「紙はいいでしょ もう。売れないよ」

 

相変わらず馬締さん(まじめさん/野田洋次郎)のセリフは聞きやすい。しかも、実は、5話で披露された荒木さん(岩松了)の「悪の大魔王」の吹き替え、あの図太い低音ボイス!、まさかここで聞けるとは!びっくり。ちょっとコーフンしました。柴田恭兵さんの声も渋くて素敵だし、若い向井理さんも良く通る声だし(いつの間にこんなに良い役者さんになった?) その俳優さんたちが、すごく良いドラマを見せてくれてる。こんな贅沢なことがあって良いのだろうか?…

 

 

6話はペーパーレス。デジタル化の話。

<現代にアレンジしたドラマ化>であれば避けて通れない話です。しかも、それを指示したのが低音ボイスの魅力、堤真一さん!(五十嵐新社長)!…贅沢!!

 

馬締さん(野田洋次郎)が「お言葉ですが…」と反論を試みますが、西岡さん(向井理)が「いったん持ち帰らせていただけますか」と割って入ったところはお見事でした。

専門家の先生たちとの契約を理由に、なんとか2週間の猶予を稼ぎだしたところ、あまりに的確な”反論”に惚れ惚れしました。

そして西岡さんは言います。「感情論じゃだめだ。紙の辞書をつくる意義と利点、それが売り上げにどう結びつくのか。突きつけるんだよ、一撃必殺で」

今週輝いた言葉は(個人的に)これ、一撃必殺でした。

もう10年以上ゲームをやっていないので、こういう強い言葉使ってません。「ドラクエ」思い出しました。初めてやったとき「痛恨の一撃!」という言葉にひどく感動したものです。なんて適切でドラマチックでリアルな言葉! 西岡さん、「僕もつくってるんですよ、辞書」、ほんと、なんて言葉の感性の鋭い人。

 

 

 

  こんなに最後が気になるドラマは久しぶり

 

ここから最後どう着地するのか、すごく興味が湧きます。

『舟を編む』は本来、「言葉」のドラマです。「言葉」を通して、いろいろな人が新たな出会いをしたり、再生するヒューマンドラマでもあります。

でも、個人的には、<辞書(商品)>を<現代>にどう<マッチング>させるのか、その戦略にいっそう興味が湧きます。

全10話、いま6話、まさかこのペーパーレス化で最後までいく(4話を費やす)とは思いませんけれど、どうやら予告編では、人気ブックデザイナーの苦悩も描くみたいだし、ぜひ、じっくり見せてほしいと思います。

 

 

 

個人的には…「大渡海」は書籍ではあるけれど、「ギフト」の位置づけにしては?…と思ったりするんですよね。時計ではないけれど、成人のときのお祝いに、社会人となったときのお祝いに、定年退職する人のお祝いに…みたいな。いずれにしても販売戦略の鍵は「付加価値」だと思うのですが…

 

 

もうひとつ6話で映っていたヒント「セレンディピティ」は?

天童くん(前田旺志郎)が先輩の卒論で見ていた言葉です。

セレンディピティ(Serendipity)…偶然の産物。幸運な偶然を手に入れる力。

 

 

これ、デジタル化の話で よく言われることですよね。たとえば「本」。デジタルで目的の本を見つければ用は済むのですけれど、「書店」でいろんな本を見る楽しさと、偶然の発見は、ちょっと大げさに言えば「人生の楽しみ、豊かさ」のひとつです。もちろん辞書も、です。目的の言葉にたどりつくまでに、思ってもいなかった言葉と出会い、それで世界が広がる…ということはよく有りますから。寄り道しすぎて、本来の目的を忘れることも…よくあります照れ

 

 

でも、それをどう「売り上げ」につなげていくのか? 編集部の皆さんの、そして製紙会社の皆さんの、辞書にかかわる皆さんの、ゆたかな知恵を楽しみに待っています。ああ、最終回に、向けてこんなに気持ちが盛り上がるドラマは久しぶりです。

 

 

 

最後にもうひとつ。

このドラマのエンディングロールに「撮影」「照明」「音声」「編集」「音響効果」と並んで「カラーグレーディング」という記載がありました。…やっぱり!

このドラマ、1話の感想で言いましたけれど、すごく透明感のある明るい画像で(たぶん自然光をたくさん使ってる…)、ブルータッチのきれいな映像…と思っていたのですが、やっぱり!…「色彩補正を加え、雰囲気をシーンに合わせたりコンセプトに近づけていく技術」を使っていたんですね。

初めてエンディングロールで見ました。すごく繊細に、丁寧に、詩情ゆたかに、つくっているドラマだな~と改めて思いました。