寿命を決める労働環境~原発事故現場作業の環境改善は急務 | あらやす日(本)誌

寿命を決める労働環境~原発事故現場作業の環境改善は急務

「現代経営学」「マネジメント」(management)の発明者だと言われる、
経営学者ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)は、
人類の寿命を延ばした最大の要因は、
労働環境の改善だと言った。

もちろん、
医療技術の発達や飲食物の充実も、
長寿命に寄与していることは間違いないだろう。

福島第一原発事故現場は、
劣悪な労働・生活環境だ。

たぶん、
地球上で最悪に近い環境だろう。


政府は早々に福島第一原発内の作業者の許容被爆量を、
250ミリ・シーベルトに引き上げた。

今回もセーフティ・ネットを張らずに基準だけを上げた。

作業員の被曝量限度は日本では通常年間100ミリ・シーベルトだった。

そもそも、
この値自体が緊急時の許容被曝量であって、
通常、法令上、原発等の放射線業務従事者の被曝線量の限度は、
5年間につき100ミリ・シーベルト、年間50ミリ・シーベルト。

国内での労災事案でも、
累計50~70ミリシーベルトで数年後障害が現れている患者が多く、
50ミリシーベルトを超えたあたりから体調が悪くなるとも言われている。

これらは大人を前提にした数値で、
子供や妊婦の場合はもっと低い放射線量で体調の変化や障害が出ている可能性が高い。

【参考】
政府・原子力安全委員会が作成していた「1年後の放射能汚染MAP」によると累積110ミリシーベルトを越える被曝量に晒される可能性のある福島県内の市町村人口を合計すると約55万人にのぼる。
ここでなぜ「110ミリシーベルト」という中途半端な基準を政府・原子力安全委員会はあえて出しのか?多分、思うに障害で出る可能性が高くなる基準なのだと推測する。



福島第一原発の事故現場は放射能の脅威だけでなく、
生活環境も劣悪だ。

現場の人々は、
福島第一原発では事務所の会議室や廊下に寝ていると言う。

東電社員を現場で診察した産業医によると、
福島第一原発で作業を終えた人は、
放射能汚染の少ない第二原発まで行って体育館で雑魚寝している。

福島第二原発に近くにあるJビレッジにはホテルがあるようだが、
このホテルを開放してほしいものだ。

入浴できる日も限られていて、
食事は、
サバ缶詰やレトルト食品が中心だというから悲惨だ。

それでも、現場の方々ががんばっているのは、
作業者の8割が地元の人々だからだろう。
郷土愛と責任感が、
劣悪な環境の中でもめげずにやってゆける大きな理由だろう。

ヨウ素剤は配布されていると思うが、
自然のヨウ素を含む昆布や海苔を大量に食べさせてあげたいものだ。

すべての人に充実した食事と毎日の入浴といった基本的生活、
加えて心理面のケア、
緊急医療体制の整備も必要だ。

東京電力によれば、
原発事故現場での1日当たりの作業員数は300~700人。
今後の工事ではさらに作業人数は増えるものとみられる。
「作業人数は増えるものとみられる」なんていう悠長な話ではなく、
今すぐに増員すべきだろう。

政府関係者によれば、
対象人数は「数千人規模になる」可能性があるという。
「可能性」ではなく、
そのくらいの規模にして交替作業体制を早々に構築しないと、
作業者個人の被曝量が大きくなり健康障害が起きることは確実だ。
今のような数百人規模では、
個人の負担が大きすぎる。

東電も政府も余りにも非情で冷たい態度だ。
現場の声なき声を理解していないようだ。

なお、
チェルノブイリ原発事故時の元・放射能除去責任者は、
5000人は必要だと言っている。

スリーマイル島原発事故では原子炉の中を確認できたのは5年後で復旧に14年かかった。
チェルノブイリ原発事故はすでにその倍以上がかかっているが復旧はまだ終わっていない。

原発事故の復旧は長丁場だ。

東電が発表した「9ヶ月」の工程表は、
その場しのぎのまやかしでしかない。


読売新聞によれば、
4月16日に政府は、
東京電力福島第一原子力発電所の事故対応について現地で作業している作業員の健康状態を長期的にチェックするためにデータベース構築を行う。

政府は2011年度第2次補正予算案にこのデータベース関連予算を計上して、
今後30年以上に渡って被曝やその影響などを追跡調査するという。
追跡調査では、
作業員の同意を得た上で、
定期的に白血球数や赤血球数、放射線白内障の傾向や皮膚の状態などを調査して、
経年変化が分かるようにする。

被曝量が増えれば、
疫学的にはガンなどの発症確率があがるとされており、
政府は中・長期的な健康管理が必要であると判断を下した。


原発事故の作業者だけでなく、
原発周辺の住民の健康データベースも必要になってくるだろう。

政府・原子力安全委員会が作成した「1年後の放射能汚染MAP」では、
累積110ミリシーベルトを越える被曝量になる住民(=被爆障害が出る可能性がある住民)が50万人以上にのぼる可能性が高いのだ。