ゴーンさんの逃亡劇と変装劇

 

新年早々、日産の元CEO ゴーンさんが見事な高飛び劇を見せたので、一言。

日本の警察機構は「こんなものか」と、皆様同様? 私も落胆。国内でも、捕縛中の犯罪者の逃走を許す事件が数度。今回はプライベートジェットを使っての大掛かりな逃走劇だ。

 

なぜ、ゴーンさんは日本の司法の場で戦わなかったのだろう。もし判決で敗れても、それほどの科刑にはならなかったのではないか。ならば、この機に読書三昧、東洋文明の理解の時間にでも当て、法廷で西洋と東洋の法律論・文化論を声高に語れば、日本にも世界にも衝撃が走ったはずだ。

 

賢人は虫眼鏡と望遠鏡を手にして、現状分析ができるはずだ。氏はある種の短期的な快楽を今回得たが、レバノンで一生を終わらざる得ない状況に追い込まれつつある。これは、凡人の技だ。偽物がしばしばトップにたどり着くことは、人の世の習いだ。それは学歴と大声に多くの人々が喝采を浴びせるからだ。

 

ゆうちょ銀行では不正勧誘が18 万件にまで達し、日本郵便の長門社長はその座を追われた。出身は大手銀行、外銀で辣腕を振るった実績が買われたようだが、ご承知のように銀行はバブルで一敗地にまみれた。氏も責任者の一人だろう。自らの活躍体験を、郵貯にも持ち込んだ。そんな気がしている。

氏は事件発覚直後の会見では、辞任を否定していた。その会見を眺めていると、私の頭の中で、ゴーンさんとオーバーラップして来る。また舛添元東京都知事も自然に浮かぶ。みな、会見に不遜な態度が伺われてならなかった。成功体験はこれほどまでに人間を変えてしまうものだろうか。あるいは元々そんなものはなかったのだろうか。学歴に続く出世。自ら権力と恫喝、大声と饒舌さに自らも酔いつぶれてしまったようだ。

 

ゴーンさんの変装劇にも、ついでに一言。いわゆる名うてのヤメ検の弁護士の指示だったそうだが、あの変装はいかにもファニーだったので、世間の失笑を浴びた。

私は人生に一度、ヤメ検さんと交わった。上下関係も利害関係もない私に、頭から高圧的な言葉を使った。元職丸出しの世間知らずの人物だった。その方もまた声が大きかった。そんな手合いにまんまと乗ったゴーンさんも、その時「ああ、その程度の人物だったのか」と残念な思いを抱いた。

 

そんなマイナス印象はさておいて、ゴーンさんの今回の行動から、「文明の衝突」という言葉も浮かんだ。西洋と東洋の衝突だ。しかし日本だって、命まで取られるわけでもない、保釈の身分だ。剣道「上段の構え」で、東洋文明を観察し指弾して頂けたら、日本人も大いに勉強になったのではないだろうか。とても残念な高飛び劇だった。

 

レバノンにはこんな景色あるのかな~???

「日本人は知らないのか!!! レバノンにはレバノン杉があるぞ。国旗に採用している地中海を席巻したフェニキア船の原木だぞ」

そんな発言も聞いてみたかった。