ふと、カレンダーを見て
「もう、11月すぎちゃうね。」
と、思ったことを口にした。
台所で朝ごはんを作っているぼくの母が、ぼくの言ったことに同調した。
「あら、ホントね。そして、11月、12月経ったら2022年。時の流れは早いものね。
そういや、12月にはサンタさんが来るわね。
サンタさんはいい子にしかプレゼントはあげない。林太郎はちゃんと、いい子にしてたかな~?」
「いい子にしてるよっ。皿洗ったり、お母さんの肩を揉んであげたり、したもん!
ぼくね、おもちゃが欲しいんだ!小さい車がその・・・動くやつ!」
おもちゃの名前を紛らわせながら、元気よく僕が言った。
何だっけ、あのおもちゃの名前。
「サンタさんはおもちゃの名前が分からないとプレゼント出来ないわ。
それと、1月には林太郎の誕生日もあるんだから。
欲しいものは慎重に選ばないと、後で後悔するわよ~。」
「えっ!誕生日もあるの!?
欲しいものたくさんあるのに。2回欲しいもの貰えただけじゃ、全然足りないよ~。」
踏ん切りがつかずにいるぼくに、母は微笑んで喋りかけた。
「大丈夫よ。サンタさんも誕生日もまた来るわ。そんな焦らなくていいのよ。
時の流れは早いから、直ぐにやってくるわ。」
直ぐにやってくる・・・。
うん、そうだね!またやってくるから、いっか!
「はい、どうぞ。」
お母さんはテーブルの上に朝ごはんを置いた。
ぼくはそれを勢い良く頬張った。
そう食べている間にふと、こんなことを思った。
サンタさんや、誕生日・・・。
あと、何回欲しいものが貰える機会があるのかなぁ?
今、ぼくは小学3年生。9才。
サンタさんは中学生になったら来なくなるって、お母さん言ってたような・・・。
あと、3年で中学生になるな。今年合わせると4年かな。
誕生日は毎年やってくる。
誕生日プレゼントは毎年くれる。
ぼくは100才くらい生きたいな。だから、100から9ひいて、91年。
最近算数で習った割り算を使ったら、あと今の年れいの10倍くらい生きることになる。
遠い道のり。すっごく遠い。気が遠くなりそう。
でも、お母さんは直ぐに時間がたつ、と言っていた。
だから、そんなに気が遠くなることでもないか。
今だって、1秒1秒たってるんだもん。
1秒たって、1分たって、1時間たって、1日たって、1年たって、一生が終わる。
直ぐに終わる。あっという間に。
「林太郎!もう8時になるわよ。早く学校に行きなさい!」
やべ。もう、こんな時間だ。
やっぱり、時間がたつのは、早いなぁ。
だからこそ――――今を思いっきり楽しまなくちゃね。
「それじゃあ、行ってきます!」
ぼくはドアを開けて元気いっぱいに大声を出して、学校に向かった。