妄想のお話です。





なんでこんな事になったのか、いまだにわからない。


俺は、大野智、31歳だ。


絵を描いたり、フィギュアを作るのが好きな子どもだったのに、たぶん、翔ちゃんと出会ったせいで社長になった。





高校2年生の秋、弁当を食っていたら、担任に応接室に行くように言われた。


応接室は、職員室と校長室の間にある。


応接室に入ると、知らない大人が2人と、知らない生徒が1人いた。


話を聞くと、俺の絵を見に来る英語しか喋れない人がいて、その生徒が通訳をするらしい。


櫻井翔だって。


賢そうな顔で、背は低めで可愛いけど、何か良くない予感がした。


何か、こう、頼まれると断れないような、年下なのに上に出れないような、そんな予感がしたんだ。


そして、その予感は当たってしまった。


俺は、嫌な事は嫌だと言うタイプだ。


面倒な事は避けて、やりたい事だけやってきた。


なのに、翔ちゃんに頼まれると断れない。


なんだかんだと言いくるめられてしまう。


なんとか、ふたりで出かけるのは避けていたんだけど、騙された。


「大野先輩、後輩に映画に誘われたんですけど、ふたりだけだと気まずいので、一緒に来てくれませんか?」


と言われて、まあ、たしかに気まずいよな、だから俺も避けてるんだからと思った。


「後輩って、男?女?」


「男の子です。


ほら、体育祭のリレーで同着になったバスケ部の子です。


女の子なら、すぐに断りますよ。」


そりゃそうか。


女の子に誘われて毎回付き合ってたら、キリがないくらい誘われてんだろ。