令和5年11月22日に、令和5年度荒川区議会定例会11月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った保坂正仁(ほさかまさひと)議員の質問「産後ケア事業の充実について」と、それに対する子ども家庭部長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

0:55~ 一般質問「産後ケア事業の充実について」

14:30~ 子ども家庭部長答弁

 

 

保坂正仁(ほさかまさひと)議員 一般質問(1)「産後ケア事業の充実について」

 

 

保坂正仁(ほさかまさひと)議員(公明党)

(文教・子育て支援委員会副委員長)

 

 

「公明党の保坂正仁です。以下、3項目の質問をさせていただきます。今本会議最後の質問者となります。お疲れでございましょうが、理事者の皆様のご答弁をよろしくお願いをいたします。

 

 

 

初めに、産後ケア事業の充実について伺います。6人の孫を持つジイジとして、娘や息子の嫁さんの声を代弁する思いで、質問をさせていただきます。

 

 

(産後ケア事業について)

荒川区においては、平成29年度からこの事業をスタートし、最初は宿泊型と初産婦のみの利用でしたが、徐々に事業を拡大していただき、現在は1.宿泊型、2.日帰り型、3.訪問型の3事業を展開をし、利用者からは高い評価を受けております。中には、荒川区の産後事業ケアを利用したことで、荒川区で子育てが出来て本当に良かった、また育児をするなら荒川区の環境が良いと考え、転入してきたと話す人も増えていると伺っております。

 

全国の2022年度の同事業実施自治体は1,462で、全市区町村の84%にのぼったとされています。政府は、24年度末までには全国展開を目指しております。荒川区では同事業をさらに充実させ、全国のリードオフマンになるべく、以下具体的な提案をさせていただきます。

 

 

(産後ケア事業の周知について)

まずは、誰でも使えるフレキシブルな制度の確立をすべきと考えます。

 

かつては、産後ケア事業は産後の肥立ちが思わしくない方や産後うつに悩んでいる方が使うものだと思い込みがあったように思います。しかし、産後ケア事業は出産後の母子は誰でも利用できる制度であります。この制度を利用することにより、少しでも出産後の育児疲れや睡眠不足からくる心身が不調に陥り、出産後の産後疲れや睡眠不足から心身が不調に陥る産後うつを防いで欲しいと思います。厚生労働省の子どもの虐待による死亡事故例等の検証結果、今年9月によると、虐待の死亡事例のうち66.9%が0歳から2歳児との報告もありました。荒川区として、産後ケア事業は妊産婦の誰でも利用できる制度であることと、妊娠7か月・妊娠25週以降から事前申請が出来ることを、もう少し広く広報していただきたいと思いますが、区の見解をお伺いをいたします。

 

 

(子育て情報アプリ『母子モ』について)

また、情報発信のシステムとして、子育て支援アプリ『母子モ』(あらかわすくすく子育てアプリ)の活用をさらに充実すべきと考えます。

 

今は核家族化の時代です。親御さんから離れて出産をし、不安の中で子育てをしている若い家庭も多いと伺っております。子育てに必要な情報は、例えば産後ケア事業の情報や、子育て交流サロンや、ふれあい館のイベント、育児講座など、各ホームページを読み進めていくのではなく、『母子モ』に授乳や育児ダイアリー機能を充実させて、一括して必要な情報をアウトプット配信し、共有できるように、改善・充実すべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

 

(産後ケア事業の柔軟な利用とクーポン券の導入について)

次に、産後ケア事業の利用において、荒川区の助成額は

1.宿泊型:1日あたり費用約3万円に対して、助成額2万5千円、個人負担約5千円、最大3泊4日

2.日帰り型:1日あたりの費用が約2万円に対し、助成額1万6千円、個人負担額約4千円、最大4日間使える

3.訪問型:1回あたり費用約5千円に対し、助成額が4千円、個人負担が1千円、最高6回まで

とかなり手厚くなっております。

 

しかし、令和元年と令和4年の利用実績を比較すると

1の宿泊型が、令和元年が264件の1.25倍の330件

2.日帰り型が令和元年83件の0.7倍の55件

3.訪問型が令和元年204件の4倍の800件

とその利用状況にだいぶ変化が表れてきていると考えます。

 

その理由は

1.宿泊型は、利用したくてもベッドの数が足りない

2.日帰り型は、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて、またオムツ等の荷物を抱えての通所には無理がある

3.訪問型は、自宅に来ていただき、個別に授乳指導や乳房ケア、産後の心身や乳児の発育等に関する相談に乗ってもらえるので、人気がある等であります。

 

制度の見直しが必要であると考えます。そこで、現行の産後ケアの助成額1から3を全部満額使ったとしたら18万8千円になります。この総額をフレキシブルに使うことは出来ないのでしょうか。例えば、3の訪問型の利用回数をもっと増やして欲しいとの要望が多いので、1.宿泊型、2.日帰り型を使わず、全部3.訪問型に使ってもいいようにしてはいかがでしょうか。

 

さらに、助成額はクーポン券等にして、産後のお母さん方が更に使いやすい事業にすべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

 

(利用期間の延長について)

次に、利用期間の延長について伺います。

 

現在の産後ケア事業は、満1歳までとなっています。しかし、育児は1歳では終わりません。卒乳ケアは1歳過ぎても行われていますし、歩き始めや兄弟がいるとお母さんは子どもから目を離せない時期を迎えます。心身共に疲れる時でもあります。希望する母親に対しては、最大満2歳まで産後ケア事業が使えるようにすべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

