令和5年9月12日に、令和5年度荒川区議会定例会9月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った夏目亜季(なつめあき)議員の質問「がん対策について(HPV以外)」と、それに対する健康部長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

9:10~ 一般質問「がん対策について(HPV以外)」

40:15~ 健康部長答弁

 

 

 

夏目亜季(なつめあき)議員 一般質問(3)「がん対策について(HPV以外)」

 

 

夏目亜季(なつめあき)議員(自民党・次世代)

(福祉・区民生活委員会副委員長)

 

 

「(前略)

 

次に、がん患者の支援策についてお聞きします。

 

 

(がん患者のウィッグや胸部補正具の購入費用の助成について)

昨年取り上げた問題について進捗状況をお伺いするために、改めて質問させていただきます。前回、がん患者のウィッグや胸部補正具の購入費用の助成に関する問題を取り上げ、他の区や自治体の取り組みについて触れました。その後の取り組みとご検討について、進捗を聞かせていただければ幸いです。

 

現在、葛飾区・豊島区・千代田区・中央区・港区・江東区など、東京23区でも複数の区でがん患者のウィッグや胸部補正具の購入費用の助成が行われています。さらに横浜市・伊勢崎市・仙台市・名古屋市など他にもたくさん全国的に同様の取り組みが広がっており、自治体ごとに助成内容は多少異なるものの、同様の支援が行われていることを認識しております。

 

がん治療における脱毛や乳房の切除などは、患者にとっては身体的・精神的な負担が大きいものとなります。それに加え、治療の副作用として外見の変化が生じることは、患者のQOL・生活の質にも大きな影響を及ぼします。外見の変化は患者にとって心の負担となり、社会参加や人間関係にも大きな不安を与えることがあります。しかし、現代のウィッグは非常に自然な見た目であり、患者の自信や心の明るさが取り戻されることがあります。

 

前回質問させていただいたように、がん患者の外見に寄り添うことは患者の心を支えとなる重要なポイントです。そのため、荒川区においてもがん患者のウィッグや胸部補正具の購入費用の助成を進めていただきたいと改めて提案させていただきます。これは患者の心の健康を支え、社会への復帰を助けるための重要な取り組みとなります。がんとの共生が求められる現代社会において、患者の立場に立った支援がより一層必要とされており、他の区や自治体の取り組みを参考にし適切な支援策を検討することは極めて大切です。

 

 

(相談・情報提供等のがん患者支援について)

また、区の公式ウェブサイトには『「がん相談・サポート」について』というページがございます。がんと診断されると不安や心情の変化、治療や日常生活における選択への焦りが生じることがあります。こうした方々に安心して相談できる場など、情報提供を区は行っています。このような情報提供は、がん患者やその家族が適切なサポートを受けながら治療や生活の課題に向き合うための助けとなるものと理解しております。このページ提供のほか、現在区で行われているがん患者支援の具体的な取り組みについてありましたら、その詳細について教えてください。

 

また、地域の皆様が治療や生活への不安を抱える際に、例えば窓口で相談を聞いたり、信頼できるサポートが得られるよう、区独自の取り組みを行うことはありますでしょうか。他の自治体の取り組みを踏まえて、区独自のがん患者支援策を検討する際のポイントや考え方について、またがん患者支援策をどのように進めていくのか、お考えをお聞かせいただければ幸いです。

 

 

(がん検診のあり方について)

続いて、区におけるがん検診のあり方についてです。

 

以前からHPVワクチンに関する諸問題やコロナ対策に関する諸問題について、エビデンスに基づいた意思決定が大切だというような趣旨で様々な質疑や要望を行ってまいりました。

 

現在、区では胃がんリスク検査であるABC健診を実施しております。こちらはピロリ菌感染によって医の粘膜が萎縮が進むとがんの発症リスクが高まる可能性があり、血液検査を通じて胃がんのリスクを判定する検査となっております。この検査ですが、このABC検診、死亡率の減少について明確な利益が確認されていないため、効果的な対策型検診としては推奨されてはいません。もし任意型検診として行う場合は、死亡率減少の効果について不明であることや、検診に伴う不利益について適切に説明を行う必要があるという旨の記載が国立研究開発法人国立がん研究センターに記載されていました。

 

がん検診の種類は2種類あり、対策型検診というのは集団全体のがん死亡率の低下を目指し、効果が確認された検査法を用いて公共的な予防措置として行われます。このため、有効ながん検診を選び、利益が不利益を上回ることが基本的な条件で、公共的な予防策として行われるため、費用は無料またはわずかな自己負担で実施されます。もう一つの任意型検診というのは、個人の死亡リスクを下げるため、その個人が癌にかかっている可能性が無いかを確認する。基本的に全額自己負担となるため、集団検診に比べ自己負担の金額は大きくなりますということです。

