〇電力需給のこれまでの検証経緯について
 植田 和弘 氏 京都大学大学院経済学研究科 教授 需給検証委員会 委員

【概要】
・今夏の電力需給の見通しについて、第三者の視点から客観性、透明性を担保した適切な検証・提言を行う目的で需給検証委員会が設置された。
・需要面では、節電なしに加えて60年に一度の猛暑と言われた2010年夏をベースに、供給面では2011年夏をベースに検証。

【検証結果】
・全国での需給ギャップは0,1%の供給余剰。(3%の予備率を勘案すると▼2,9%)
・関西電力では、需給ギャップが14,9%の不足。
(▼445万kW、3%の予備率を勘案すると▼17,9%)
・需給が厳しい管内だけでなく、全国レベルでの節電の取り組みが重要。
・朝方、夜間の節電も、揚水発電の活用に効果。
 ⇒節電は、需要抑制とともに供給の増大に寄与するという二重の効果あり。
・新たなピークカット対策や制度改革等を実施し、燃料費上昇・電気料金値上げリスクを回避へ。
・検証委員会は第6回で終了したが、需給ギャップ解消へのスタートラインである。
【植田教授コメントのポイント】
・電力会社自身が本来の需給の数字をまず出してくることが筋であり、ギャップのある数字を先に出したことに不満がある。安定供給計画をなぜもっと早く出せないか。
 確実な数字が出てこないから検証しにくい。
・全国で取り組めば需給ギャップの解消が早いが、背後に地域独占の電力システムの問題があり、電力会社ごとに別々にやっている。具体的な需給調整や電力システム改革により方向性を変えていくことで、解決の検討が初めて見えてくる。
・日本では、机の上の明るさを750ルクスに合わせて照明を作っているが、世界的には500ルクスぐらい。日本は明るすぎる。東電も認めているが、昨年の節電の取り組みで圧倒的に進んだのは照明と空調を落とすことによる効果。現実には、節電により10%ぐらいの経営コストが改善された企業もある。
・この夏には間に合わないだろうという議論も出るが、すぐに完全なものはできないとしても、できる部分からどんどん実施していくのが大事。
・検証委員会は、原発稼働ナシという前提に基づく検証である。