妄想のお話です。





それから、俺達は、ふたりを付き合わせる作戦を考えた。


初恋の相手探しを諦めたわけじゃないけど、せっかく良い出会いがあったんだから、お試しでの交際もいいと思うんだよね。


「かと言って、ハムスターさんを初恋の相手だと言うのはダメだ。


何か、こう、ふんわりした感じで進めたい。」


「じゃあさ、この作戦はどうかな?」





翔ちゃんが、雑居ビルの空き店舗を借りてくれて、黒や赤のカーテンをつけた。


テーブルにも赤いクロス、間接照明にアロマを焚いて、雰囲気を出した。


大野さんは、智子さんになった上で、髪にベールをかけて、口元も綺麗な布で隠してる。


「なぁ、ちゃんと指示してくれよ。」


「大丈夫、耳につけたイヤホンに届いた俺の言葉をそのまま言えばいいから。


練習もしたし、バッチリだから!」


俺が隣の部屋に移動すると、翔ちゃんが、和馬さんとハムスターさんを連れて入ってきた。


「こんにちは。予約した櫻井です。


今日は、こちらの佐藤さんと、えっと、お名前、聞いてませんでしたね。」


「皆実です。」


みなみ?まさかね。


「ようこそ。タロットカードは、あなたに必要なことを教えてくれます。


まず佐藤さんから始めます。


人探しでしたね。


カードを広げて、よく混ぜながら、その人についてお話してください。


カードには上下もあるので、それも大切です。」


大野さんが説明すると、和馬さんが子どもの頃の話をしながらカードを混ぜてから、大野さんに渡す。


大野さんは、テーブルの下に仕込んだ3枚のカードをこっそり、その束に乗せて、もったいぶってカードをめくる。


「ああ、これは。良かったですね。


あなたは祝福されています。


良いご縁を大切に、誠実に進めば大丈夫です。」


どうとでも取れる発言だし、カードは元々、それっぽいのを仕込んでるから、和馬さんがいくらカードを混ぜても関係ないんだよね。