 

(多胎児支援の充実について)

次に、多胎児支援の充実について伺います。

 

双子ちゃんや三つ子ちゃんが生まれてくると喜びも倍以上でしょうが、ご苦労も大変なことと思います。にも関わらず、産後ケア事業を利用すると、多胎児加算なるものがついてきます。

(1)宿泊型では、1日あたり1人の多胎児加算、費用8千円、助成額6,400円、個人負担1,600円

(2)日帰り型にあたっては、多胎児加算が7,500円、助成額が6千円、個人負担が1,500円

(3)訪問型では、1日あたり1人の加算費用が4千円、助成額が3,200円、個人負担額800円

先の1人の負担に、さらにこの多胎児加算が加わっていきます。経済的にも大変な中、新たな負担を強いるのはいかがなものでしょうか。子どもに対しても差別があってはならないと思います。多胎児出産のお祝いの意義も込めて、1回の出産の1家族と見なし、多胎児加算は全て荒川区が負担すべきと考えますが、区の見解を伺います。

 

 

(課税・非課税区分の撤廃について)

この項目の最後に、産後ケア事業利用者の課税・非課税世帯の区別を無くすことを訴えます。

 

産後ケア事業の利用には、課税・非課税の区別が500円から2,500円の差があります。課税・非課税は前年度の所得によります。しかし、出産を機にそれまで仕事をしていた職場を退職したり、育児休業を取ることにより、月々の収入が減ってしまいます。ご主人だけの収入での子育ては大変であります。産み月を考えて出産をするようでなければならないのでしょうか。産後ケア事業を利用する年代は、それほど収入は高くないと思います。そこで、課税・非課税の区別を無くして、全て一律非課税の利用料金にすべきと考えますが、区の見解を伺います。(後略)」

 

 

 

子ども家庭部長 答弁

 

 

「初めに、産後ケアの利用方法に関するご質問にお答えいたします。

 

 

(産後ケア事業について)

産後ケアは、母親の身体的な回復と心理的な安定を促進するとともに、母子の愛着形成を促し、母親とその家族が健やかな育児が出来る環境づくりを進めるための、大変重要な取り組みであると認識しております。

 

 

(産後ケア事業の周知について)

国において本年6月に、産後ケアの更なる推進を図るため、事業の対象者を産後に心身の不調または育児不安等がある者から、産後ケアを必要とする者とする見直しがあり、区でも同様に対象の拡大を図ったところでございますが、あわせまして更に周知を図っていく必要があると考えております。

 

 

(子育て情報アプリ『母子モ』について)

区といたしましては、妊娠7ヶ月からの利用申請が可能であることなど、様々な情報につきまして、区報やホームページ、SNSのほか、子育て情報アプリ『母子モ』のプッシュ機能の活用など、様々な媒体を活用し、情報発信に努めるとともに、アプリの機能の充実についても調査・研究を進めてまいります。

 

 

(産後ケア事業の柔軟な利用とクーポン券の導入について)

また、議員のご提案にございます、産後ケア事業のフレキシブルな利用や、クーポン方式の導入につきましては、利用者が希望するサービスを利用できる一方で、特定のサービスに利用が集中することによる供給体制の確保の難しさや、事業者の事務負担の増加などの課題もございます。利用方法の利便性の向上にあたりましては、利用者にとってより使いやすい仕組みについて、検討を行ってまいります。

 

 

(利用期間の延長について)

次に、産後ケアの利用期間の延長に関するご質問にお答えいたします。

 

産後ケアの対象となる期間につきましては、出産後1年程度がメンタルヘルスケアの重要性が高いことなどを踏まえ、国の要綱が改正されたことに伴い、令和3年度に産後4ヶ月から1年に延長し、サービスの拡充を図ってまいりました。一方で、議員ご指摘の通り、母乳での育児における卒乳ケアは1歳を過ぎても必要となるケースもあり、今後『子ども・子育て支援計画』策定に伴う利用者のニーズ調査などから現状を把握しながら、利用期間の延長について検討してまいります。

 

 

(多胎児支援の充実について)

次に、多胎児加算の充実に関するご質問にお答えいたします。

 

多胎児がいるご家庭が産後ケアをご利用いただく際には、多胎児加算として2人目以降の利用料金が発生し、これに対しましては、区が助成を行っております。多胎児がいるご家庭におきましては、経済的な負担や多胎児ならではの育児の困難さに直面する保護者も少なくないことから、産後の育児不安を抱える中で、経済的に安心して産後ケアをご利用いただけるよう、多胎児世帯に対する更なる負担軽減についても検討してまいります。

 

 

(課税・非課税区分の撤廃について)

最後に、助成にかかる課税・非課税区分の撤廃に関するご質問にお答えいたします。

 

産後ケアの利用者負担につきましては、国の全世代型社会保障構築会議において、利用者負担の軽減を図っていくことも検討課題として掲げており、国が本年度より利用者負担の減免支援の拡充を図っているところでございます。

 

区といたしましても、産後ケアを必要とする方々が課税の状況に関わらず利用できる環境作りは、大変重要な視点であると認識しており、現在助成にかかる課税・非課税区分の見直しについて検討を進めているところです。

 

 

(今後の取り組みについて)

区といたしましては、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援のスタートとなるサービスの周知や、産後ケアの更なる充実を図ることにより、子育て家庭が安心して地域で子育てが出来る環境作りに鋭意努めてまいります。」