若い頃洋楽を聴くようになった理由のひとつが、

少しばかり英語がわかるようになると、その歌詞が

当時の日本の歌謡曲のように

男女の愛や恋ばかりを歌っているわけではないということに気がついたこと。

ビートルズの「レット・イット・ビー」

マービン・ゲイの「愛のゆくえ」

サイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」等々

60年代後半から70年代までは

ボブ・ディランに始まるメッセージ・ソングや

友情や無償の愛を謳った癒しの歌が

時代を映す鏡のような存在だったと思う。

で、9.11から10年。今回の大震災と原発問題も合わせて

なぜか「あの時代」を思わせる空気を感じるこの頃、

なぜか急に思い出した歌と、その作者がいる。

そう、P.F.スローン。

19歳で作った『明日なき世界』が

バリー・マクガイアによって歌われ

世界的なヒットになった、ラッキーボーイでありながら

自身はヒット曲に恵まれなかった「不運な才人」。

↑何の番組かは知らないが、ジェリー・ルイスがマジメな顔で司会というのも珍しい…。

『明日なき世界』
 P.F.スローン作詞・作曲
 高石友也  訳詞

東の空が燃えてるぜ
大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しの出来る年齢
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって
これじゃ世界中が死人の山さ

でもよォー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅の前夜なんて嘘だろ

わかんねぇかよ 俺の言うことが
感じねえかよ、この感じを
ボタンが押されりゃそれで終わりさ
逃げ出す暇もありゃしねえ
見ろよそこの若いの、よく見てみろよ
びくびくするのも当たり前さ

でもよォー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅の前夜なんて嘘だろ

俺の血は狂ってきたらしいぜ
でも本当のことは曲げられねぇさ
議員はいつもゴマカシばかり
法律で真実は隠せるものか
そりゃデモをするだけで平和がくるなんて
甘い夢など持っちゃいないさ

でもよォー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅の前夜なんて嘘だろ

狂ってきたこの世は虚しすぎるぜ
そうさ この世から逃げるに限るさ
一週間ほど宇宙旅行に
でも戻ってくる場所は元の古巣さ
進軍ラッパが国中に響く
潜水艦が、ジェット機が、国を取り巻く

でもよォー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅の前夜なんて嘘だろ

この曲を先日他界した忌野清志郎の歌で聞いた方も多いと思う。

多少語句を変えてはあるが、なかなか見事な高石ともや氏の訳詞である。

個人的にはこの曲よりも、日本でのみヒットし

「風」のような和製フォークソングにもパクられたキャッチーなメロディと

ハイトーンな歌声、そして美しい歌詞を持つこちらの曲が好きだった。


この曲には私なりのこだわりがあるので、下手くそながら私自身の訳詞を…。

『孤独の世界』
 P.F.スローン作詞・作曲
 三毛ランジェロ  訳詞

淋しい教会の鐘の音を
聞いたことがあるかい?
天使の嘆く歌を
聞いたことがあるかい?

遠いところなら
天使の嘆く歌は聞こえる
天使が嘆くのは
明日の罪がもたらす
悲しみのためなんだ

空から星が落ちるのを見たことがあるかい?
遠くからみれば
空の眼がひとつ欠け落ちたみたい

遠くからみれば
空の眼がひとつ欠け落ちたみたい
それは
神さまが僕たちを見るチャンスが
一つ失われたっていうこと

信じることを正しいと認めるのは
むずかしいことだよね
ひとりぼっちで夜に
旅するあいだは

「高い」ってどれくらい「高い」のか
考えたことがあるかい?
遠くからみれば 
一番高い建物もとても小さく見えるよね

遠くからみれば
一番高い建物もとても小さく見えるよね
そう、人もモノも結局測ることなんかできない

信じることを正しいと認めるのは
むずかしいことだよね
ひとりぼっちで夜に
旅するあいだは
だから明かりを捜すんだ、そして…

淋しい教会の鐘の音を
聞いたことがあるかい?
天使の嘆く歌を
聞いたことがあるかい?

遠いところなら
天使の嘆く歌は聞こえる
天使が嘆くのは
明日の罪がもたらす
悲しみのためなんだ

YouTubeというのはなかなか凄いもので

ジョニー・リバースの歌で大ヒットした「秘密諜報員」の

スローンによる自作自演版を見ることができたりする。

正直、私は動くスローンを初めて見た。

スローンは、06年に「孤独の世界」を枯れた歌声で再録し

それ以前の94年に「明日なき世界」の歌詞を

環境問題をテーマに書き換えて、新たに吹き込み直しているが、

アラブ問題や原発をテーマに曲を書いたら

どんな作品ができるのだろうか。

彼の鋭さや純粋さが失われていなければいいのだが。

ただ、日本びいきのスローン氏に対して失礼だと思うので

邦題に「ナントカの世界」という常套句を使うのだけはやめて欲しい。