それから数ヶ月後のこと。


県大会の地区予選である、高崎市小学生陸上記録会が浜川陸上競技場で開かれた。


800m走は、原則として各小学校(5・6年)内で1位のタイムを出した生徒が選抜される。また、特例として県大会標準記録である2:40を切れる生徒は、何人でも出場出来る。



《高崎市小学生陸上記録会/浜川陸上競技場》

へちょは校内1位で選抜、豆は標準記録を突破しての出場だ。
組長と二人して浜川の北側、バックストレートの終わり辺りに場所を取った。

私はレース前にトイレを済ませておこうと、浜川の事務所の方へ歩いていた。
浜川の2コーナー近くのゲート前に、招集のかかった子供がたくさん集まっていた。ワイワイとはしゃぐ子供達を眺めながら歩いていると、


「美月ちゃん❗❗❗」



あの美月ちゃんが居たのである!
私は彼女とまた会えた事、彼女が自分の学校から選抜されて来た事がとても嬉しく、
辺りの子供が振り向く程大声で叫んだ。

美月ちゃんは恥ずかしそうに笑うと、ちょこんと私に頭を下げた。

話したい事はいっぱいあったが、

彼女のレースはすぐに始まるため、私は
「めちゃくちゃ応援してるから❗絶対に勝って❗頑張って❗❗」
とだけ伝えた。
はにかんだ笑顔がとても可愛いらしかった。




私は組長の待つ場所へ戻り、今あったことを話した。
「そうか❗まだ陸上をやめてなかったか!じゃあ応援しなきゃだな❗❗」と、組長も嬉しそうだった。




私と組長が観戦する位置から、数メートル西側にコーチZが居るのが見えた。
また逆の数メートル東には先生が来ていた。



美月ちゃんが走る組が始まった。

「美月❗❗頑張れーーッッ❗」
組長と一緒に美月ちゃんを応援した。

「〇〇❗良いぞ❗ △△も〇〇に付いて行け❗❗」
西側に居るコーチZもアラマキッズ在籍の子供達に指示を飛ばす。

私は、彼がアラマを中途で辞めた子供に対しても応援をするなら、私の人を見る目が未熟だったと反省しなければならなかったが、
さすが❗そんな心配はご無用だった✨
ニヤニヤダヨネー




しかし、それでも良い❗
アラマがもう美月を応援しないなら、私がその分、美月を応援してやろう❗❗

と、私は心に誓った。


800mの勝負が動く2周目のバックストレート過ぎ。
美月ちゃんとアラマキッズメンバーが混戦状態でやって来た。
「△△❗❗上げろ❗△△ラストだ❗❗ 〇〇❗前に出ろ❗〇〇❗❗」
Zも最後の声掛けをする。

そして美月ちゃんが私の前を過ぎる瞬間、

  




「美月❗❗❗アラマなんぞ全員ブチ抜けッッッ❗❗勝って来いッッ❗❗❗」







と叫んだ。






 


自分ちもアラマキッズであるにも関わらず(笑)
ニヤニヤヘヘッ



美月ちゃんには
「私はアラマを辞めても、こんなに速い❗私を辞めさせた事を大人は全員後悔しろ❗」と、アラマ関係者がこんなに沢山居る中で、結果で示して欲しかった。
だからアラマを抜いて勝って欲しかった。



高崎市の大会はレース結果を貼り出さない上に、アナウンスも聞き取り難く、美月ちゃんが残ったのかどうだったのかは分からなかった。

へちょ豆が走る最終組も終わり、私と組長は先生の所に挨拶に行った。


《続く》