 

要するに、胃がん検診、胃がんリスク検査は死亡率減少の効果がはっきりせず、また対策型検診としての推奨もされていない状況です。ABC検診を任意型検診の方に切り替えては良いのではないかと思っています。この検査にかかる予算や区の立場についてはどうなのか、その点について教えていただければ幸いです。

 

先日、宮崎市長の講義を受けましたが、エビデンスが不十分な施策は反対されてもしっかりと切っていく必要があるという旨の話をされており、このABC検査と前立腺がんのPSA検査について取り上げられておりました。私も大変共感しました。健康への意識が高まる中、公共の予算を適切に使うためにも、エビデンスに基づいた判断が不可欠だと考えております。効果がはっきりしない施策には慎重な検討が必要であり、区民のために最良の結果を生み出すためにも、効果的な選択肢を見極めることが重要だと考えています。健康への配慮と財政のバランスを保つためにも、エビデンスに基づきながら効果が期待できるがん検診の実施を検討すべきだと思います。地域の健康への取り組みと財政効率の両面を考えた上での見解をお伺いします。(後略)」

 

 

 

健康部長 答弁

 

 

「(前略)

 

(がん患者のアピアランスケアについて)

次に、がん患者の支援策に関するご質問のうち、まずアピアランス(外見)ケアについてお答えいたします。

 

区では、癌に罹患した後も住み慣れた地域で自分らしき生きるため、がん患者の心理的苦痛を軽減するアピアランスケアは重要だと認識をしております。一方で、支援する場合の対象品目の選定や、同様の品目でも商品間の金額差が大きいこと、また病状や治療の状況により必要な頻度や間隔が違うことなど、様々な検討すべき課題があったため、これまで情報の収集に努めてまいりました。今年度東京都の補助事業にアピアランスケア支援事業が加わったことにより、都において一定の方向性が示され、議員ご指摘の通り複数の区で支援が開始されました。本区におきましても、先程お示した課題解決に向けて他区の状況も確認しつつ、アピアランスケアの実施に向け具体的な準備を進めてまいります。

 

 

(がん患者支援の施策について)

次に、区のがん患者支援に関するご質問についてお答えいたします。

 

議員お話の通り、現在区ではホームページでがんに関する情報提供を行っているほか、癌の相談があった際には看護師や保健師等が寄り添いながら丁寧にお話を伺うとともに、必要に応じて適切な部署や関係機関等と連携して対応を行っているところでございます。

 

これまで相談対応等をする中で、区独自でがん患者支援策を検討するポイントや考え方として、患者の治療やその副作用等、医療に関する専門的な内容に関しては主治医や癌の専門医等と連携し対応すること、加えて地域で安心して療養するための支援として、区のサービスに加え、地域の関係者や各種がん支援団体のサービス等の情報提供が重要であると考えております。あわせて、患者の家族に対しても様々な不安やお困りごとについて丁寧に伺い、患者と同様に支援する必要があると考えております。

 

区といたしましては、議員同様に今後もさらなる患者支援が必要と認識しておりまして、引き続き区民を初め家族や関係者に寄り添いながら柔軟かつ丁寧な対応を行うとともに、他自治体の取り組み事例を参考にしながら関係機関と連携し、がん患者並びにご家族等に対するより良い支援が行えるよう取り組んでまいります。

 

 

(がん検診のあり方について)

次に、区におけるがん検診のあり方に関してお答えいたします。

 

区ではこれまで癌による死亡率減少を図り、区民の健康の保持・増進を推進するため、受診率の向上及び精度の高いがん検診の維持に取り組んでまいりました。しかしながら、現在の体制ではこれ以上がん検診の受診者数を増やすことや医師の確保は難しいこと等の課題があるものと認識しており、検討が必要と考えております。

 

これらの課題の一つとして、議員ご指摘の指針外のがん検診がございます。区におけるがん検診は、国の指針に基づき実施することを原則としておりますが、国の指針外の検診として胃がんリスク検査や35歳から39歳対象の若年者向けの胃がん検診を実施しております。胃がんリスク検査はがん検診受診の意識醸成のために毎年1000万程度の経費をかけており、若年者向けの胃がん検診は若い世代からの生活習慣改善のために実施しております。

 

これら指針外のがん検診につきましては、荒川区医師会専門医等に専門的な見地からご意見を伺う場であるがん検診制度管理委員会等では整理してほしいとのご意見もいただいている一方で、区民からは継続して実施してほしいとのご意見もいただいているところでございます。

 

区といたしましては、今後も議会含め幅広くご意見を伺いながら、エビデンスに基づくより効果の高いがん検診のあり方について検討してまいります。(後略)」