私の指に、花弁が乗っかった。

 

桃色に染まった、脆い花びら。この時期だから、桜の花びらだ。

 

それはきっと、風が吹いて、花びらが落ちてきたからだろう。

 

私の傍で風が通り過ぎた。

 

そよそよと吹く優しい風。でも、ちょっとだけ桜の色をしている。

 

それはきっと、桜の花びらが風に乗って舞っているからだろう。

 

私の思い出が、蘇った。

 

一年前の卒業式や友達との楽しい思い出。忘れらない一生の宝物。

 

それはきっと、きっと……

 

きっと?

 

どうしてなのだろう。どうして、私の頭は思い出を記憶の底から引っ張ってきたのだろう。

 

どうして、今、ここで。

 

それは、私がこの風景を知っていたから。

 

背中を押してくれるような優しい風。それを、一年前で感じたことがあるから。

 

空を埋め尽くすような満開の桜。それを、卒業する前に友達同士で笑いあったから。

 

一年は巡り、巡る。きっとそれは同じものの繰り返しかもしれない。けれど。

 

「莉子ちゃん! こっちおいで! 桜がきれいだよ!」

 

「は~い! 今行くよ!」

 

私は、この移りゆく景色を知っていたい。