妄想のお話です。
~雅紀~
大ちゃんと、母親にどうやって接触するかを相談した。
ニノからの情報でわかった事は少ない。
依頼者の母親の名前は美智子さんで、51歳の主婦、友人も多くて活動的。
夫は高収入で、たまに泊まりの出張があるから、日程を合わせて旅行に行く事もある。
SNSは見つからなかったらしい。
まあ、主婦がフェイスブックしても楽しくなさそうだし、この年代の方がネットリテラシーあるから、名前がわからないようにアカウント作って、閲覧専門にしてるかな。
依頼者のフェイスブックにも人物の写真は載っていなかったらしい。
この親子、しっかりしてる。
調べてもらった住所に行くと、閑静な住宅街って言うのか静かで、大きな家が並んでる。
タイミングよく、50前後の女性が家から出てきた。
きっと美智子さんだ。
「あのー、すみません、この辺りに前田さんのお宅があると思うのですが。」
あらかじめ調べた名前を出して、話しかけた。
「前田さん?この辺りには、前田さんはいらっしゃらないので、何かの間違えでは?」
「えっと、この住所なんですけど。」
メモを見せると、親切に見てくれる。
「あ、ここ、1丁目ですよ。」
「あれ?2丁目は?」
「この先の大きな道路の向こう側です。」
「ありがとうございます。」
凄く感じが良い人だ。
理由も無く、結婚を反対するとは思えないなぁ。
「助かりました。
これ、良かったらどうぞ。」
渡したのは、俺が昔働いていた買い取りショップのチラシだけど、問い合わせ電話の番号に俺の電話番号を書いてある。
「訪問買い取りをしてるんです。
あ、怪しくないですよ。
見積もりをしても、買い取りは後日改めてなんです。
その間に、ご家族と相談したり、他のお店と比べてもらってから、判断してもらってるので、ご安心ください。」
美智子さんは、チラシを見て、何か考えてるみたいだった。