もうひとつの世界一周~アラル海から

 

世界一の湖はカスピ海。少年の頃、地図帳を開いて、その隣にもうひとつ大きな湖があることに気がついた。アーモンド型のアラル海だった。かつて世界第4 位の湖、九州二つ分の大きさだったが、今では5 分の1 になっているらしい。理由は旧ソ連時代の大規模農業開発で水量が減少し、さらに塩分濃度の上昇により、魚介類はほぼ死滅した。「20 世紀最大の環境破壊」と言われている。

 

文明発祥の地チグリス・ユーフラテス川に挟まれた大湿帯は、独裁者サダム・フセインが反政府活動家の制圧の目的で、ここに運河を通し、流域を乾燥化させてしまった。こちらは「アマゾン開発に匹敵する深刻な環境破壊」と言われた。フセイン政権は20034 月に倒壊したが、湿地帯は再び戻ってこない。

話によれば、この地で「エデンの園」の原型を描いたみられる粘土版も発見されたとか。旧約聖書の地が幻の地と消えた。

 

中国では、貧困撲滅のために村ごと町ごと強制移転という報道もある。新たに用意された住宅には電気もガスもある生活は便利だ。しかし光熱費はタダというわけにはいかない。従って働いて支払わなければならない。転住者に待っているのは、単純労働と低賃金だ。新たな困窮が待ち受けている。

 

インドネシア大統領はカリマンタンへ首都移転を計画している。カリマンタン島と言えば、自然の宝庫と聞いている。さらにブラジル大統領はアマゾン開発を公言している。

またアメリカではシェールオイルの採掘が盛んだ。この石油採掘にはとてつもない大量の砂がいるそうだ。確かに身近な建築現場でもコンクリと砂をかき混ぜている。開発と都市化には、大量の良質な「湖や川の砂」が必要だ。大量の砂が世界中の湖や河から消えているそうだ。日本だって、バブル期のリゾート施設やホテルが雨ざらし。そしてフクシマだ。みんな、海続き陸続き、空続き。ワンチームならぬ、ワンアースの出来事だ。

 

人類の歴史は「開発の歴史」、裏返せば「破壊と欲望の歴史」であるとも言われている。考えてみると、このような開発は、少数意見や反対意見を許さない独裁者や強権者の元に行われる場合が多い。

若きスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが「私たちの未来を奪うな! 」と、トランプさんにかみついている。個人的には、その姿は時に神の言葉を預かる「現代の預言者」の姿を思い浮かべる。

中学の頃の地図帳を開いてみました!

懐かしさともどかしさの日々