総合もくじ ☆ a guardian angel ~守護天使~
闇に魅せられて ~ 恋に堕ちた二人 ~
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(SIDE クオン)
「すみません、ありがとうございました…それじゃ、俺はここで…」
そういって、モーターホーム(メイクルーム完備のキャンピングカー)を後にした。
B・Jの撮影を高速で切り上げた俺は、社長とミスウッズと合流して…
彼女のいる現場へと移動しながら、髪色を戻してもらった。
そして、カインの衣装を脱ぎ捨て、着替えを済ませると、ウイッグをつけた。
本当の姿で、愛を告げるために 。
テレビ局に入った俺は社さんへと電話を入れた。
( この時間…順調であれば、撮影は終ってるはず…)
「社さん、最上さんの…撮影の方はどうでしたか…?」
「え…あっあぁ、撮影はリテイクなしの一発OKで無事に終ったよ。
心配しなくても、彼の事なら、休憩中は俺がずっとガードしてたし、
だけどさ…やっぱり、キョーコちゃんもプロなんだよな…。
なんだかんだあっても、役に入ればそんなのまったく感じさせないしさ。
本当…すごかったよ。すっごく色っぽくて…本当にびっくりしたよ…」
少し焦った口調で話し始めた社さんの実感のこもった感想に…なんとなく嫌な予感を感じた。
「……それで、彼女は…」
あの日、俺だと知らずに声をかけてきたナツ…彼女がナツのままだったとしたら…
「あぁ、ちょっと待ってろ…って、アレ?さっきまでそこにいたのにっ…」
何も言わずに出て行った…と聞いて、俺は歩く速度を上げた。
「…社さん、彼女…ナツのままだったりしません…よね?」
「…えっ、いや、その…」
歯切れの悪い返事…妙に実感のこもったさっきの言葉…
「もしかして、社さん…」
「うわーっっ 蓮!誤解するなよ!!
何も…何もないから!ただ、なかなか役が抜けないみたいで…お前と一緒だよ!
フェロモンだだ漏れで危険な感じっていうか…
ただ普通の話してるだけなのに…すごくドキドキ…じゃなくてっっ
違うぞ!俺は断じて…ってそうだよ!!
危険だと思ったからここで役が抜けるのを待ってたのに…って…あれ?荷物までなくなってる?!」
慌てふためきながらパニックを起こしてる社さんの様子に…社さんとは何もなかったことを確信しながらも、彼女の行動にイライラがこみ上げてきた。
「…ナツのままなら、きっとアイツに会いに行ったはずです…」
まったくあの子は…いつもそうだ!
自分を狙ってる男にも無防備に近づいて…知らずに煽るんだ。
歩く純情さんのくせに、やることは大胆で…本当にあの子はまるで小悪魔だ。
天然の…無自覚でそうなんだから本当に性質が悪い。
「ええ~~~っっ??」
何のために俺が…と嘆く社さんの呟きを聞きながら、角を曲がると廊下に佇む彼女の姿を捉えた。
その姿を見てほっと胸をなでおろすと…社さんに告げた。
「社さん…後は俺が何とかしますから、今日はもう、いいですよ…」
「だって、キョーコちゃんは…っっ早く見つけないと」
「もう、見つけましたから…」
そう云って電話を切ると、近くにあったトイレで…俺はウイッグとコンタクトを外した。
「…確証…持てました?」
鏡の中に映る自分の姿を見ていると彼女の話しかける声が聞こえた。その声に慌ててドアを開けた。
「昨日はごめん…つい、調子に乗って、あんなこと…
本当言うと今だって確証があるわけじゃないんだ、キスだって…全然違ったし…
だけど…」
ドア越しに身を潜めたまま…村雨の云った言葉に足が止まった。
そう、二人は今日…キスシーンを演じたんだ…。
俺だって仕事では何度も経験している…彼女だって、これから先、恋愛ドラマのオファーだってあるだろう…。
そんなことを考えていたら、不意に、目の前で…アイツに奪われたキスのことを思い出してしまった。
でも…そう、キス…だけならまだいい…彼女の肌を知った今となっては…
だけど、あの顔を…あの声だけは…他の男には聞かせたくない。
渦巻く嫉妬…独占欲…彼女のすべてを俺だけのものにしたい。
心も身体も…俺だけのものに …。
あの日確かに感じた…彼女の気持ちを確かめたい…。
「だけど…?」
「いや…きっと俺じゃ…君の彼氏が誰であろうと、選んではもらえない…んだろう?」
自信のない声で、彼女に問う村雨の言葉…彼女の表情はここからじゃ見えない。
少しの沈黙の後…小さな声で…彼女が応えた。
「…いません…」
「…え?」
「本当に…彼氏なんていないんです…」
切ない声でそう言った彼女は…ナツじゃなかった。
確かに俺たちは付き合ってはいない…。
毎日のように口づけを交わすようになった関係も…仮初のもの。
俺たちの関係は…まったく変わっていないんだ…今はまだ 。
「…それじゃ、俺…あきらめなくてもいいんだ…」
その声に…考えるよりも先に体が動いた。
「俺…君のこと本気で…」
「…ナツ!」
それ以上は言わせない!思わず、彼女を見て…ナツと…叫んでいた。
この姿で会ったのは、ナツだったから…。
驚いた顔をして俺を見上げる彼女に近づくと、アイツの腕を払った。
「なっ…あんた誰だよ?邪魔しないでくれ!」
不機嫌を露わにした村雨と…俺をじっとみつめる彼女の瞳を無言のままに見下ろした…。
「ど…うしてここに…?」
「…知り合い?…そういえば、ナツって…」
「…知り合い…なんかじゃないわ…あの夜…ううん、一度会ったきりで名前も知らないから…」
「あの夜…?」
彼女の言葉に…静かに反論してみせた。
「…ひどいな…名前なら、君がつけたくれただろう?」
「そうだったわね…それよりもなんでここにいるの?」
彼女は…俺が誰だかわかった上でナツとして振舞う…。
「って…まさかっ、コイツがキスマークの??」
ナツの男…とわかった瞬間、顔色を変え、険しい顔で俺を見てきた村雨に気づいた彼女が
俺にすり寄ってわざと挑発する。
「…ね?アタシが云った通り、彼…いい男でしょう?」
俺もそんなナツに合わせて腰を抱いて彼女を引き寄せる。
「…そういうわけだから…」
見せつけられた村雨がわなわなしながらも…刃向かってくる。
「…待てよ!ハイソウデスカって…彼女を渡すわけがないだろう?!
