前回のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、店を後にした。

 

 

 

 

今頃…雅紀はどこで何をしているのだろう?

 

 

そんな風に雅紀のことを考えていたら、いつの間にか俺は智くんの店の前にいた。

 

 

結局…俺は智くんが頼りなのかもな…

 

 

心の中でそんなことを思ったが、これも何かの縁なんだろうな…と思い直し、店の中へ入った。

 

 

 

 

「いらっしゃ…あ、翔くん!?」

 

 

いつもと違い、凄く慌てたような声を出す智くん。

変な智くんだな…と思いながら、俺はカウンター席に着いた。

 

 

「智くん、近くまで来たから寄ってみたよ。」

 

 

そう伝えると、智くんを見上げる。

智くんの顔をマジマジと見ると、目を白黒させ、何かを気にしてるように思えた。

 

 

「智くん…どうかしたのか?」

「いや…何でも…ない」

「そうなんだ。今日はお任せでいいかな?」

「あ、ああ…わかった」

 

 

眉が下がり、困った表情の智くん。

何かあるのは確かだけど、あえて聞くことはやめよう…

智くんを困らせたくないからね。

 

 

暫く待っていると、瓶ビールとグラスが出てきた。

 

 

「注ごうか?」

「いいのか、智くん?」

「うん…いいよ。翔くんに付き合うよ」

「ありがとう、智くん。」

 

 

グラスを差し出すと、智くんがビールを注いでくれた。

そして、一気に流し込む。

 

 

旨い…

 

 

グラスを空にし、俺は智くんに向け、またグラスを差し出していた。

 

 

「今日は、いい飲みっぷりだなぁ」

「そうかな?」

 

 

智くんの表情が、段々と明るくなってきた。

明るくなってきた…というか、緩んできた感じがする。

何かを気にしてたような感じだったけど、気のせいだったのかな…と思えるくらいだ。

 

 

 

 

気分よく飲んでいると、奥の方から声がしてきた。

 

 

「ありがとね、おーちゃん!」

 

 

そして奥から出てきた人を見て、俺は目を見開いてしまった。

 

 

「え…?」

 

 

その人も俺の顔を見て、かなり驚いている。

途端に、智くんの表情が曇る。

 

 

俺は小さく息を吐き、心を落ち着かせ、改めて現れたその人の顔を見つめた。