豊臣家の終わり 茶臼山

 

 令和5年度も終わり、テレビ番組で興味深く拝見したのは、「あきない世傳 金と銀」。学問好きな少女が呉服屋の下女から正妻までになり、傾きかけた五十鈴屋の屋台骨を支えるという江戸期の大坂商人の物語。原作者は高田郁(かおる)さん。山本周五郎の作品が好きだった父の影響を受けて、作家になったとか。

  多くのドラマは悪人と善人に分かれて描かれる。しかしこの物語に悪人は一人も出てこない。人間はそれほど単純に図式化されるものではない。

 

  「関口宏の一番新しい中世史」は大いに歴史の勉強になった。加来耕三さんの愉快な歴史解説が魅力新鮮。説教臭さが全くない。そして「ああ、本当はこうだったのか」だ。最終回は大坂夏の陣。淀君と秀頼母子の自害で、番組も終了した。

   歴史好きは高校時代から。世界史から入ったが、世界ともなると、訪ねて歩くという訳にはいかない。日本の史跡巡りなら叶わないことはない。

 

   中世の男たちは生き残りを賭けて、ねじり鉢巻きで軍議を重ね、策謀を巡らし、時に裏切り時に合流を繰り返し、濁流のように人を飲み込んでいった。愚かさも賢さも時に木っ端みじんに打ち砕き、人も家も絶えていく。

   老境の豊臣秀吉の痴態と愚かさは天下一品であろうし、秀吉亡き後の真田幸村の大坂の陣の獅子奮迅の戦いは敵将家康もあっぱれと賛美したという。そして後世に「義の鏡」と語り伝えられていく。歴史は何が正解で、何が不正解などという問題を超えている。

欄干背後が茶臼山

 

   さて、「夏の陣」の主戦場となった茶臼山に立ってみた。幸村の名言を記した案内板もある。朱塗りの欄干から小雨に煙る大阪名物の通天閣タワーが北に見えた。武士たちの荒い吐息や喚声がわずかに聞こえる。とりわけ敗者である豊臣方の男たちは北を振り返って、大阪城の天守でも見たというのであろうか。いや、そんな余裕などなかったはずだ。血しぶきだけでもなかったはずだ。では死にゆく男たちが刹那に目したものは何だろう。

 

 ところで、東京タワー・通天閣・名古屋テレビ塔等は皆兄弟姉妹。山梨県人内藤多仲博士が生みの親。知らないのは私だけだったかな???

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