雅紀の、真っ白い顔色と酸素マスク。
両腕に繋がれた点滴の管。
「雅紀……。」
そう、名前を呼んだだけで涙が出てきた。
やせ細って見える頬に、そっと手を置いた。
「しょ、ちゃん…。」
酸素マスクを外そうと手を上げた雅紀は、注射の針で痛かったのか、顔をしかめた。
「動くな。大丈夫。ここにいるよ。」
手の甲にも針が刺さってるのを見て、また涙が落ちる。
雅紀は、懸命にそんな俺の涙を拭おうとしているように見えた。
「私たち、ちょっと先生とお話してきます。お父さん、一緒に行きましょう。」
お母さんの言葉が、明らかに俺たちに気を使って言ってくれたのがわかった。
「僕たち、ついてますから。」
松潤が答えた。
そして、雅紀のご両親が席を外すと、ニノがカーテンを引いて、メンバーだけになった。

「相葉さん、もう大丈夫だよ。俺たちもいるから、翔さんとゆっくり話す?きつかったら休んでね。」
ニノの言葉に、ゆっくりとした動きで雅紀が頷いた。
そして、智くんとニノと松潤が雅紀の足元のほうでパイプ椅子に座り、仕事のことやら雑談やら始めてくれた。
俺と雅紀に気を使ってくれてるのが伝わって、俺は止まらない涙をぐいっと手で拭った。

そして、震える手で、雅紀の髪の毛にそっと触れた。
真っ黒にして、少し長めの髪の毛。
枕元のパイプ椅子に俺も座った。
管の繋がれてる腕にも触れる。
少し紫色になってる腕が痛々しい。
「ごめん、雅紀、本当に、ごめん…!」
拭っても拭っても流れる涙。
雅紀は、少しだけ顔を横に向けて、懸命に声を出した。
「な、かないで、しょ、ちゃんは、わるく、ない。きてくれて、あり、がとね…。」
弱々しい、だけど、優しい雅紀の笑顔があった。
その笑顔は、本当に花のように綺麗で、儚く見えた。
「あいた、かった…。あえて、よかった…。」
雅紀の言葉に、そっと頬を撫でた。
頷いて、俺も、涙でぐしゃぐしゃの顔で笑顔を作った。
そして、こんなにも雅紀に会いたかった自分、こうして雅紀を前にして、これまでに抱いたことのない感情が芽生えていることに、気づいた気がした。

「雅紀、元気になったら、もう一度、ちゃんと話したい。いろんなこと、知りたい。」
「ん…わかった…。」
そう言うと、雅紀はまた、ウトウトと目をしばたかせた。
薬が効いてるんだろう。
俺はゆっくりと雅紀の前髪を梳きあげた。
「今日は、俺がついてる。ゆっくり眠って、元気になろうな。なんて、俺が言えた言葉じゃないことも、十分わかってる。無理させて、本当にごめん。」
すると、雅紀は再び目を開けて、俺の顔をじっと見た。
「僕が、望んだんだ。翔ちゃん、は、悪くない。その後の健康管理も、悪かったんだから…。」
仕事、大丈夫かな。
小さく、雅紀はそう続けた。
「ドラマのほうは何とか、ギリギリ大丈夫そう。5人の仕事は1回だけ4人になるかな。でもいまは、治すことに集中しよ?」
そう言って、また頭を撫でる。
何回も何回も。
雅紀に触れるたび、何とも言えない幸せな気持ちにも、なった。
申し訳ない思いと、これからは、今までのようにはいかない自分の気持ちの変化。

側にいたい───。

これまでとは違う、『側』に───。