楽天モバイルが新たに打ち出した「最強家族プログラム」は、家族割引という名の下に、新たな顧客層の獲得を狙う賢明な戦略です。割引額は一人当たり110円と小さく見えますが、この取り組みの本質は料金の割引にあるのではなく、顧客が感じる心理的ハードルを下げることにあります。
楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏は、家族割引の存在がMNP（モバイルナンバーポータビリティ、つまりキャリア間の乗り換え）を躊躇させる一因になっていると指摘します。実際、家族で一つのキャリアに固まると、単独で他社に移行しようとする際の心理的負担は無視できません。楽天モバイルが、この心理的バリアを打破しようとしているのです。
このプログラムのもう一つの特徴は、その適用条件のシンプルさにあります。オンラインでグループを作成し、特定のURLから申し込むだけで良いのです。同一住所である必要はなく、名字が同じであれば家族と見なされます。これにより、実際には家族でなくても割引が受けられる可能性がありますが、楽天モバイルはこの点についても柔軟な姿勢を示しています。
楽天モバイルのこの動きは、契約者数の増加という明確な成果をもたらしています。特に、楽天市場の出店者を中心とした法人契約が好調で、契約者数は急増しています。また、株主優待の形で楽天モバイルのSIMカードやeSIMを無料配布する施策も、契約者数増加に一役買っています。
楽天モバイルの赤字幅が縮小し、株価が上昇する中、楽天グループは顧客獲得のための新たな戦略を展開しています。最強家族プログラムはその一環であり、顧客の心理的ハードルを下げ、より多くのユーザーを楽天モバイルへと誘うための魅力的な策です。