「歴史探偵」とドラマでは違う絵師の姿。ほんとうの広重はどちらだ?

 

NHKで再放送していた『広重ぶるう』(全3回)、本日終了しました。

広重のことを「知っていた」人は どのくらい居るのでしょう? 名前だけは知っていたと答える人は7割、さらに<浮世絵/東海道五十三次を描いた>まで答えられる人は3割?2割?・・くらいじゃないでしょうか?(・・・こういうクイズはたいがい大外れしますえーんので、聞き流してください。)

 

 

 

そういう「知られざるもの」に、たとえば『新日本紀行』みたいに、スポットを当てるところがNHKの真骨頂だと思いますけれど、今回も良かった。

 

北斎と対照的だった広重。つつましく暮らしながら「自分が本当に描きたいものを 生涯探っていた生真面目な絵師」。ずっと迷いの中にいる絵師を、阿部サダヲさんが丁寧に演じていました。

 

余談ですけれど、阿部サダヲさんて真面目な人なんだな~と(ドラマとか見ながらいつも)思います。派手な演技を要求されることが多いけれど、そのベースにはいつも真面目さとか優しさを感じます。どちらかと言えば「固い」演技だと思うんですよね? 今回の広重はまさにソレで、妻の加代さん(優香)が「ご主人はどんな絵師だい?」と尋ねられ、「優しすぎる絵師です」と答えるのですけれど、だから、広重は流行の美人画が描けない。トレンドが追えない。でも、後で触れますけれど、人のことはすごくよく観察している絵師さんなんですよね。

 

 

 

ちなみに「東海道五十三次」のシリーズを発表するようになったのは30代後半、38才くらいです。それまでは貧乏暮らし。遅咲きです。

 

 

 

ところが同じ時期に放送された「歴史探偵」では、”江戸の大ヒットメーカー”として紹介されています。あまた有る浮世絵の中でも(北斎も超えて)最高の売り上げを誇ったとか。たぶん広重は晩年に「名所江戸百景」なども発行していますから、作品数も多かったのではないかと思います。もちろん数より質、描いた絵がすごく魅力的だったから売れたのでしょうけれど。

 

 

 画像は拝借しました

 

たとえばこの「江戸名所百景/水道橋駿河台」インパクトありますよね。今的に言うなら、絵画というよりポスターですよね? その土地のアピールポイントを、デフォルメしてすごく魅力的な図柄に仕上げています。天才的なグラフィックデザイナーです。現代に生きていたら、東京オリンピックのポスターもすごく素敵なものが生まれたでしょうに。世界中が欲しがる素晴らしいポスター、見たかった・・・

 

 

 

 

 

  風景画だけじゃない、漫画でもある。

 

広重の「東海道五十三次」から、「おじさん図鑑」が誕生しているのをご存じですか? 今回初めて知って、驚くやら、笑っちゃうやら、感心しちゃうやら、感情が忙しいのですけれど、「東海道五十三次」には、それぞれの宿場で、表情が面白いおじさんが大勢いるらしいのです。有名なところでは「四日市」、風で飛ばされる笠を必死で追いかけるおじさんとか、下は「(愛知県)御油(ごゆ)宿」、客引きのお姉さんたちに首を絞められているおじさん、とか、表情がひじょうにユーモラスで人気を呼んでいます。たぶん当時(江戸時代)も人気だったのでしょうね。

歌川広重の「東海道五十三次シリーズ」は、見事な風景絵だっただけでなく、人間も楽しく描かれていた、つまり漫画でもあったんですね。各地の名物もいろいろ描かれているし、旅のガイド本として図抜けて価値がありました。いえ。これ、「歴史探偵」が指摘していたことなんですけれど。

 

 画像は拝借しました

 

 

 

「江戸の大ヒットメーカー」であることは、ドラマではほとんど描かれませんでした。晩年の話としてチラッと有りましたけれど、ドラマは天才絵師の物語というより、どんな苦しいときでも笑顔で支えてくれた妻・加代さんの物語だったような気がします。優香さんの明るくやさしい笑顔が印象に残りました。

感動するというより、おだやかな気持ちで見られたドラマでした。「歴史探偵」の情報と合わせて見られたのはラッキーでした。また、ほかの絵師の話も見たいですね~。おっと、来年はNHK大河ドラマ、蔦屋重三郎の物語じゃありませんか。実に楽しみです。

 

 

 

 

 

もうひとつ思い出しました。今日は東京都知事選挙の日ではありませんか。都民ではないけれど、影響はけっこう大きいと思うので、選挙速報見ます。都民の皆さんしっかり投票してくださいね・・・と言いたいところですが、これだけ猛暑だとね~えーん

 

新しい投票システムを早く用意してください。それがデキル人を総理大臣に選びたい・・・あ、国民が直接総理大臣を選べないのか~ニッポン。