お風呂場は、湯気が覆って熱くなく冷たくなく、丁度いい感じで、入浴剤を入れたらほのかに香る柑橘系の香りが優しかった。
半分夢の世界に行こうとしてる翔ちゃんの髪の毛を洗ってあげて、体も洗っていたら、向かい合って座ってた僕に体を預けてきた。

「まさき〜。」
「んー?なあに。」
背中を洗ってあげながら、胸に手を滑らせると、翔ちゃんの体がピクっと動いた。
「俺、かのじょと、別れたよ。」
ゆっくり話す翔ちゃんに、僕の手が止まった。
「遅くなって、ごめんな〜。」
僕の耳元で囁く翔ちゃんの声。
僕は、言葉を失くして、泡だらけの手で翔ちゃんの背中に手を回した。
「彼女さん、大丈夫だった?」
そんなわけ、ないことはわかってた。
なんて質問してるんだ、って思った。
翔ちゃんは、体を起こすと、僕の顔をじっと見てきた。
「そりゃ、納得のいく形ではなかった。でも、俺の答えは一つしかなかったから。」
「…そう。」
短く応えて、それから先が続かなかった。
あの日、病院で見た、彼女の涙。
懸命に追いかける瞳。
同じ人を愛した人だから。
痛いくらいに、あの後ろ姿が目に焼きついてた。

無言のまま、シャワーで翔ちゃんについた泡を流していく。
翔ちゃんは、シャワーの先にある僕の顔を捉えて、キスをしてきた。
すぐに入ってくる舌の感触。
シャワーを持つ手が、だらんと落ちて、シャワーが床にざあざあ流れる音がする。
角度を変えて、翔ちゃんが僕の濡れた髪の毛を掴まえてキスしてた唇を離すと、
「俺は、間違ってない。雅紀も、間違ってない。そう信じる。それしかないんだ。」
僕の頬を両手で挟んで、翔ちゃんが微笑んだ。
少し、淋しそうに見えたのは、気のせいかな。

はっきりと色が戻ってきた翔ちゃんの瞳。
「もしかして……。」
「スイッチ、入った。」
腕を伸ばして僕の肩に乗せて、もう一度近づく翔ちゃんの顔。
キスして、抱きしめて、僕は翔ちゃんの肩に顔を乗せた。
横を向いて再び唇を塞がれる。
「雅紀しか…いらない。もう、迷わない。」
その言葉に、僕の瞳から涙が溢れた。
ありがとう、と。
ごめんね、と。
綯い交ぜになった僕の心は、どうしていいのかわからなかったけれど。


お風呂から上がって、ミネラルウォーターを冷蔵庫から出すのももどかしく、抱き合うキッチンで。
口移しでミネラルウォーターを翔ちゃんの喉に流し込めば、翔ちゃんが僕を抱っこする。
「ベッド、いこ?」
そう言われたら、何も言えないし、恥ずかしいし、僕は翔ちゃんの首に手を回してこくんと頷いた。
お互い生まれたときの姿のままで、ベッドに運ばれ、そっと横にされる。
すぐに覆い被さってくる翔ちゃん。
片手で僕の髪の毛を捉えて、深くキスをする。
もう片手は、僕の胸の尖りを優しくふれて、びくんと背中が跳ねた。
「あ…っ。」
「こえ、聞かせて。」
そう言うと、胸の実を翔ちゃんが舌で転がした。
絶妙なリズムでもう一方の実を手で押しつぶしてくる。
「あ、や…んぁ…あ…っ。」
翔ちゃんの髪の毛を握りしめて、僕の体はびくびくと跳ねる。
体が、気持ち、いい、と、返事してる。
太もものあたりで、翔ちゃんの中心が硬くぶつかってるのがわかる。
手は胸に置いたまま、翔ちゃんがするっと顔を下げて、僕の中心にはみ付いた。
ビリビリっと体中を駆け抜けた電流。
「ふあっ!」
抑えようと口を手で塞いだ僕の手を、翔ちゃんが避けて、翔ちゃんの指が口内、に入ってきた。