日本政府も若者の英語の習得にあの手この手を打ってきて,それ自体はよいことなのですが,1つ誤っていることに気づきました。
これはひょっとしたらまだほとんどの教育関係者が気づいていないことだと思われます。
それは,中高生の英単語の発音・アクセントが年々正確さを欠き,下手になっていることです。
小学校から英会話中心の英語教育を導入し,高校入試も大学入試もリスニングテストを拡充して若者に音声を意識させている昨今,ふつうに考えて若者の発音・アクセントは上手になるはずです。
果たして真逆のことが起こるのだろうかといぶかしく思われるかもしれませんが,どうやらそれが事実のようです。
私自身,一昨年から「あれ?」という異変に気づいていましたが,昨年から今年にかけて確信に変わりました。
それは過去二十年以上にわたって定点観測を行ってきたからです。
毎年高3生に,同一の問題を8セット用意して夏期講習と冬期講習に分けて試験していますが,発音・アクセント問題の得点率が数年前までと比較して紛れもなく低下しているのです。
つまり今の若者は発音・アクセントをないがしろにしているのです。
まず小学校教育の英語の指導は,児童の発音・アクセントを矯正していません。
耳と口中心の授業はいいのですが,とことん発音・アクセントにこだわって欲しい年代です。
英語らしい発音・アクセントがすんなり身につけられるのは子供達の特権だからです。
それに続く中学・高校教育でなぜ生徒が発音・アクセントを軽視するかといえば,最大の元凶は「共通テスト」にあります!
「センター試験」の時にあった発音・アクセント問題が消滅したからです。
それがひいては,全ての大学受験の模試から発音・アクセント問題が駆逐されるという影響を招いたのです。
↑はセンター試験の問題ですが,こんな形式の問題なんかやったことがないという世代になってきました。
教育者の視点に立てば,リスニングテストを拡充したのだから,きっと子供達も発音・アクセントを重視してくれるだろうと期待するでしょう。
ところが現場での実感は異なります。
発音・アクセント問題が得点化される形で課されなければ,生徒は積極的に時間をかけて学ぼうとしません。
膨大なリスニングを通じて正しい発音・アクセントを身につけられるほど,彼ら彼女らはヒマなわけでもありません。
間違いやすい発音・アクセントを持つ英単語をテストして覚えさせた方が効率がいいに決まっているのです。
教育における理想主義は,時に不必要なまでに多くの落ちこぼれを生んでしまいます。
正しい発音・アクセントを身につけなかった若者が,社会人になって外国人と直接交流してはじめて学習過程の過ちに気づくようでは,そのロスが大きすぎるのです。
小学校の国語の授業に漢字テストがあるように,英語の授業には発音・アクセントテストを取り入れるべきです。
この形式を絶滅させるのは,国策として誤っているのだと,ぜひとも関係者各位には気づいてもらいたいものです。