令和5年11月22日に、令和5年度荒川区議会定例会11月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った増田峰子(ますだみねこ)議員の質問「不登校対策について」と、それに対する教育長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

2:45~ 一般質問「不登校対策について」

13:15~ 教育長答弁

 

 

増田峰子(ますだみねこ)議員 一般質問(2)「不登校対策について」

 

 

増田峰子(ますだみねこ)議員(公明党)

(財政援助団体調査特別委員会副委員長、公明党区議団政務調査会副会長)

 

 

「(前略)

 

次に、不登校対策について2点(3点)お伺いいたします。

 

 

(不登校の児童・生徒の増加について)

コロナ禍は、子どもたちにも大きな影響を与えました。特に懸念するべきなのは、コロナ禍以降、不登校の児童・生徒が増加したことです。文部科学省の直近の調査では、小中学校の不登校は30万人に迫まり、コロナ禍以前の2019年度から13万人以上全国で増加いたしました。荒川区においても、コロナ禍前の2019年は小中合計228人でしたが、2023年では小中合計367人となっております。増加の一途をたどる不登校への対策は、喫緊の課題であることは間違いありません。不登校になる理由や背景、要因などが多岐にわたるため、決め手の施策があるわけではありません。だからこそ、あらゆる角度からの様々な対策を講じていく必要があると思います。

 

 

(フリースクールやオンライン授業の出席扱いの基準について)

そこで1点目は、不登校の児童・生徒の出席扱いについて質問いたします。

 

不登校になり親子共に心配になるのは、学業の遅れではないでしょうか。日本では法律により、国民は等しく教育を受ける権利が保障されています。にも関わらず、学校に通えず、教育を受ける機会が失われている子どもたちが増え続けています。そうした不登校のために学校で勉強する機会を失ってしまった児童・生徒に対して学校への登校を強制せず、それぞれに合った学習環境を保障するため、平成28年に『教育機会確保法』が制定されました。この法律によって、フリースクールや荒川区にある『みらい』(適応指導教室)など、学校外に通う児童・生徒も出席扱いとなりました。

 

区に確認したところ、フリースクール等に通い出席扱いになる一方で、フリースクールに通っていても出席扱いにならない場合があると伺いました。確かに在校生の先生にしてみれば、フリースクールに通っていても例えばゲームばかりしている場合などは出席扱いには出来ない理由としており、そのことは大変理解が出来ます。ですが、保護者の中には、フリースクールに通えていれば出席になると思っていたがそうではなかったと残念に思う方がおります。このようなことが生じるのは、現在荒川区において学校以外での出席扱いに関する基準が明確になっていないためだと私は思います。区は、学校外の出席扱いに対し誰が勉強のみとりをすれば良いのか、学習の確認であるテストはどうするのかなど、まずは出席にする条件や基準を定めるべきです。また、それらを明確に示すことが重要であると思います。

 

さらに、私たち公明党は、これまでも不登校児童・生徒の出席扱いについて多くの質問・要望をしてまいりました。特にオンライン授業での出席扱いは、何度も区に求めてまいりました。文部科学省が不登校総合対策『COCOLOプラン』を各自治体の教育委員会に示した通知の中には、次のようにあります。『不登校児童・生徒が一定の要件を満たした上で、自宅等においてICT等を活用した学習活動については、可能な限り指導要録上出席扱いする』と。つまり、学校以外でも勉強していることを認められる基準を明確にすることにより、フリースクール同様、オンライン授業でも出席扱いにすることが望ましいと言っております。出席に対する考え方の幅を広げることは、不登校児童・生徒の勉強へのやる気にもつながり、さらには保護者にとっても大きな希望になります。

 

荒川区に置かれましては、不登校の児童・生徒のために出席扱いについての基準を明確にし、児童・生徒や保護者に的確に伝えることを要望いたしますが、区の見解をお伺いいたします。

 

 

(不登校の保護者への支援に関する情報の周知について)

2点目に、不登校の保護者への支援についてお伺いします。

 

不登校と言うと、子どもたちに対する支援に注目が集まりがちですが、保護者へのサポートも大変重要になってまいります。それは、子どもが不登校になったのは自分のせいではと自らを責めてしまう方や、どこに相談して良いかわからないなど、孤独感を抱え、心の中で悲痛な叫びを上げている保護者がたくさんおられるからです。そうした方のために、区は全力で支援をしていくべきだと思います。

 

先程も紹介しました文部科学省の通知の中には、不登校児童・生徒の早期支援のためには、その保護者が悩みを抱えて孤立せず、適切な情報や支援を得られるようにすることが重要であると示されています。さらにこの後で、保護者支援の1つとして、当事者である保護者同士の交流会が重要だと言われております。

 

