令和5年11月22日に、令和5年度荒川区議会定例会11月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った山本剛(やまもとごう)議員の質問「社会保険料について」と、それに対する福祉部長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

5:55~ 一般質問「社会保険料について」

19:20~ 福祉部長答弁

 

 

山本剛(やまもとごう)議員 一般質問(4)「社会保険料について」

 

 

山本剛(やまもとごう)議員(ゆいの会)

 

 

「(前略)

 

3つ目は、65歳以上の介護保険料及び国民健康保険料の負担軽減可能性をお伺いします。

 

 

(介護保険料の改定について)

まず、介護保険料について、今後3年の方向性を決める改定時期を控えます。11月6日の社会保障審議会の報道によりますと、65歳以上の介護保険料が変わり、高所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らすとのことです。こうした生活者に直結する負担の問題を、議会を通さず厚労省と諮問機関とのキャッチボールで大枠を決めてしまうことへは、懸念を覚えます。政治資金や官房機密費の使い方も大切かもしれませんけれども、何よりこの今この時に進んでいる負担増の問題、最も巨額な予算が絡む社会保障の問題を包み隠さず議論していただきたいと国会に期待いたします。

 

 

(介護保険制度の改正について)

例えば、在宅などの介護内容を介護保険事業から外して、区市町村のサービスとする変更が今後3年は先送りとなりました。今後これが決まれば、区市町村の持ち出しが増え、介護保険給付が減りますので、介護保険料の負担減に反映させるべきです。また、東京都と区の税負担割合が現状12.5%で同じであることから、区の負担増を東京都には考慮をしていただきたいところです。一方で、民間を取り入れつつ、区の工夫によるサービス適正化にも今後期待いたします。

 

 

(介護保険料の負担軽減について)

本題に入ります。介護保険料の決定主体は市区町村でございます。65歳以上の所得に応じた介護保険料率の大元となる基準額は、区で決定いたします。区が決定する介護保険料基準額が低いほど、全体の保険料も抑えられることになります。区の基金を用いて、標準保険料である基準額の抑制を要望いたします。基金を崩すとしても、保険給付の実績により、結果的に基金への戻りも認められます。令和4年度決算によりますと、介護保険事業特別会計の基金積み立てが4億8千万円ほどあり、最新の基金残高は順調です。大胆な取り崩しをすることが現状可能です。区の見解をお伺いいたします。

 

 

(国民健康保険料の介護分の算出方法について)

介護保険の給付関連ではもう1つ、40歳から64歳までの納付による介護分の国民健康保険料がございます。厚労省のホームページによりますと、介護保険の半分が税負担、残り50%にあたります保険料部分の財源が、40歳から64歳の方の合計と、65歳以上の合計が、人口比で設定されます。平成22年に、40歳から64歳の納付分が財源の29%、65歳以上の保険料が21%でした。合わせて50%です。これが平成30年には、それぞれ27%と23%、40歳から64歳の納付分の負担割合が減っております。2%減っております。現役世代の減少と高齢化率の上昇の双方の要因です。今後についても、現役世代が減ったからと、納付対象を安易に30代に拡大せず、人口比を忠実に負担比率に反映させれば、最低限公平な仕組みとなります。社会保障は目先の利益ではなく、未来を念頭に正確な見積もりに即して方向性を決めるのが本筋です。荒川区の介護分の国民健康保険料は、所得割料率が令和5年度、千代田区・新宿区に継ぐ3番目の低さでございます。算定方法をお伺いします。

 

 

(国民健康保険料を区独自に算出することについて)

続いて、医療の納付保険料についてです。

 

23区では一律の基準を決め、所得により変わる部分の所得割と、同額を集める均等割で徴収されますが、千代田区・中野区では医療分の所得割料率を23区水準より高くする一方で、均等割を下げています。国民健康保険料の所得割の量率及び均等割を区独自に決めることについて、負担軽減への見解はいかがでしょうか。

 

 

(介護予防について)

結びに、予防についての思いを述べます。

 

介護予防を推進することで、介護保険を使う方の給付やサービスが間に合うようになり、ひいては後期高齢者医療制度を持続可能にします。今後、公営住宅も出し入れのしやすい収納など、最大公約数でありながらも、現代のご高齢者の生活習慣に寄り添い、家族にやってもらうという設計から、あれもこれも自分で出来るという設計が求められます。時間を有効に使える運動施設の充実も大切です。荒川区にも、気概なしで使える民間の簡易的なジムが住宅地に出来ております。ついでで通える、地域住民の健康に寄与しやすい形式だと思います。総務企画委員会の尼崎市行政視察では、(電子)地域通貨『あま咲きコイン』で健診の受診を促進する試みも紹介されました。保険適用範囲にならないが予防に寄与する分野へ、区が主導してインセンティブを設ける手もあります。最大の負担軽減は、お一人お一人が健康だと感じながら生活することだと申し上げ、1回目の質問を終わります。」