っていうか、お前は誰なんだよ?!邪魔しやがって…!」
俺に喰ってかかろうとしたところを彼女が間に入って…云った。
「いいじゃない…誰だって…アタシを熱くさせてくれる人なのよ?」
妖しく微笑んで…完全にナツを憑かせた彼女が村雨を翻弄していく。
「なっ…だけど、さっき…彼氏じゃないって…」
言葉に勢いがなくなっていく村雨に…近寄って…
「…そうよ?あなたにだってそういう経験あるんじゃない?
…キス、上手だったもの…ね?」
濡れた唇に触れた指でキスを投げる…上目遣いに見上げて男を煽るナツ。
「でもね、彼のキスは…もっとスゴイの…疼いちゃうくらい…」
「///」
云われた村雨の方が赤くなってる…。
本当にこれが歩く純情さんのセリフなのか…って…頭を抱えたくなる。
役が憑いたこの子を目の当たりにする度、俺は驚かされてばかりだ…。
「…ねぇ、…アタシのどこが好き?」
首を傾げて試すようにアイツに訊く彼女。…アイツを煽り過ぎじゃないか??
そんな彼女に嫉妬して…黒い感情が溢れだす…
ゴクンと生唾を飲み込んだ村雨が…答えられずにいると素の彼女が言い放った。
「…何も知らないくせに…好きだなんて信じられない…」
軽蔑する様な物言いに村雨が反論した。
「なっ…それは…これから知っていけばいいだけじゃないか、っていうか、俺はダメでアイツはいいのかよ?一度しか会ったことないのに…ヤッたんだろ?人のこと云えねーじゃん」
その言葉に悪びれることなくナツを憑かせた彼女が応える…
「彼は…特別だからいいのよ?」
「なっ何だよそれ!納得いかないっっ」
ムキーッと憤慨する村雨を見て…黒い感情は姿を隠した。
ナツにいいようにあしらわれて遊ばれる村雨に…俺も口を挟んだ。
「…気の毒にな…」
「はぁっ?何がだよっっ」
「まだ気づかないのか…?」
「?」
「まぁ、わからないならいい…ナツ、いくぞ」
わざと…カインに通じる言葉を投げかけた俺に、彼女の視線がささる…。
『敦賀蓮』ではない今…いろんな箍が外れそうになっているのかもしれない。
頑なに守ってきたはずの秘密を危険に晒しても…
確実にアイツに牽制しておきたい自分がいた。
彼女の腰を引き寄せて、歩き出す俺に…彼女が訊いた。
「ちょっ…コーンどこ行くの?」
「コーン?…なんだよ、そのふざけた名前はっっ」
後ろから、ケンカ腰にそう言い放つ村雨に…足をとめた俺は、
振り返らずに応えた。声色をカインに変えて…
「…日本語的に発音するなら…クオン…それが俺の本当の名前だ。
ハリウッドに精通してるんなら…聞いたことあるんじゃないか?」
「なっ…なんだよ急に…まるでアイツみたいな…って…まさか?!」
「じゃあな…ムラサメ」
そう云うと、隣で聞いていた彼女が驚いた顔で固まってしまった。
俺は…そんな彼女の腰に力を入れてぎゅっと抱き寄せると…その場を後にした。
「ちょっ…待て?お前、今…名前…え?嘘だろ??おいっっ~~~」
背後から…村雨の叫ぶ声が聞こえる…
村雨が真実に辿り着くかどうかわからない…まぁ、バレたとしても社長がなんとかしてくれるだろう。
さて、放心状態の彼女に…俺は何から話せばいいかな …?
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