荒川区内には、既に不登校の子どもや家族を支援する活動を行っているボランティア団体がありますが、残念なことに多くの保護者はこれらの情報を知ることが出来づらい状況にあります。もちろん様々な理由から支援を求めない保護者もいると思いますが、まずは全ての保護者に情報提供をするべきだと思います。

 

そこで私は、現在区の全学校で導入済みのアプリを活用することを提案いたします。それは、先生が保護者のスマートフォンにお便りなどを届けることが出来る『スクリレ』というアプリです。ここには個別連絡のページもありますので、他の保護者に見られることなく、活動を行っている団体の情報や講演会の情報などを発信することが出来ます。全ての不登校の保護者に対し、家族交流や講演会などの情報を適切に提供するべきだと思いますが、区の見解をお伺いいたします。

 

 

(スクールソーシャルワーカーを不登校の保護者へ周知することについて)

3点目に、スクールソーシャルワーカーの活用について質問します。

 

不登校支援としてスクールソーシャルワーカーがおります。スクールソーシャルワーカーは、学校で学生やその家族と協力し、学業や社会的な課題に対処する専門家で、不登校対策には欠かせません。

 

昨年、荒川区ではスクールソーシャルワーカーを増員していただきました。私は不登校の保護者の方たちと懇談する機会がありますが、多くの保護者の方はこのスクールソーシャルワーカーの存在を知らないというのです。せっかく増員していただいたのに、スクールソーシャルワーカーを効果的に活用しきれていないのは問題であります。例えば、先ほど提案させていただいた『スクリレ』アプリを活用し、保護者に対してスクールソーシャルワーカーの存在や役割を周知し、必要な場合の連絡手段を提供するべきだと思います。

 

以上の提案を踏まえ、不登校の児童・生徒を抱える保護者支援として保護者に有益な情報を積極的にしていただきたいと思いますが、区の見解をお伺いいたします。(後略)」

 

 

 

教育長 答弁

 

 

「不登校対策の取り組みに関するご質問にお答えいたします。

 

 

(不登校の児童・生徒の増加とその対策について)

昨年秋に、文部科学省より令和4年度の『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』が公表され、不登校児童・生徒が全国的に年々増加傾向にあることが明らかになりました。区内におきましても同様に増加しており、現在教育委員会として不登校問題の解決を図るため学校現場と連携・協力し、日々対応に努めているところでございます。

 

具体的には、適応指導教室(『みらい』)や別室登校、オンライン授業など、1人ひとりの状況に合わせて多様な選択肢を用意するとともに、スクールソーシャルワーカーを増員し、不登校の子どもたち1人ひとりに応じた適切な支援を図るとともに、保護者の方々に寄り添いながら、教育相談の充実に努めているところでございます。また、フリースクールなどの学校外の施設における学習活動につきましても、通学や学習状況の確認が出来れば出席扱いとするなど、社会的自立に向けて努力を続けている児童・生徒を優しく支援しているところでございます。

 

 

(フリースクールやオンライン授業の出席扱いの基準について)

議員からご質問のありました、オンライン授業につきましては、コロナ禍への緊急対応などもあり、ここ数年で急速に普及してきた新たな授業形態であり、これを出席扱いとすることにつきましては、現時点で国や都から明確な基準が示されておらず、具体的な出席の条件をどのように設定するかなどの課題もございます。一方で、不登校の状態を脱するきっかけとしてオンライン授業の有効性が注目されているところでもあり、ご質問の趣旨を踏まえ、今後他の自治体の取り組みなども参考に校長会と協議を進め、課題について1つ1つ解決を図りながら、フリースクールも含めて出席要件に関する区としての一定の基準をお示し出来るよう、しっかりと検討してまいります。

 

 

(不登校の児童・生徒と保護者への支援について)

次に、不登校の児童・生徒の保護者支援につきましては、学級担任や養護教諭、さらには心理の専門家であるスクールカウンセラー等が、不登校児童・生徒や保護者に寄り添いながら、1人ひとりの子どもにあった支援を行うとともに、福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーが家庭と連携を図り、子ども家庭総合センターや医療などの関係機関につなげるなど、アプリの活用も含めてきめ細かな支援に努めているところでございます。

 

議員からご提案のありました、NPO法人における保護者への支援につきましては、教育センターにおける教育相談において保護者の辛さを受け止めつつ、共感的理解と受容の姿勢で寄り添いながら、『あらかわ子ども応援ネットワーク』等を相談先として区のホームページに掲載したり、教育センターのスクールソーシャルワーカーをNPO法人に出向かせるなど、区内のNPO法人との連携・協力を今後とも積極的に進めてまります。

 

教育委員会といたしましては、全ての子どもたちの学びの確保に向け、1人ひとりの子どもたちの状況を適切に把握し、多様な支援方法を拡充するとともに、保護者の方々のご心配・ご不安の解消に向けて、不登校対策の充実により一層努力して参る所存でございます。」