令和5年11月22日に、令和5年度荒川区議会定例会11月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った若林由季(わかばやしゆき)議員の質問「就学前教育プログラムについて」と、それに対する子ども家庭部長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

18:45~ 一般質問「就学前教育プログラムについて」

49:45~ 子ども家庭部長答弁

 

 

若林由季(わかばやしゆき)議員 一般質問(4)「就学前教育プログラムについて」

 

 

若林由季(わかばやしゆき)議員(自民党・次世代)

 

 

「(前略)

 

次に、『荒川区就学前教育プログラム』の見直しについて質問いたします。

 

 

(『荒川区就学前教育プログラム』の役割について)

『荒川区就学前教育プログラム』は、小学校入学以降の不適応状況、いわゆる『小1プロブレム』に対応するため、保育園・幼稚園・小学校の連携・接続を円滑に行うとともに、保育・教育施設が互いに理解を深め、いかなる教育・保育施設で育っても等しく質の高い教育・保育が受けられるよう、区としての就学前教育の指針として平成28年3月に策定したものでございます。本プログラムは、就学前から小学校へ円滑に接続するため、各年齢の発達の特徴と、それを踏まえた保育の中で大切にしたいこと、経験させたい保育内容、家庭との連携についてを明らかにし、各月齢・年齢のカリキュラム例とともに保育園・幼稚園等での実施事例を示し、子どもたちの健やかな育ちにつなげていると認識しております。

 

世の中にはたくさんの育児本がありますが、実際に子育てを行う荒川区での教育方針をお示しいただくことは、荒川区にて子育てを行う保護者にとっては1番身近な育児書であり、子育ての道しるべになると思います。

 

 

(『荒川区就学前教育プログラム』の改定の必要性について)

しかしながら、本プログラムの策定から7年が経過しており、保育の現場においては一斉保育から子どもの主体性を重視する保育を目指すようになり、小学校においても35人学級の導入やトイレの洋式化などの環境改善などもございました。このような状況の中で、本プログラムを時代に合わせた内容にし、就学前から就学後への滑らかな接続をサポートする大切な方針が示されることで、子どもたちが豊かな心を持ち、健やかに成長していくことにつながると考えますが、区の見解をお伺いいたします。

 

 

(『しつけ』の定義等について)

現役子育て世代として、この場で少し私の思いをお話しさせていただきます。

 

現在、私も日々子どもの取り巻く環境の変化に応じて、正解の無い育児に奮闘しております。育児を通じて強く感じることは、子どもを取り巻く社会並びに家庭内の環境が昔に比べて大きく変化をいたしましたが、子育ての行為1つ1つが今と昔の子育ての違いだけで片付けられることに疑問を感じ、未来の子育て環境に対して大きな不安を抱いております。

 

厚生労働省が公表した人口動態統計において、1歳・2歳の幼児が就園している子どもの割合は、就園していない子どもと比較して、今年の4月の発表ではほぼ半数という結果が出ました。共働き家庭が増え、家庭において保護者と子どもが過ごす時間は減少しております。そのため、昔は家庭内でいわゆる『しつけ』が身につけられていたが、今では生後数ヶ月の時期から保育園に通う子どももおり、また幼稚園に入園する子どもについても、家庭において『しつけ』を身につけることが出来ない子どもたちも増えてきたと言われております。そのため、保育園・幼稚園の先生方の役割は、親に代わり『しつけ』の主たる担い手という捉え方をしかねないのが現状です。

 

心理学者の岡本夏木氏は、育児における『しつけ』を次のように定義しています。

 

『文化社会で生きていくために必要な習慣・スキルや、為すべきことと為すべきでないことをまだ十分自分で実行したり判断できない年齢の子どもに、初めは外から処罰を用いたり、一緒に手本を示してやったりしながら教え込んでいくこと。そして、やがては自分で判断し、自分の行動を自分でコントロールすることによって、それを自分の社会的行為として実践できるよう、周囲の身近な大人たちが仕向けていく営みである。』

 

このように定義をした上で、着物の『しつけ(糸)』が担っている意味の方が、『しつけ』の過程の本質により良く表していると指摘しています。いよいよ着物が縫い上がると、『しつけ糸』は外されます。本来『しつけ』は、『しつけ糸』を外すことを最初から目的にして為されるものであり、この外すことが子どもの発達にとって重要な意味を持つと言われております。子どもの『しつけ』は、大人が子どもの様々な生活場面に介在して手をかけ、『しつけ糸』をつけ、その後子どもたちが経験を積むことで内面的な自立が本縫いとなれば、いずれ親がつけた『しつけ糸』を外すと同時に、親は身を引いていくものだと定義をされています。

