてんの?泣くほど苦しい?』

毛布をかけて、後ろから抱きしめられた。
彼の温もりを感じて、涙が止まらない。

「来てくれて、ありがとう。」

『明日の朝までいるから、安心して寝てろ。布団いくぞ。』

カズ君に手を引かれて、布団に戻る。

『いつもこんなに素直ならな~。』

ニヤっと笑って振り向く。朝には、すっきりと目が覚めた。喉はイガイガ痛いけど、熱は下がったみたい。隣には、カズ君がまだ寝ていた。

「よし、お礼に朝ご飯作ろう。」

キッチンに行くと、いくつもの菓子パンが置いてあった。きっと、カズ君が買ってくれたんだ。彼が好きなパンばかり…コーヒーだけ淹れて、ソファーに座った。

『また、無理する…どうして、大人しく寝ていられないんですかね~。』

後ろから頭をぺちっと叩かれた。

「痛い。もう、なんで叩くの?コーヒー淹れただけなのに…」

『熱は下がったみたいですね。看病した彼氏に文句が言えるんですから…昨日の素直なあなたは、幻でしたか。』

ニヤニヤと笑いながら、コーヒーをカップに入れて持ってきた。

『今日は、一日ゆっくり寝て下さいね。あっ、パンは僕のですよ。あなたは、こっち。』

指を指したところには、野菜たっぷりのスープがあった。さりげない優しさ…

私は、後ろからカズ君に抱きついた。

「ありがとう、カズ君。治ったら、お礼ちゃんとするね。大好きだよ。」

少し照れた顔…でも、仕事に行くことは内緒にしておこう。