 

 

 

福祉部長 答弁

 

 

「初めに、介護保険料の負担軽減に関するご質問にお答えいたします。

 

 

(介護保険制度の改正と介護保険料の改定について)

現在、区では、令和6年度から令和8年度までの3年間を計画期間とする『第9期介護保険事業計画』の策定に向けた作業を鋭意進めております。第9期の介護保険料につきましては、介護給付費の推計や、国で議論されている介護保険制度の改正内容等を踏まえまして、令和6年1月以降に算定する予定でございます。次期介護保険料につきましては、増加傾向にある介護給付費や報酬改定の検討内容等を考慮しますと、介護保険料への影響は非常に大きいものと考えてございます。

 

 

(介護保険料の負担軽減について)

基金は、介護保険料と介護給付期間の財政の均衡を図るために設置しております。例えば、保険料算定時に想定していなかった介護報酬改定が実施され、介護給付費が見込みを超えて大幅に増加した場合は、基金から不足分を補填するなど、介護保険財政の安定を図るため重要な役割を担っております。また、計画期間の最終年度において基金残高がある場合は、介護保険料の急激な上昇を抑制するために、区ではこれまでも基金を効果的に活用してきたところでございます。例えば第8期の介護保険料算定時におきましては、基金残高約12億2千万円のうち約半分の6億5百万円を取り崩したことにより、保険料を342円減額する効果がございました。

 

今後、介護保険事業の安定的な運営を確保していくためには、一定程度の基金残高を確保し、中長期的な視点で基金を計画的に運用することが重要と認識してございます。区といたしましては、第9期の介護保険料が急激に上昇しないよう、基金の効果的な活用を視野に入れ、区民生活の影響に配慮しながら、介護保険料を適正に算定してまいります。

 

 

(国民健康保険料の介護分の算出方法について)

次に、国民健康保険料の介護分の算出方法に関するご質問にお答えいたします。

 

制度的なご説明にはなりますが、40歳から64歳までのいわゆる第2号被保険者における、全国平均の1人当たりの保険料額と被保険者数見込みから、各医療保険者の概算介護給付費納付金額が算定されます。荒川区においては、東京都から示された荒川区分の介護給付費納付金額から、特別区で定めた均等割額分を減じた残りを、被保険者の基準総所得金額で除して、所得割の保険料率を算出してございます。

 

 

(国民健康保険料を区独自に算出することについて)

最後に、国民健康保険料を区独自に算出することについてお答えいたします。

 

特別区におきましては、昭和34年の国民健康保険事業発足以来、東京都の事業調整のもと、各区で同一の保険料を適用してまいりました。平成12年には、東京都による事業調整が廃止になったことを受け、各区は独立した保険者として自主的・自立的な運営が出来るようになりましたが、従来同一の保険料であったことや、国が示している医療保険制度の広域化の動きを考慮し、保険者の再編・統合などの抜本的な見直しが行われるまでの間、運営上の自主的な調整を行う統一保険料方式が採用されました。

 

国民健康保険制度は、平成30年に大きな制度改正が行われ、それまで区市町村が運営主体であったところ、都道府県が財政運営の責任主体となり、制度運営の中心的役割を担うこととなってございます。これに先立つ平成29年11月の区長会総会において、制度改正の趣旨を踏まえ、統一保険料方式の取り扱いを将来的な方向性に沿って段階的に移行すべく、23区統一で対応するという意思決定がなされました。区では、この区長会総会での決定を重く受け止めており、これまで通り統一保険料方式を採用してきた経緯がございます。

 

国においても、保険料の都道府県単位での統一を目指す方針を明確にしており、今年10月18日には保険料水準統一加速化プランが策定されたところでございます。また、東京都におきましても、これらの国の方針に沿った運営方針の策定が予定されているところでございます。

 

区といたしましては、国民健康保険料の負担軽減は、保険者それぞれで対応するものではなく、国が医療制度全体として対応するべき問題であると認識しておりますので、国や都の動向を注視しながら、安定した制度運営のため、引き続き統一保険料方式により保険料を算定してまいりたいと考えてございます。なお、保険料の徴収にあたり、被保険者が病気や失業等の様々な事情を抱えている場合には、その家計状況や生活実態を丁寧に確認するなど、区民に寄り添った対応を進めてまいります。」