妄想のお話です。
その後、色々な会話をして、9時近くに智くんが眠そうな雰囲気になってきたので、お店を出ました。
駅に向かって歩き出そうとした時、誰かが後ろからぶつかってきました。
ふらついてしまい、カバンを落とした瞬間、ぶつかってきた人が私のカバンを持って走り出しました。
「あ!」
私の声より速く智くんが駆け出し、すぐに犯人に追い付きました。
智くんは、カバンを放せと叫びましたが、犯人は私のカバンをしっかりと抱えています。
睨み合うふたりでしたが、急に智くんがしゃがみ、片手を着いて犯人の足を払い、よろけた所で後ろに回り込んで手を捻り上げました。
そこに、駅前からお巡りさんが来て、犯人を逮捕してくれました。
交番で話を聞かれましたが、ひったくりの犯人は、私のカバンの中にあるお宝を狙ったと言ったそうで、確認されました。
「お手数ですが、見せてください。」
出来れば、智くんには内緒にしたかったのですが、仕方ありません。
「お宝はこれです。」
「ほう、なるほど、美人の写真はお宝ですね。
まあ、勘違いされる事もあるので、お気をつけください。」
私が見せたファイルには、智くん、じゃなくて智子さんの写真が入っています。
隣の智くんの表情が変わるのに気がつきましたが、スルーしましょう。
駅で智くんと別れる時、やはりファイルを回収されてしまいました。
「外でお宝とか言うな!
しかも、お宝じゃないだろうが!」
スタスタ行ってしまった智くんの背中を見送り、自分のマンションに帰りました。
ファイルは残念でしたが、データは残っているので、問題ありません。
それより、翌日、お宝探しに興味を持った相葉くんが、大騒ぎを始めたことで、面倒な事件に巻き込まれることになったのです。