The Favouriteと Sir と The Courtship

 

 友人Dさんが我が家のテレビにPrime Video とYou Tube の視聴可能にしてくれた。ちょっと機材をセットしてくれだけの魔法だ。秋の夜長の玉手箱になった。誠に感謝している。そこで3本の映画を鑑賞した。

 

  『女王陛下のお気に入り』(原題The Favourite)は、2018年の英米・アイルランド合作の歴史コメディ映画。アカデミー賞最多9部門10ノミネートとなった作品。英国王室の絢爛豪華な女王の居室空間を拝見し、男女の奇妙な愛憎劇を堪能した。

 

 もう一本は『あなたの名前を呼べたなら』(原題Sir)は、2018年のインド・ムンバイを舞台にした恋愛映画。お金持ちの青年は心優しいメイドを愛するようになるが、そこはインド、歴然としてカースト制度が残っている。そんな恋は許されるはずもない。

 青年の友人は「仮に妻となっても、夫人はメイド上がりと蔑まれ、両親を不幸にするだけだ」と諭す。青年はメイドの職を失った彼女に将来の夢であるデザイナー職への新しい勤務先を紹介し、アメリカへと旅立っていく。

 

   原題Sir は、彼女が旦那様として呼ぶ青年への尊称、あるいは上流階級への尊称として、監督は原題としたのかもしれない。彼女はラストシーンで機上の人となった青年に対して、初めて「旦那様」とではなく、「アシュビン (名前)」と呼びかける。

 ムンバイの街頭風景や高層ビルの立ち並ぶ夜景が美しい。都会と彼女の出身地の田舎の風景との対象も鮮やか。19歳で結婚し、4か月後に未亡人となった彼女は妹の結婚式に参列しても、写真(スマホ)には映ることを許されない。

   インドではこうした習慣が今でも残り、未亡人として烙印を押された人生との闘いが続いていくのだ、と。こんなことをこの映画を観て初めて知った。

 

   しかし私の一押しはThe Courtship(求婚)。2022年ハンガリー映画。修道院から遁走した娘に、父親は娘を追い出すために、「持参金付き。娘の結婚相手を求む」という新聞広告を打つ。持参金付きだから、応募者多数。てんやわんやの物語が美しいラブロマンスに変わっていく。1900年代初頭のハンガリーの上流社会が馬車の蹄を鳴らしながらやって来る。

 

  前2作で、原題と日本語題名をいつも目にして思うことは深い文化の隔たりだ。英語の原題は簡潔直截。日本語題名は情緒的で心を泡立たせる。この文化論だけで一冊の本が完成すると思う。

この映画は何処で見たっけ???