令和5年度荒川区議会定例会・9月会議(令和5年10月11日)において、2つの区立保育園の指定管理者の指定に関する議案について討論が行われました。

 

議案は下記の通りです。

・議案第26号 荒川区立上尾久保育園の指定管理者の指定について

・議案第27号 荒川区立南千住さくら保育園の指定管理者の指定について

 

上記の議案については、上記2つの区立保育園の指定管理者に指定されたのが社会福祉法人上智社会事業団であり、同法人は学童クラブ等の人員配置の虚偽報告を行い、委託料の不正受給を行ったことが発覚したため、区議会は同議案を決定するとともに、厳正な対処や再発防止等を求める附帯決議を決定しています。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

27:10~ 斉藤邦子議員 討論「区立保育園の指定管理者について」

 

 

 

斉藤邦子(さいとうくにこ)議員 討論「区立保育園の指定管理者について」

 

 

斉藤邦子(さいとうくにこ)議員(共産党)

 

 

「日本共産党荒川区議会議員団を代表して、議案第26号荒川区(立)上尾久保育園の指定管理者の指定についての賛成の討論を行います。第27号荒川区(立)南千住さくら保育園の指定管理者の指定についても同様です。

 

 

(委員会での再審査が行われなかった経緯について)

文教・子育て(支援)委員会で9月20日に本議案が審査された後に、今回の指定管理の指定を受ける社会福祉法人上智社会事業団が業務委託を受けている2箇所の学童クラブ及び5箇所の学童・放課後子ども教室総合事業においても、職員配置の虚偽報告を行い、委託料の不正受給を行った事実が判明をいたしました。

 

委員会審査の時点では把握できていませんでしたので、私たちはこれを受けて、向こう5年間の指定管理の指定を行って良いのか、改めて委員会で再審査を行うべきと考えました。重大な状況の変化が生じた場合、本会議の議題にかけられる前であるならば、文教・子育て(支援)委員会の委員長及び委員全員が再審査に合意すれば自主的に再審査を行うことが出来、一事不再議の原則ではなく委員会の自立性が尊重されるとなっています。幹事長会、議会運営委員会でも意見を申し上げましたが、残念ながら全体の合意を得ることは出来ませんでした。

 

 

(不正発覚の時系列について)

6月中旬、新宿区の学童クラブで内部告発を受けて7月に不正が発覚、荒川区も同じ事業者に業務委託をしているためワーカーズコープの調査を行い、8月初めに同様の事実が確認をされました。日本共産党は委託をしている6事業23箇所の調査も行うことを要求し、今回の結果となりました。

 

 

(ワーカーズコープ、上智社会事業団、荒川区の責任について)

そもそも内部告発からの始まりです。もし調査が無かったら通り過ぎ、分からずじまいになったのではないか。当該法人の責任は重大です。また、今回の学童クラブの不正請求問題は、公の施設であるにも関わらず日常的な現状把握も無く、指導監督も十分行われなかった結果であり、区は責任を重く受け止める必要があります。

 

 

(急に指定管理者を変更することが困難であることについて)

上智社会福祉事業団(上智社会事業団)は区内保育園7か所の指定管理中、今回の指定の更新を含めて3箇所受け、園児の定員は379名です。来年度の保育園募集も始まっています。今回の事態を受けて急に指定管理者を変更することは、子どもの保育継続に支障をきたすこともあり、今回の指定管理の指定にはとりあえず賛成をいたします。

 

 

(不正受給の状況について)

不正受給は、2法人、9学童クラブ、6箇所のニコニコスクールに及びます。25学童クラブの民間委託では36%に及び、大変な事態です。今回指定する指定管理者も関わることですので、今後の対応について何点か申し上げておきたいと思います。

 

 

(調査と検証について)

第1は、不正受給がいつからどうして起きたのか、不正受給額はいくらなのか、その間の保育で子どもへの影響は無かったのか、職員の働き方はどうなっていたのかです。また、20年以上経過している指定管理制度と民間委託の問題点の洗い出し、設置者としての区の責任、今後の再発防止策など、徹底調査と総合的な検証を行うべきです。法人の内部検討や区の調査だけでなく、外部有識者による第3者機関の設置や、議会での集中審議が必要であると考えます。

 

 

(公契約条例の制定と処遇改善について)

第2は、保育サービスの基本は人が要です。その人の配置が確保できなかった原因の1つには、安定して働ける労働条件や賃金保障の問題があります。保育士及び学童保育支援員が、専門職にふさわしく生きがいをもって働き続けたいと思える処遇の改善を図ることが急務です。決算特別委員会でも質疑をいたしましたが、最低賃金など法令遵守は当然のことで、公契約条例を制定し、契約審議会で労働報酬下限額を独自に告示する体制を1日も早く作ることを求めたいと思います。

 

 

(国の保育士配置基準の見直しについて)

また、保育の質の確保と安定的な運営、不適切保育を起こさないためにも、『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』に定められた保育士配置の最低基準そのものの抜本的な改定に踏み切ること、強く声を上げていただきたいと思います。

 

 

(学童クラブの規模が過大であることについて)

また、学童クラブの厚生労働省の基準は概ね40人以下とされていますが、定員40人以下は2学童、圧倒的に荒川は大規模学童です。詰め込みで児童の安全と豊かな保育が出来るのか、真剣に検討すべきです。

 

 

(サービス残業の改善について)

保育園や学童クラブの学校休業中の朝の開所準備や、子どもたちの退所後の点検・戸締まりなどの時間は勤務時間に含まれず、サービス残業になっています。この改善も求めておきたいと思います。

 

 

(指定管理施設のより詳細な状態の把握と公開の必要性について)

第3に、指定管理の実績評価では人員・運営基準や労働環境は適正であるとされていますが、同法人の不適切保育もあり、職員の経験年数や賃金の実態、研修などの状況も具体的に把握し、この実績評価に報告を記載することが必要です。公の施設の指定管理の賃金実態も含め、運営状況を正確に把握できるようにすること、区の責任が完徹できるよう見直しが必要であると申し上げ、討論といたします。」