観たい映画がいくつかあるが、東京しかやっていない。
仕事を辞めてから、ずっとコロナで~、出歩く癖が モグラ叩きの一撃のように引っ込んでしまい。映画のために1時間近く電車や地下鉄に乗る気がしない。
一番観たいのが、マイルスデイビスの音楽ドキュメンタリー。
それが、なんとネットフリックスで観られるというので、会員になった。
「マイリス・ディヴィス クールの誕生」2019年 アメリカ
ジャズのトランぺッターのマイルスデイビスの青年時代から亡くなるまでを追ったドキュメンタリー。
2時間足らずだが、知らないエピソードとか、プライベート映像がいっぱいでてきて、楽しかった。 エピソードを語るジャズマンたちの今の年取った姿や語り口も、なかなか興味深い。 マイリスのあのしわがれ声の
ナレーションが流れるたびにうれしくなる。(でも、これは吹替えらしい。それでもいい…)
ジャズの帝王といわれるマイルスデイビス。 こんな表現は好きでない。 ジャズという分野に閉じ込めておける人じゃない。
イリノイ州で育ち、トランペットを習い、ラジオから流れてくるジャズにあこがれる少年が、ニューヨークに出る。 スイングジャズからビバップに移ろうとしていた時期。
ジュリアード音楽院に通いながら、チャーリー・パーカー(サックス)、ディジー・ガレスビー(トランペット)などの一流のミュージシャンの見様見真似をしながら、独自のスタイルを確立する。 チャーリーパーカーなんて、酒とドラッグでボロボロで、マイリスは真似をしてドラッグまで手をだす。35歳でパーカーは早死にするが、シュガーレイというボクサーの自分を律する生活態度に心服し、きちんとした生活に戻る。ファッションもスタイリッシュ。
映画に戻ります。
クールの誕生というこの映画の副題は、1956年のレコードの題名。 ただ、ホットなアドリブを延々と繰り返すのではなく、きちんとアレンジして、小型のオーケストラみたいなクールなスタイル、サックスやホルンなども加わった9重奏団。 マイルスはこの時点でたったの23歳。 。
アメリカで成功したマイケルは、ジャズフェスティバルのためにパリに行く。
サンジェルマンデプレでは、サルトルやピカソなどとも対等に話せ、黒人差別なんてナンセンスだという彼の地の文化がすっかり気に入り
「差別しない白人もいる」と感激している。ジュリエット・グレコ(本人が出演している)と恋仲になったが、アメリカに帰って来る。
フランス映画の「死刑台のエレベーター」の音楽は、マイルスデイビス
なんと、録音スタジオで、ラッシュを見ながら、楽譜もなく、即興で音楽を作った。 映画では、スクリーンに向かってトランペットを吹くマイルスが見られる。
フランスからアメリカに帰って来るが、「白人の暴挙に黒人が苦しむ国だ」。 ヘロイン中毒になり、 のどの腫瘍ができて、咽頭を切除する。 しわがれ声は、このためだ。
私は、若い時に、アメリカはジャズという立派な音楽があり、白人も楽しんでいるのに、どうして黒人差別をするのか?と素朴に思っていた。
黒人の立ち位置として、差別をされないために、白人に合わせる。 黒人であることをアピールして白人と対峙すると、ふたつあるのなら、マイリスは、どちらでもないようだ。 黒人であることを受け入れるが、人種にはこだわらない。 イリノイで2番目の富豪といわれた家に育って苦労がないせいか。 偏見がなく、お人好しなくらい人を信じる。
でも、ビッグネームになっても、演奏会場のクラブの入口でタバコを吸ってると、「立ち去れ」と警官に殴られ、差別に愕然とする。
とにかく音楽が好きで、自分の成功にこだわらず、いいと思ったら、白人でも黒人とでも組むし、ジャズでなくても、インド音楽、スペインのダンスミュージックまで、なんでもかぶりつき、バンドのメンバーも解散しては、また自分でリクルートする。
女性に対しても、一目惚ればかりで、暮らし始めると、やがて、酒やコカイン、鎮痛剤の過剰摂取などで身を持ち崩して、破たんする。
一番、長く結婚していたのは、フランシス・テイラーというダンサーで、 この映画には、現在のホンモノが何度も登場する。 すごく魅力的な女性で、マイリスは何度も復縁を迫ったらしいし、この女性は映画の中で、「今でも愛してる」と言う。 うまくいかないもんだね。
マイルスの要望で、レコードのジャケットにもなっている。
キュートな感じでしょ。
このアルバムは映画の「白雪姫」の挿入歌が入っている。
フランシスと別れた後、1972年に、マイルスは交通事故に遭い、その壮絶な股関節の痛みを止めるために、コカインや鎮痛剤を過剰摂取するようになり、1人でアパートに閉じこもる。
「音楽がこわかった」、 「表現するものがない」。
1975年からは、音楽シーンから姿を消す。
自室でドラッグに溺れていたと言われているが、この映画で、父親からイリノイに連れ戻されたことを知った。
でも、81年に復活するのだ。
⇒ つづく