遠慮なく肌に触れ。
何度も何度も重ねた唇は、より馴染んだ
ようにさえ思え。

考えることをやめたカラダは翔さんを全身で
感じていて。



理性を手放して向かっていく俺を、拒否る
こと無く受け止め続けてくれてる翔さんは、
目を閉じ吐息を零し。
漏れ出る声は密やかに低く掠れてて、見た
ことの無いその姿は、想像の遥か上を行く
艶やかさに満ちていて。


白い肌と、染まる頬───




雑に脱がして脱いで、マッパになって。
縺れるように入ったバスルーム。


手探りにシャワーを全開にして───




「うわっ!」


冷たさに仰け反った翔さんの首筋に唇を
落として舌先で舐め上げた。




「ばっヵ……、冷て───っ」


苦情の声も、耳を過ぎるだけ。

目の前の翔さんはそのくらいセクシャルな
魅力に溢れ、俺は止まる術を見失う。


降り注ぐシャワー。
少し熱めのお湯でバスルームの中は熱気が
立ち込め。

濡れて滑る肌が、互いの温度を上げてゆく。




目の端に映るボトルからボディーソープを
手に取って、腰から背中、内側へ。

広がる香りと増してゆく快 感────





あぁ、気持ちいい。

どうなってんだろ、コレ。



手のひらに触れる温度も、重なる肌から
伝わる熱も。
触れて、触れられ増してゆく快感に上限は
見えず。



見つめる瞼が震え、隙間から瞳が光を反射
して煌めくのにただ見惚れれば。

クスッと笑った翔さんがキスをくれる。





今日、何回目だろ?

たくさんしたね。




気持ちいいね……


気持ちいい────?





壁に押し付け、今唯一繋がれる唇を重ね、
舌先で交わって。

知らなかった肌を知り、上り詰めていく。





腰から滑らした指で、ソコに触れ。




「ぁっ……」



小さな抵抗と、縮むカラダに。



「いつか、しようね……?」



耳許で囁いて。
軽く触れ、少しだけ深く────




そこはそのまま。

腰を引いて、一緒に触れて。



知ってる世界でお互い弾けた。






















「……っマエ、ほんとヤダ。」




ぐったりとソファーに沈む翔さんの髪を
タオルで拭いてる俺に。
ずっと黙ってた翔さんが、文句を言う。

それは、まぁ……
結構あの狭さの中でガッツリと貪ったのと、
ちょっと中の方まで触ったことに対しての
クレームなのは知ってるけど。


でもさ。
あーんな色っぽいとか、こっちこそ想定外
だったんだから、ちょっと触ったくらいで
我慢出来た所を評価して欲しいよね?



あー……

思い出すだけでニヤける。




「うふふっ」



あ。
抑えきれなかったな、と思った瞬間。



「うふふ、じゃねー!……あー疲れた。」



怒られた。
シャワー出てから翔さんはずっとこんな感じで。


「あははっ、ゴメンてば。」


俺はずっと、謝ってる。
でも。



「ゴメンじゃねーんだよ……。何処に隠して
たんだよその肉食スイッチぃ……。」


「───ダメ?嫌いになる?」


「いやそんなんじゃなんねーけど!」



上目遣いに声張られても、今は超ご機嫌な
俺には効果は無い。



「───あ、……え、傷?」



ゆるゆる続けてたタオルドライも終わり。
バスルームの余韻からまだ抜け出せない中、
エロい目で翔さんのカラダを眺める視線に
僅かな違和感。

パンイチで背もたれにもたれかかっている
から見えた、ひきつれたみたいになってる
小さな痕に、手を伸ばして指で触れると。



「あ?……あー。ピアスしてたの、臍に。
 んふふっ、パリピ時代ね。」


「────痛そ……。」



弱く笑う翔さんは、やっぱり不機嫌では
なさそう。

だとしたらやっぱり、狙われてる事実が
恥ずかしかったのかな?って。
クレームの意味が見えてくる。




「もうしないの?」



ジワジワと、可愛い面を発見させてくれる
翔さんに今までに無い癒しを感じつつ。
手渡したボトルから水を飲んでる翔さんの
その辺にちょっと興味を持って聞いてみれ
ば。


「卒業したの。若気の至り。」


そのピアス痕を撫でながら穏やかに微笑む
から。



「今度、写真見せてね?」



どんなだったのかな?って更に興味が湧い
て、お願いする。



翔さんは、えー、とか、あるかな?とか、
ブツブツ言ってるけど。
俺が素直に可愛目にお願いすれば、可能な
限り最大限まで譲歩してくれるんだ、って
だんだん分かってきて。

一緒にシャワーを浴びる前と今とではまた
少し違う翔さんを知れたようで、更に愛し
さが増してゆく。


「あーーー、も。」


まだ諦めつかないのか何なのか、ウダウダ
モードから中々抜け出せないみたいだから、


「しょおさん。」


名前を呼んで。
コチラを向いた目に笑顔を向け、少し顎を
上げて。




「ベッド行こっか。」



有無を言わせず手を引いた。




「あぁぁーーーーっもぉーーーー!」




それでも素直に手を引かれてくれる翔さん
は、やっぱり俺に甘いね?



「明日早ぇーんだよオレは!っつか、そー
じゃん。どーすんだよ、どーすんの?お前
職場で今まで通り出来んの?!」



俺も完全に酔いも抜けたけど。
翔さんだってシラフに戻ったんだなと思う。




そして、ひとつ分かったこと。


パリピだ遊んでただって言ってるし、多分
それも間違ってないのだろうけれど。

翔さんは凄く、照れ屋だって事。





「出来る。大丈夫。平気だって!」


「ほんとかよ……。」




そしてもうひとつ。
普段あんなカッコイイのに、弱った時には
激可愛くなること。


それが俺には新たにツボだから。





「おじゃましまーす。はい、寝て。」



ベッドの上掛けをよけ、
翔さんを押し込んで押し入って。

ギュッて抱きしめてから、



「無理はしない。約束する。」



笑顔で宣言してまたキスをした。




「えっ?!まだすんの?」



予定外だったのか、翔さんは慌ててるけど。

なんだろうね?この衝動は。





もっともっと、翔さんを知りたい。

一緒に溶け合ってドロドロになりたいんだ。






そして感じあえたら。

また俺の知らない色んな景色を教えてね?

アナタの進む未来に、役立つオトコになる
から。
いつか、横に並べるようになりたいんだ。





まだまだ先は厳しいかもしれないけど、

大丈夫、だよね─────?











翔さんと想いが通じた夜。

希望の光も膨らんで。




ぼんやりしていた未来が、
俄に明るく拓けていくのを感じていた。








2020.5.16
『Stay gold~In The Room』end.

.