令和5年9月12日に、令和5年度荒川区議会定例会9月会議の一般質問が行われました。
一般質問を行った山田晴美(やまだはるみ)議員の質問「部活動の地域移行・外部委託について」と、それに対する教育部長の答弁を記載します。
※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。
4:55~ 一般質問「部活動の地域移行・外部委託について」
21:25~ 教育部長答弁
山田晴美(やまだはるみ)議員 一般質問(1)「部活動の地域移行・外部委託について」
山田晴美(やまだはるみ)議員(維新・子育ての会)
(維新・子育ての会幹事長)
「維新・子育ての会、山田晴美です。令和5年度、2期目、第1回目の一般質問をさせていただきます。
(議会で子どもに関する質問をしてきた理由について)
私は1期目の時から、子育てや子どもの未来についての質問を取り上げてきました。それは私自身が子育て真っ只中だから、今起きている現実から目を逸らさないよう、目をつぶらないようにです。
また、私自身高齢者と同居していることで、介護の実態についても実体験済みではありますが、しかし、少なくとも大人は声を上げられる機会や語彙力もあります。でも子どもたちの声は大人の管理下にあるため、大人が子どもの声を大人都合や既成概念でその真実とは違う解釈をしたり、その子どもの本音を見極められなかったりすると感じているからです。
(親野智可等氏の著書『子育て365日』について)
私は、一般質問で毎回1冊の本をご紹介してきました。今回も1冊ご紹介させていただきます。
著者、親野智可等(おやのちから)さん、題名は『子育て365日』という一冊。この著者は、ペンネームで親の力を当て字で使っています。本名は杉山桂一さん。長年の教師経験をもとに、教育評論家、親力アドバイザーとして活躍されています。全国各地で小中高学校・幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育委員会、先生や保育士の研修会でも大人気となっています。また、あの人気漫画『ドラゴン桜』の指南役としても有名な方です。
この本は、1年365日子育てで頑張っている親たちへ送る応援メッセージになっています。
第1章『子どもがもっとかわいくなる言葉』
子どもは天からの授かりものではなく、預かりもの。つまり、親のものではないというメッセージ。これは、一人の人間をお預かりして育てさせていただいているのだと考えると良い、と親野智可等さんは言っています。
第2章『子どもと上手につきあえる言葉』
子どもとずっと一緒にいて感じるストレスの原因は全て、相手のペースに合わせなければいけないこと。自分がしたいことを自分のペースで出来ないことが続くと、想像以上のストレスになる。これは大人同士の世界では決してわからないストレス、というメッセージ。これは、妻がワンオペ育児になっていたら夫はこのことを決して忘れず、妻が一人になれる時間を作ってあげてください、と親野智可等さんは言っています。
最後に、第7章から『学校や勉強がうまくいく言葉』
日本の学校は、全員が同じ時に同じことを同じように行うという集団主義が大前提の設定だ。すでにそういう時代ではなく、完全に時代遅れ。不登校が増えているのは、子どもたちが身をもってそれを教えてくれているのだ、というメッセージです。これは、教育の個別最適化に本気で取り組まないと日本に未来はありません、と親野智可等さんは言っています。
今、ほんの一部をご紹介しました。子どもは預かり物であること。子育てのストレスは、大人の世界には無いものであること。不登校の増加は、子どもたちが身をもって教育の時代遅れを教えてくれているということ。私はこの本を読んで、子ども目線になる必要性をさらに強く感じた次第です。
さて、質問に入ります。
(子ども議会の復活について)
先日、荒川区では『(荒川区)子どもの権利条例』制定に伴い、『子ども議会』が復活しました。子どもたちの困ったや未来への希望について、大人が子どもたちの生の声を聞く機会はより多くあるべきと思っていますので、是非とも継続的に実施していただきたいと思っています。
(子どもを囲む大人や社会の問題について)
今、政府も子ども支援について様々な政策を打ち出そうとしています。今年発足した子ども家庭庁も、子どもが真ん中(『こどもまんなか』)という考え方を打ち出しています。しかし、子どもが真ん中なの当たり前で、肝心なのはその子どもを囲む大人たちであり、社会であり、その大人の問題をクリアにしていかないと、真ん中にいる子どもたちの困ったは解決しないというのが事実です。ヤングケアラー、虐待、いじめ、不登校など、2000年代に入り増加傾向にある中で、今後さらに増加していくという推察は誰もが懸念していることです。
(教員不足について)
私は思います。このような困りごとを抱える子どもたちを救うには、相談窓口を置いたり、専門家を配置することだけでは救えないと。そこでやはり避けて通れない学校のあり方、そして先生方の働き方改革、ここを強化すべきと感じます。今、教育現場では教員不足が深刻化していて、疲弊している先生方は職員室で談笑する余裕すら伺えない。欠席した生徒の家庭への連絡や、生徒からの相談事に向き合う時間すら作れずにいるのが現実ではないでしょうか。
(先生のフォロー体制の構築について)
しかし、教育不足を解消する目途は立っていない今、早急に先生方のフォロー体制を作るべきと考えます。
