アストゥリアス(レイエンダ)の不思議 | アランフェスギターサークル

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コロナ自粛期間中にたっぷりあった時間を使って、少し色々と調べてみました。
ちょっと長いですが、お時間のある時にでもご覧いただけたら嬉しいです。
皆さんからのご感想・ご指摘・ご見解等がありましたら、コメントをお願い致します。

⭐⭐⭐アストゥリアス(レイエンダ)の不思議⭐⭐⭐

【【【【 装飾音は、♮ラ? ♯ラ? 】】】】
⭐クラシックギター愛好家でしたら、誰もが憧れるイサーク・アルベニス作曲のアストゥリアス(レイエンダ)。
ひところ、挑戦した時期がありましたが、難曲なので人前演奏はした事がありません。
10数年前、手塚健旨先生に師事していた頃に受けたレッスンで指摘された事があります。
中間部の10小節目と14小節目(添付しました上記楽譜の黄色いマーカー部分)の
装飾音1弦のラの音ですが、、、。
それまでは、添付の楽譜通り♮ラで弾いていました。
ところが手塚先生のご指導によれば、ピアノと同じようにここは♯ラが正しいと直されました。
私がこれまでに出会った楽譜は、どれも♮ラです。

当時は「そうなんだ」と言う程度の受け止めで、深くは考えず10数年が経過。

最近、身近でアストゥリアスの演奏を何度か聴く機会があり、皆さんが♮ラで弾いているのが
妙に気になって来ました。

先ずはピアノの原曲から確認すべきと思い、ピアニストの高木洋子さんにお伺いしたところ、
次の通り、非常に細かく踏み込んだ内容のご回答をいただきました。

ーーーーーーー高木洋子さんからの送付内容(原文のまま)ーーーーーーー
     ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

この曲については出版社との複雑な経緯があり、同じ曲が、異なる2つのタイトル「プレリュード」と
「アストゥリアス」として出版されてしまったのはよく知られることですね。
タイトルのことはさておき、ご指摘の部分ですが、この曲のアルベニス の手稿譜は見つかっていませんので、念のため、元々の初期の楽譜にナチュラルがあるのかどうかを改めて確認しました。

*こちらをご覧ください
*https://www.amazon.co.jp/photos/share/VSYSpe3UU1xXp8PQV3pUH3aBDe8uhVrGgMbMmLHVOF8
1)「スペイン組曲」Suite EspañolaOp.47. No.V Asturiaz (Leyenda) (Zoyaya社 - 1901) 
2)「スペインの歌」Chant d’Espagne, Op.232 No.1 Prélude (Casa Dotesio( Union Musicalの前身)ca.1989 )
3)「スペイン組曲」Suite Española Op.47. No.V Asturias (Leyenda) (Union Musical Española - 1918)

問題の赤い↑をつけているトリルの箇所ですが、これを見るとどれもがナチュラル記号はついていません。
このナチュラルのあるなしについては随分前から色々言われてきたことですが、本来は音符には前のシャープが有効でそのままのはずが、その後、様々なところで出版を重ねる中で、きっと「ナチュラル」が浄書時に必要と思われて付記されたか、知らないうちに楽譜ソフトの自動機能でついたものかもしれないと思います。
日本人からするとナチュラルの方が自然に聞こえるのでナチュラル記号をつけ忘れてるのではと、そうした版ができたのかもしれません。そのうち、ギター編曲したギタリスト達もナチュラル付きの楽譜を使ってしまったりで、2種類のバージョンが生まれてしまったものではないでしょうか。

念のため、当時のアルベニスの自動ピアノ用の穴あきロール譜によるPianolaで再現した音源も調べて色々聞いてみましたが、やはり、この部分は♯のままでしたので、もはやナチュラル記号がいらないのは確実だと思います。

スペイン国立博物館のデジタルコレクション
http://bdh.bne.es/bnesearch/detalle/bdh0000196750
こちらのYouTubeでも聞けます
https://youtu.be/N5BvEf7u3-A?t=137

(ただし、これは今でいう電子ピアノのMIDIのような感じで、楽譜データロールをそのまま自動ピアノで機械的に再現してるだけなので、ピアニストが弾くように豊かな表現ではありませんが。。😅 本当はアルベニス が生で弾いたのを聴きたいものですね!)

たった半音違いのこととはいえ、何回も出てきますし、中間部の歌うところの大事な部分ですので、
やはりここは♯で演奏したいですね♬

      ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 
ーーーーーーーー高木洋子さんからの送付内容 ここまでーーーーーーーー

(ピアノ原曲はト短調でギター譜と調は違いますが、ここではギター譜の「ラ」で話を進めています)

