拡大に転じた北アラル海と縮小が続く南アラル海
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南アラル海の縮小は特に東側の部分で著しく、図2では海岸線が大きく後退した跡が年輪のような縞模様となって見えています。また、エメラルド・グリーンに見える海面は水深が浅いことを示しており、今後も急速な縮小が続くものと予想されます。 北アラル海の拡大は水位が回復しつつあることを示しています。これは、世界銀行からの融資を含めて総額8,600万ドル(約99億円)のプロジェクトとして、カザフスタン政府が建設していた一部コンクリート製のコカラル・ダムが2005年8月に完成し、北アラル海の水をせき止めることができるようになり、また農業用水路の改善による灌漑効率の向上により、シル・ダリヤ川から北アラル海に注ぐ水の量を増やすことができたためです。 アム・ダリヤ川からの水の供給が事実上行われていない南アラル海に見切りをつけて、シル・ダリヤ川からの水の供給が細々と続いている北アラル海だけでも救うためにダムを建設するという構想は以前からありました。1991年末の旧ソ連の崩壊以降、アラル海の北半分を管轄することになったカザフスタン政府は、1996年に土砂でダムを建設しましたが、1999年に嵐による高波のために破壊されました。
このダムは北アラル海の水位を標高38mから標高42mに上昇させるように設計されました。ダムの北東側の傾斜がかなり緩やか*1であることと、北アラル海の水がダムの頂上近くにまで迫っていることから、北アラル海の水位は計画値の標高42mのかなり近くまで達したものと推測されます。 水位の回復に伴ってアラリスクでは時々、雨が降るようになって、砂嵐の頻度が減るなど、気候が穏やかになり、魚や野鳥が戻ってきたということです。また、漁業者が町に戻りつつあり、漁業の復興に向けて何百万匹もの稚魚の放流やチョウザメの再導入も計画されているそうです。
図4に示すようにアラル海は1980年代後半には南北に分かれ、2000年頃から南アラル海が東西に分かれて、さらに縮小しつつありますが、2005年8月のコカラル・ダム竣工後は、北アラル海は回復しつつあります。表1に図4の各画像から求めた海面面積を示します。
コカラル・ダムの建設など第1段階の工事に続いて、1億2,600万ドル(約145億円)の第2段階の工事が2009年から計画されています。その工事には、北アラル海の水位をさらに上げるための長さ20kmの第2ダムの建設と、そのダムより高い標高46mの水位を持ち、シル・ダリヤ川からつながる運河の建設が含まれます。この運河はアラリスクの港に再び水をもたらすことになります。なお、 1960年の水位は標高53.41m*2 でした。 一方、アム・ダリヤ川は南アラル海に注ぐ前に灌漑用水の取水のために消えてしまっており、現在、数百万の人々が、この川からの灌漑によって作られる穀物に依存しているため、南アラル海の復興は望み薄です。 |