国策としての受験を現場から考える | 新井学院(橋本)~時に先生と生徒の邂逅も人生の転換点になりうる~

新井学院(橋本)~時に先生と生徒の邂逅も人生の転換点になりうる~

新井学院埼玉県さいたま市/北浦和)の橋本(英語&日本史講師)によるブログです。
内輪ネタは非公開とするため,誠に勝手ながら,アメンバーはメールまたはメッセージにて実名を名乗って下さった方のみ承認しています。

 受験は一大国策です。将来の日本が世界に伍するために,有為な若者を1人でも多く輩出するために,大学受験の共通テストは様々な工夫が凝らされています。


 高校入試も含めて数学が難しいのは,理科系の才能をはぐくむためです。数学は理系受験においては必修科目になるので,若者は逃げられません。やるしかないのです。


 逆に共通テストの物理が易しくされているのは,生物や地学といった他の選択科目に逃げないようにするためです。日本を牽引する企業を時価総額を参考に見回してみても,トヨタ・ソニー・NTT・キーエンス・東京エレクトロン・信越化学・日立・ホンダ・任天堂など,数学・物理を基礎とする企業が目白押しです。物理レベルが低下しては,将来の国力が衰退してしまいます。


 そこで物理の平均点を高くすることで,物理選択の敷居を低くし可能な限り間口を広げておくのが国の狙いなのです。その上で各大学は二次試験でより難しい問題を課し,その先の学力を見抜いて絞り込めばいいのです。


 翻って英語に目を転じても,紛れもなく若者の英語力は向上しつつあります。かつて高校英語に配分されていた仮定法や現在完了進行形は,今では中学三年生で履修します。不定詞の副詞的用法も幅が広がっています。感嘆文や知覚動詞の構文も,ゆとり世代は高校で学習したものでしたが,令和に入ってかつての昭和時代のように中学英語で扱えるものになっています。


 文法以外にも,入試問題の今昔を比較してみれば,まず語彙の難化にすぐ気づきます。環境関連の単語は高校から中学に移行したものが多く,またテクノロジー関連の用語も当たり前のようにちりばめられています。


 私大の入試問題では,上位大学と中堅大学以下の難易差が拡大しています。早慶の入試英語はネイティブの筆者による英文雑誌や記事などが,そのまま採用されることが多くなってきました。昔は受験用の単語帳や熟語帳を覚えれば,受験勉強としての語彙力は一応の完成とみなされましたが,今ではその域を超える語彙が選択肢に含まれるだけでなく,正答に選ばねばならない問題も多々見かけます。このような語彙を身につけるには,ふだんから英文を豊富に読むのが正攻法で,かつそれを通じて速読力をも伸ばさないといけません。


 そうした背景から,今後の英語力の鍵は,小学校教育にあるものと確信します。それは,文法や語法に注意を向けるのではありません。なによりもまず発音・アクセントをうまくするようにしむけるべきです。また,英語と日本語の訳出作業も不要です。英語を聞いたり話したりするときは英語で考えるという習慣を身につけさせるべきです。英語脳の涵養です。これによって,数年後に直面する高校受験や大学受験で要求されるリスニング力や速読力の下地ができるはずです。


 もどかしいのは,そのような小学生にふさわしい教え方を中学生に対してほどこそうとする一部の風潮です。これは大いに問題があり,小学生と中学生の頭の構造が異なることを無視しているため,英語の落ちこぼれが多数出てしまいます。論理的に英語を扱いたくなってきた中学生に,その論理を教えず,あまつさえ論理を無視しろと言っているようなものです。


 小学生はいざ知らず,中高生にとっては受験や進学先や学歴が意識にのしかかってきます。テストの点数のもつ意味が小学生の時とは異なり,英語も遊びではなく学習教科として向かいあおうという意欲が高まります。そんな時分に,英語の論理構造がわからないまま英文と日本文の訳出ばかりやらされ,正答と誤答の違いが一向にわかるようにならなければ,もはや苦痛でしかありません。そもそもテストの得点が上がらなければモチベーションも持続しません。


 偏差値は他の生徒との差を示します。つまり勝負の世界です。その先にある受験もカモるかカモられるかの世界です。小学生と中学生との英語に対するアプローチがおのずから違ってきて当然です。


 そんな状況で苦しむ中高生を救ったり支えたりするのが新井学院の授業です。大学受験という出口に真一文字に向かって教えていますと記せば,学校教育だって同じじゃないかと思われるかもしれません。


 いいえ,違うのです。学校の教科書は入試問題ではないのです。教科書の英文には空欄補充もなければ下線部の言い換えもなければ,代名詞の指す語句を抜き出す問題も欠落しているのです。教科書は英語そのものを理解するためには良質な素材かもしれませんが,受験英語で高得点を挙げるテクニックを養成するには,指導者の姿勢や能力や裁量が必要です。


 塾や予備校では入試問題を解剖するかのように,設問の字句から解答の方向性を探り,下線部中の語彙や構文から出題者の意図を探り,制限字数から出題者の用意する模範解答を予想し,論旨との関連から内容一致問題に対処します。さらに他の受験生の答案と差がつきやすい箇所を認識します。


 国策としての英語教育および受験機会を活かすためには,小学生が英語に取り組む際のアプローチと,中学生や高校生のアプローチとでは,まったくもって異なることがおわかりいただけたでしょうか。