まず小学校においては、2022年度から高学年で教科担任制が実施されるようになりました。しかし低学年においても、体育や家庭科など実技のある教科については専任教員が必要です。しかし、これも教員不足という問題があります。であるなら、地域からボランティアを募集し、スポーツ好きな方を体育授業補助、そうさい(裁縫?)や料理が得意な方を家庭科補助など、教壇に立たなくても教えられる補助員を配置すれば、担任の先生の負担軽減になりますし、荒川区が掲げる地域で子育ての一躍を担うのではないでしょうか。
(部活動の地域移行・外部委託について)
また中学校においては、部活動の地域移行や外部委託の推進です。2022年12月にスポーツ庁と文化庁の両庁名で、学校部活動及び新たな地域クラブ活動のあり方等に関する総合的なガイドラインが策定され、文科省は2020年9月に学校の働き方改革を踏まえた部活動改革についての書面で、2023年度から公立中学校での休日の部活動を地域移行させると発表しました。
参考として、他自治体の事例をご紹介します。
(静岡県掛川市の事例について)
静岡県掛川市では、2021年度から地域移行に向けた体制整備を進め、2023年1月の総合教育会議で部活動を廃止し、最終的には学校と切り離すこととしました。そして、2026年度までに部活動を習い事の一つとして捉えて、掛川地域クラブに移行する方針を示したところです。この掛川地域クラブは掛川市のスポーツ協会や市文化財団に対する業務委託によって運営され、その他の地域団体が運営する各クラブには市が支援することとされています。
(富山県黒部市の事例について)
また富山県黒部市では、2021年度に『KUROBE型地域部活動』をスタートさせ、全中学校のうち中部について、休日における部活動を地域部活動に転換しました。そして、2023年度以降にはすべての運動部活動の休日を地域に移行することを目標としています。
(川崎市の事例について)
そして、先日私が視察させていただいた川崎市の事例をご紹介させていただきます。
川崎市からの要請を受けて2006年に『特定非営利活動法人高津総合型スポーツクラブSELF』が設立されました。設立準備委員会結成から約3年かかったそうです。この本拠地・クラブハウスは、川崎市立高津中学校の敷地内にあります。学校と地域と行政をつなぐパイプ役として、子どもたちの未来を育てる一躍を担っています。もちろん、土日・祝日・学校のお休みの間も定休日なしで運営されています。
主な受託事業は、川崎市高津スポーツセンター指定管理業務、川崎市立学校施設地域管理業務委託、これは市内15校の業務を担っているそうです。川崎市学校施設有効活用事業、いわゆる学校開放管理です。地域の寺子屋事業委託、地域における障害者スポーツ普及推進事業、災害時避難所開設管理、選挙投票所設営運営など、多岐にわたり業務を受託しています。
もちろん小さい子どもから高齢者までが入会でき、市外からもたくさんの方々が通っているそうです。また、月曜から日曜までトータル47種目のカリキュラムが組まれていて、指導者はトータルで100人ほど登録されているそうです。場所は、部活が終わってからの学校のグランドや体育館、多目的室などが使われています。部活では足りない子どもたちは、部活のない日にクラブへ通う。また、部活とは違うスポーツを楽しむためにクラブへ通う。そして文化系のカリキュラムでは、会員が自らイベントや大会などの企画もしているそうです。このような受け皿があれば、土日の部活動だけでなく学校教員が担う平日の部活動日数を減らしても、スポーツクラブへ行くことでちゃんと指導を受けることができます。
しかし、難題となるのは何事も人です。人材は必要です。このスポーツクラブSELFでは、地域の卒業生を中心にまさに人が人を呼ぶ連鎖が構築されていました。そして学校が担う管理業務を請け負うことで、学校側も業務のスリム化が図れます。
(部活動の地域移行・外部委託を早急に求める旨について)
私はこの部活動地域移行・外部委託について簡単だとは思っていません。ですが、少子化問題はありますが荒川区の人口は増加傾向にあり、教員不足の解消が見込めない現状であるのなら、何より成長期である子どもたちの心と体のためにも早急に取り組んでほしいと強く要望しますが、区の見解をお伺いします。(後略)」
教育部長 答弁
「初めに、部活動に関するご質問にお答えいたします。
中学校における部活動の運営は、極めて重要な教育的意義を有する活動である一方、教員の負担軽減を図り、働き方改革を推進していくことが大きな課題となっております。国においてはこうした部活動を取り巻く状況を踏まえ、地域のスポーツ・文化団体と連携した部活動の地域移行が提唱されており、ご紹介にもありました通り全国の自治体において様々な検討が進められ、試行的な取り組みが行われております。
議員ご指摘の通り、部活動の運営を地域団体や民間企業等と連携して取り組んでいくことは、部活動運営に関わる様々な課題を解決するための有効な方策の一つであると認識しております。また、そうした取り組みにより部活動にかかる教員の負担が軽減されることで、教員が生徒と向き合うためにより多くの時間を確保することが出来るようになり、教育活動の充実にも寄与するものと考えております。
今後教育委員会といたしましては、各校における部活動の実態把握に努めるとともに、他自治体における先進事例について調査・研究し、生徒の自主的で多様な学びの場である部活動の維持・発展に努めてまいります。(後略)」