天を仰ぐと燦々と光を放つ太陽が、判断を迫られたモスクの中庭を照らし出し、運命の舞台を際立たせている。
その光の向こうに、今は見えない水星、金星、火星、木星、土星、月が位置し、ゆっくりと偉力を世界に降り注いでいるのがわかる。
陽の光が強烈に肉体を照射し高鳴る心臓が呼応する。月が脳を、土星が脾臓を、金星が腎臓を、木星が肝臓を、水星が肺臓を、火星が胆臓をそれぞれ呼応させ、世界が誕生したその瞬間から今に至るまで、人間の肉体に光を染み込ませている。
アミーラは目を瞑り、自身の体の中に7つの天体があることを確かめると、今度は瞼の裏に予言書を想像した。
刑を宣告されたも同然、アイユーブの未来を判断しろと言われた審判の日から、自分は占星術という手段を用いて願いを叶えようと全身で未来を欲し、この十数日間、夢の中までを星位図で埋め尽くした。
結果、その意識に呼応するようにモナと予言書が目の前に現れた。
全身で未来を欲したから?体の中にある全天体が一つになったから!?
!!
「私は天体の偉力を一つにまとめきれてないだけなのかも知れない!」
アミーラは求めていた新理論の階に足が掛かった感触を得て思わず声を上げた。
占星術は確かに未来を示している。が、人間の知識でははかり知れない意味を天体はまだまだ隠している。
その意味を見抜き、作用を読みぬいて齎される事象こそが偶然であるに違いない。
そして、その偶然が今目の前にある。自分の体の中にある7つの天体が一致した奇跡が予言書というかたちで齎された。
「これが、天との一致なの?」
アミーラは運命の判断を迫られていたことを忘れたように、青い空を見つめてつぶやいた。
興奮はなく、体中の血液が穏やかに流れていくのが分かる。焼け焦げるような日差しを受けた肌はその熱を透過して筋肉を弛緩させた。
思わず両腕を天に突き伸ばし、光を受けた手をゆっくりと両頬に添える。
それはまさに、恍惚が齎す礼拝の所作。
100人の兵士とスーフィーたちはアミーラの神々しい姿に見蕩れ、焼ける地熱を忘れて立ち尽くした。