 

共働き家庭や生活環境が昔に比べ大きく変わった現在は、その『しつけ糸』をつける作業を保護者・保育者ともに『しつけ糸』をつけるという思いを持ち、互いに敬意を表し、歩み寄り、保護者が参画する保育を実現できる世の中になってほしいと強く願っています。

 

 

(『小1プロブレム』の対応について)

次に、『荒川区就学前教育プログラム』の幼小接続期について質問いたします。

 

本プログラムにおいて、就学前から小学校への接続期を5歳児後半から小学校1年生1学期までと捉えています。依然完全な幼保一元には時間を要している以上、今後も異なる教育方針の下、幼少期につけた『しつけ糸』を持つ子どもたちが1つの環境に馴染むには、もっと緩やかに小学校という環境にソフトランディングする必要があると考えています。

 

いわゆる『小1プロブレム』と言われる行動に示される、小学校の生活や雰囲気になかなか馴染めず、落ち着かない状態で、授業中にも関わらず複数の子どもたちが教室内を歩き回ったり、先生の指示通りに行動できなかったりするのは、子どもが学校生活という慣れない環境への不安から取ってしまう行動だと考えられています。この接続期を小学校低学年までと捉えることで、保護者・教師ともに子どもたちに起こりうる行動と認識を持ち、じっくり見守る時期を確保していただきたいと願います。

 

発達障害の早期発見が強化された結果、発達障害児が急増した現在に警笛を鳴らす一助になればと願っておりますが、区の見解をお伺いいたします。(後略)」

 

 

 

子ども家庭部長 答弁

 

 

「(前略)

 

次に、就学前教育プログラムの改定に関するご質問にお答えいたします。

 

 

(『荒川区就学前教育プログラム』の役割について)

乳幼児期は生涯にわたる人間形成の基礎が培われる大変重要な時期であり、区では子どもたちが設置主体や施設形態の違いによることなく、どのような就学前施設で育っても等しく質の高い教育・保育を受けられるよう、平成27年度に『荒川区就学前教育プログラム』を策定いたしました。

 

本プログラムは、子どもの発達や学びの連続性を考慮し、0歳から就学までの発達過程に応じて共通して経験させたい内容を明らかにするとともに、幼保小の連携による小学校への滑らかな接続や、家庭との連携による保護者支援などの視点にも立ち、実践事例を数多く盛り込んだ内容とすることで、子どもたちの健やかな成長につなげてまりました。また、策定にあたりましては、幼稚園・保育園・小学校などの関係機関が組織や施設の枠を超えて議論に参加し、交流を図ることで、互いに理解を深め、就学前教育の質を高め合う取り組みを推進する体制を一層強化することが出来たことは、大きな成果の1つでした。

 

 

(『荒川区就学前教育プログラム』の改定について)

一方で、議員ご指摘の通り、本プログラム策定から7年が経過し、この間保育所保育指針の改定や小学校の学習指導要領の改定もあり、幼保小の連携がより強く求められていることから、荒川区の子ども1人ひとりが未来を拓き、たくましく生きる力の基礎を身につけられるよう、現在の幼児教育・保育を取り巻く環境や、議員のご質問の趣旨も踏まえ、関係機関と連携し、『荒川区就学前教育プログラム』の改定に向けて準備を進めてまいります。

 

 

(『小1プロブレム』の対応について)

最後に、『(荒川区)就学前(教育)プログラム』における幼小接続期についてお答えいたします。

 

現在小学校では、入学後の児童が学校生活に徐々に慣れることが出来るよう、入学から数ヶ月は学習に遊びの要素も取り入れたスタートカリキュラムを編成しております。本プログラムの改定にあたりましては、こうした小学校側の取り組みも踏まえ、年長時後半から小学校入学後1学期までの時期における発達段階に応じた好奇心や、学びに向かう楽しさ、協調性など、接続期の子どもの学びの質をより高めることを狙いとし、議員ご指摘の幼児教育から小学校教育への緩やかなソフトランディングの実現にもつがるよう、発達障害など個別の発達に対しても十分配慮をしてまいります。

 

 

区といたしましては、幼保小の職員同士の顔の見える連携の更なる強化を図り、荒川区の全ての子どもたちが心身ともに健やかに成長するよう、乳幼児期の教育・保育の充実を図ってまいります。」