⭐ピアノでもギターでも♮ラ・♯ラの違いは以下の通り存在しています。

🌟🌟🌟♮ラでの演奏🌟🌟🌟

Álvaro Garrido ピアノ
https://youtu.be/6OU0q6eA4ec

Barton FEURICH HP ピアノ
https://youtu.be/6pDTf6QnL24

Andres Segovia ギター
https://youtu.be/lCeebWgjrrU

John Williams ギター
https://youtu.be/GkHXzAUE7wk

Manuel Barrueco ギター
https://youtu.be/9RkHwFoew-Y

Ana Vidovic ギター
https://youtu.be/Z76sbERzpnY

Sharon Isbin ギター
https://youtu.be/yIjfkYKKW54

Alexandra Whittingham ギター
https://youtu.be/V2F6RswMYpw

村治佳織 ギター
https://youtu.be/AB1DizGwkyw

Learn Asturias (Leyenda) with TAB ギター
https://youtu.be/hyHmipgBvlM

Score video ギター
https://youtu.be/wSg_bO3foC0


✨✨✨♯ラでの演奏✨✨✨

アリシア・デ・ラローチャ ピアノ
https://youtu.be/CQruHcDza9c

Luis Fernando Pérez ピアノ
https://youtu.be/-P8BQVhOv5A

Álvaro Garrido ピアノ
https://youtu.be/6OU0q6eA4ec

flowkey Piano tutorial ピアノ
https://youtu.be/nTbJhpkpH5c

ピアノ1
https://youtu.be/1sdsfVcxpC0

ピアノ2
https://youtu.be/Txwx0VoEtGY

スペイン国立博物館のデジタルコレクション
当時のアルベニスの自動ピアノ用の穴あきロール譜によるPianolaで再現した音源
・早いバージョン
http://bdh.bne.es/bnesearch/detalle/bdh0000196750
https://youtu.be/N5BvEf7u3-A?t=137
・遅いバージョン
http://bdh.bne.es/bnesearch/detalle/bdh0000197636
・自動ピアノではありませんが、1933年のころの録音で、カスタネットなどと合わせた音源
http://bdh.bne.es/bnesearch/detalle/bdh0000135273

Narciso Yepes ギター
https://youtu.be/tC8dh7Yi_zg

ぺぺ・ロメロ ギター
https://youtu.be/CJ0pFGHdEcU

David Russell ギター
https://youtu.be/4EbKNbiKyQI

María Esther Guzmán ギター
https://youtu.be/Z0hhnhr0ruY

猪居謙 ギター
https://youtu.be/XxT53R3vKZ4

Sky Guitar ギター
https://youtu.be/CCVBDCavI_c


【【【【 最初にギターに編曲したのは誰? 】】】】

⭐「Many have attributed the first transcription for guitar to Francisco Tárrega who put it in its most recognizable key, E minor. According to the guitarist and guitar scholar Stanley Yates, the first guitar transcription of the piece was probably by Severino García Fortea, although Andrés Segovia's transcription is the most famous and most influential.」
「この曲は、フランシスコ・タレガが初めてギター用に書き下ろしたもので、最もよく知られた調であるホ短調にした、とする説が多い。ギタリストでありギター研究家でもあるスタンリー・イェーツによれば、この曲の最初のギター用トランスクリプションはおそらくセベリノ・ガルシア・フォルテアであるが、アンドレス・セゴビアが最も有名で最も影響力のあるトランスクリプションであるとしている。」
下記より引用(Deeplによる翻訳)
https://en.wikipedia.org/wiki/Asturias_(Leyenda)

⭐フォルテア版には♮は付いていません。
http://guitarsketches.com/rethinking-albenizs-asturias-part-4/

⭐スタンリー・イエーツ(Stainle Yates)による、アストゥリアスに関する詳しい記述は、
こちらをご参照。
http://stanleyyates.com/articles/albeniz/leyenda.html
楽譜もダウンロードできます。
http://stanleyyates.com/scores/scores.html

【【【【 おまけ 】】】】
⭐アストゥリアス(レイエンダ )の曲名
高木さんのコメントの始めの方でも触れられていますが、、、、。
本来は、『スペインの歌』の第1番「プレリュード」です。
『スペイン組曲』の5曲目に転用した時に、「アストゥリアス(レイエンダ)」とネーミングされたそうです。
クラシックギターの世界では圧倒的にアストゥリアスで通っていますが、、、。

⭐上記のスタンリー・イエーツが編曲している楽譜には、このように丁寧に曲名が記載されています。
Prélude 
Chants d'Espagne, Op. 232, no. 1 
(Asturias—leyenda, Suite española, Op. 47, no 5)

【【【【 最後に 】】】】
⭐私は、ギターを始めて50年以上。
アストゥリアスの当該装飾音については、耳も指も♮ラで慣れていました。
・手塚健旨先生のご指導
・今回の高木洋子さんのご指摘
・アリシア・デ・ラローチャ(20世紀を代表するスペインのピアニスト)の演奏
・大好きなナルシソ・イエペスの演奏
を勘案して、今後は♯ラで弾こうと思います。
たった半音の違いですが、アラビア的な響きが心地良いです。

⭐アストゥリアスをはじめ、原曲がギター以外の編曲物は数多くあります。
機会がありましたら、アランフェスギターサークルの練習会で、様々な編曲を持ち寄った弾き比べ・聴き比べの企画も面白いかも知れません。

⭐昨年末、高木洋子さんにアスゥトリアスについてお問合せしてから約2か月間。
私から幾度となく投げ掛けた初歩的な質問にも拘らず、お忙しい高木さんからは、迅速且つ丁寧に・深く掘り下げたご返信をいただきました。ここに改めて感謝の意を評したいと思います。