令和5年6月28日に、令和5年度荒川区議会定例会6月会議の一般質問が行われました。

 

一般質問を行った松田智子(まつだともこ)議員の質問「HPVワクチンについて」と、それに対する健康推進担当部長の答弁を記載します。

 

※ この記事の「」内に記載している発言は、音声を文字起こししたものです。不正確な部分がある恐れがあります。また、「」内の()は筆者注です。「」内の漢字やカタカナ、ひらがな等の使い分けは筆者の解釈によるものです。ご了承ください。

 

 

 

0:20~ 一般質問「HPVワクチンについて」

14:40~ 健康推進担当部長答弁

 

 

 

松田智子(まつだともこ)議員 一般質問(1)「HPVワクチンについて」

 

 

松田智子(まつだともこ)議員(公明党)

(福祉・区民生活委員会委員長、公明党区議団副幹事長)

 

 

「公明党の松田智子です。大きく3項目にわたり質問をいたします。理事者の皆様におかれましては、積極的なご答弁をお願いいたします。

 

 

 

初めに1項目目として、HPV子宮頸がん予防ワクチンについて伺います。

 

 

(HPVワクチンの積極的勧奨差し控えまでの経緯)

子宮頸がんは、主たる原因であるHPV、ヒトパピローマウイルスに対するワクチンと検診を組み合わせることで、撲滅が可能な癌と言われております。そこで私ども公明党は、以前からHPVワクチンの定期接種化を国に呼びかけてまいりました。その結果、2013年4月1日より、小学6年生から高校1年生相当の女性を対象とした国の予防接種プログラムに、HPVワクチンが定期接種として導入されました。しかし、定期接種導入2ヶ月後の6月14日、厚生労働省健康局から、国民に適切な情報提供が出来るようになるまでの間、定期接種を積極的に勧奨するべきではないと、積極的な接種勧奨の一時差し控えが勧告されました。

 

 

(積極的勧奨差し控えの影響について)

全国の調査では、1999年度生まれの女性の接種率は68.9%でしたが、積極的勧奨が差し控えられた時期の対象であった2000年度生まれの女性の接種率は14.3%、2001年度以降に生まれた女性の接種率はほぼ0%になっているとのことです。大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、HPVワクチンの接種率が減少したことにより、2000年度以降生まれの日本女性の将来の子宮頸がん罹患者・死亡者数を推計しました。その結果、接種率が低いまま定期接種対象年齢を超えた2000年度から2003年度生まれの女子においては、将来の罹患増加は合計約1万7千人、死亡増加は合計約4千人と推測されました。

 

 

(積極的勧奨差し控えの終了について)

それ以後も継続的に行われていた国の審議会で、安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められ、2021年11月26日、HPVワクチン定期接種の積極的勧奨差し控えが終了となりました。これを受けて2022年4月より、自治体における定期接種の個別勧奨が再開されました。

 

 

(キャッチアップ接種について)

また、積極的勧奨差し控えにより接種機会を逃した者に対して公平な接種機会を確保する観点から、従来の定期接種の対象年齢を超えて接種を行うキャッチアップ接種が、2022年度より2024年度の3年間実施されることになりました。

 

 

(日本で承認されているHPVワクチンの種類について)

ちなみに、日本で承認されているHPVワクチンの種類は、2価、4価、9価の3種のワクチンがあります。2価はHPV16型、18型の感染を予防、4価は16型、18型とプラス6型、11型の感染を予防します。また、9価は2価、4価の4つの型にプラスして31、33、45、52、58の5つの型を含んだ9つの感染を予防するワクチンです。このより予防効果の高い9価ワクチンの公費接種も、今年の4月より始まりました。

 

 

(荒川区の取り組みについて)

荒川区においては、全額助成を開始した2011年度の接種率は7割の約2千名の方が接種しましたが、積極的勧奨を差し控え後の接種者は1桁と激減しました。そして一昨年より、積極的勧奨である個別通知を再開したところ、約1割の人が接種しましたが、子宮頸がんワクチンに対する理解はまだまだ不十分であります。なぜ1割しか接種率が伸びないのか、区としてしっかりと調査し、HPVワクチンの有効性・安全性をより多くの接種対象者である本人とその家族に伝え、接種の推進を図るべきと思います。区のご見解をお伺いいたします。

 

 

 

次に、男子に対するHPVワクチンの任意予防接種助成の実施について伺います。

 

 

(男性のHPVワクチン接種について)

現在、男性におけるHPVワクチン接種による感染予防効果についても、少ない数の研究ではありますが報告があります。男性へのワクチン接種は、パートナーへの感染防止や男性自身の中咽頭がん、肛門癌などの予防につながるとされており、任意接種のため約5万円から7万円の自己負担が必要となっています。

 

 

(男性のHPVワクチン接種の助成について)

そこで秋田県にかほ市では、この4月からHPVワクチンについて、男性の接種費用を全額助成しています。中学1年生から25歳までで、にかほ市に住所があり、市が指定する医療機関で最大3回まで接種できます。また、東京の中野区では、今年の8月より男子に対するHPV任意予防接種費用助成の実施が始まります。中野区在住の小学6年生から高校1年生の男子を対象とし、区で定めた接種費用全額を助成することとなっています。

 

荒川区でも男子に対する任意予防接種助成の実施を行い、男性・女性ともにHPVワクチンによる感染の効果的な抑制を行うべきと考えますが、区のご見解をお伺いいたします。

 

 

 

現在3回接種のHPVワクチンですが、費用と物流管理の削減という観点から、1回接種で済む可能性の研究が世界では進んでいると新聞報道がありました。これらのことにより、より多くの接種者が増え、命を守る対策が進むことを願うばかりです。(後略)」

 

 

 

健康推進担当部長 答弁

 

 

「初めに、HPVワクチンに関するご質問にお答えいたします。

 

 

(これまでの荒川区の取り組みについて)

区ではこれまで、議会からのご要望を踏まえ、HPVワクチンの普及・啓発として、ホームページやSNS、区報のほか、荒川遊園でのライトアップや、区立小中学校でのがん予防出前授業、がん対策に関するイベントでのパンフレットの配布等により、区民の方へ有効性や安全性についての周知を行ってまいりました。

 

その結果、令和4年度のHPVワクチン接種数は、キャッチアップ接種を含め1回目から3回目まで合わせまして1939回となっており、前年度に比べ増加してきております。

 

 

(今後の取り組みについて)

また、本年4月から定期接種に加えられた9価ワクチンについては、すでに2価あるいは4価を用いて定期接種の一部を終了した方が残りの接種を行う場合、適切な情報提供に基づき、医師とよく相談した上で接種することが認められ、あわせて初回接種が15歳未満の場合、接種回数が3回から2回へと変更になるなど、複雑になっております。

 

このことから対象の方へパンフレットを郵送しておりますが、接種率が約1割と低いことから、引き続きワクチンの感染予防効果等について、区報やSNSなどあらゆる媒体を活用して、積極的に対象(者)に合わせた周知を図ってまいります。

 

 

(男子の接種について)

次に、男子に対する任意予防接種の助成に関するご質問にお答えします。

 

男子に対する接種は、中咽頭がんや肛門癌などの予防に効果があると言われ、独自に助成を行っている自治体があることは把握してございます。また、国において予防接種・ワクチン分科会で議題とされ、定期接種についての検討が始まったところと認識しております。

 

 

区といたしましては、HPVワクチンの有効性や安全性に関する周知を図り、まずは女性に対する接種率の向上を着実に進めつつ、男子に関しても引き続き国や他自治体の動向を注視してまいります。(後略)」