折り鶴の起源については幾つかの説があるようですが、2017年2月22日の朝日新聞夕刊(大阪・3版)に、「16世紀末~17世紀初めの作と鑑定され」た「小柄」の図柄が、「これまで最古とされてきた折り鶴の図柄よりほぼ1世紀古いことが分かった」と、下掲のごとき図が紹介されていました(新聞には個人所蔵の写真が掲載されておりましたので、ここでは模写によるものを掲げます.過日、別項に記しました朝日新聞デジタル版の記事は、すでに削除されているようです)。

 

 

一方、折形の始原とも言い得るであろう甲立(こうだて)の一つに「桔梗甲立」なるものが伝えられております。

 


これは、次の写真のごとく、ことさらに手を加えるまでもなく、容易に鶴と見立て得る姿を取ることができるもので、折り鶴の、最初の着想がここにあったことは、ほぼ確かなところであると私は思っています。

 

 

 

さて、この桔梗甲立は、しばしば、底部を折り込んだ形状の雛形で伝えられてきました。
先日、手許の雛形の型紙を起こす作業中にも目に触れることとなったのですが、このとき、ふと、上掲記事の写真を思い出し、折り鶴・祖型の試作を行いました(折り紙界には「変わり折り鶴」などと称されるものが多数あるようです。私は詳細に通じておりませんので、その中に類例、あるいは、より優れた姿のものを見出し得る可能性を否定いたしませんけれど・・・)。
 
 
<試案-1>は、甲立の原型を極力保ったままのもの。
<試案-2>は、翼の様子などを、より原図に近似させるべく調整を図ったもの(作製した展開図と写真とでは、首の角度など少々異なるところがあります)。
 
■試案-1
  
 
■試案-2
  
 
 
翼の中央より後、全体のほぼ2/3で用紙の裏側が現われる上(全面が用紙の表になるように折ると、下の写真のように、絵図とはかなり異なる姿に至りました)、尾部を折るとき、やや強引に反転をせねばならないところがあるなど(今日の”折り紙”で求められる技術に比すれば児戯のようなものですが)、起源と位置付けるにはいささか無理がありそうだとの印象も拭いきれませんけれど、当方の見るごとく、折り鶴が甲立に根ざすものであるのなら、上下を入れ替えぬまま、その底部を鶴の背(胴体)に仕立てようとする発想は、むしろ自然な流れと受けとめることもできましょう。当たらずといえども遠からず、といったところかと思い、試案の提示を申し上げるものです。
 
 
最初に見た通り、甲立の一角をひねって鶴に見立てるのは、誰でも容易に思いつき得るものでありましょうし、また、偶然にそのような姿をとってしまうこともあったでしょう。されど、これはどう見ても、”たまたま”出来上がるようなシロモノではありません。

この試案が当を得たものであるなら、通例思われているであろうよりもはるかに早い時期から、人は紙を手に取り、真剣に”戯れていた”ことを証するものともなりましょう。
世界中に羽ばたく折り鶴の歴史、<甲立之鶴>に触発され、よりよき似姿を求めた先人の足跡をたどることができたのなら、雛形屋としてはまこと嬉しい次第であります。

型紙は、下記よりダウン・ロードすることができます。
 
 
(次の写真は、型紙の<基礎>を折り進める過程、尾部を折り返す前段の図。
屈折箇所が、少し浮き上がる形状となるので、持ち上げて尾部を反転させなければなりません。
また、<試案-2>では、首を折り込んで細く仕立てた後、羽根の成形を行って下さい)。
 
 
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なお別件ですが、先日、次の動画を YouTube に投稿しました。