職場の近くにある100円LAWSON。
私はそこで働く田中さんというスタッフが嫌いだ。
彼女は、ヨーグルトのスプーンやお弁当のお箸を決して入れてくれやしない。
初めはたまたまだろうと寛大な心とお慈悲の目で彼女を見守っていた。
社会へ出て働いたことのない奥方が不慣れなレジ打ちをやってるんだ。
たまには忘れることもあるだろう。
だが、どうやら違った。
彼女は確信犯だ。
どう若く見ても50代。
家では牛のような食欲の中学生と高校生の男の子がいて、エンゲル係数はうなぎ登りだと見た。
甲斐性のない夫は、飲み代だけは社長並みだ。
ここは私が100円LAWSONでパートをして、
せめて息子たちの塾代の足しにしよう。
…といったところか。
妻として母としての心意気には泣けてくる。
田中さん、がんばってるね、と声をかけたい気分にもなる。
人生の先輩として尊敬もする。
でもね、田中さん。
どうしてお箸やスプーンをいれてくれないの?
こちらが気付けばいいけど、
気づかなかったら食べる時にとっても困るのよね。
そして他の店員さんは、あなたのことで迷惑を被っているのです。
「この間スプーンがはいっていなかったよ!」
と、身に覚えのないことで叱られ、謝罪しているのを私は幾度か見たのである。
他の店員さんたちは、まるで息をするかのように自然にお箸やスプーンを入れる達人ぞろいなのに。
そして私は、その苦情の原因は田中さん、あなたであることを知っている。
なんか最近ではワザとやってるんではないかと思えてきて、
田中!お前のことが余計に許せないんだよ。
店長にチクってやろうか。
いやいや。
彼女にそっと耳打ちしようか。
私は日々葛藤し、仕事も手に付かないくらい悩みはしないが、
田中さんのことが嫌いになっていったのであった。
100円LAWSONに入って、
田中さんがレジにいるのを見ると、
私はぐったりと疲れてしまうのに気づく。
そしてヨーグルトと焼きビーフンと石焼き芋をレジに持っていき、
きっと彼女はいつものごとくスプーンとお箸を入れないことだろうと、
ある種の期待感を持って、田中さんを観察してしまう。
そして期待は私を裏切ることなく、
おお、やっぱり、額然とするのだ。
今日は思い切って、
あの~、いつもスプーンやお箸が入っていないのですが、言わないといれてくれないのでしょうか?
と、たずねてみた。
彼女はわざとらしく「あ」と小さく声をあげ、
「てへへ」というお茶目な顔まで作って
「うっかり忘れちゃった」というように
スプーンとお箸を袋に追加する。
そして
「たまたま今初めて入れ忘れただけなのに、いつもって言うなよ!」と恨みを込めたまなざしを私に向ける。
まるで私がいやらしい嫌みを言ったみたいな雰囲気に包まれる。
ああ、うっとおし。
というわけで、
今日もやっぱり田中さんのことが嫌いなのでした。
どうしてくれよう。
どうしてくれよう。
どうしてくれよう。
ま、そんなに嫌いなら、あのコンビニに行かなきゃいいんだけどね。
なぜかまた、田中さんに会いに行ってしまう私なのでした。
決して期待を裏切らない田中さんを確認せずにはいられないのでした。