症例報告

2022(令和4)年8月8日(月)【浅所の潜水作業後の減圧障害の発症
事例】


【浅所の潜水作業後の減圧障害の発症事例】


1.事故発生日:2022年8月8日
2.事故者:24 歳 男性(既往症なし)定置漁業従事者
3.発生直後の症状:両上肢・下肢の痙攣、頭痛、嘔吐 等

4.発症までの経過:
 8日午前6時から水深5メートル位で網を張る作業を2時間程度行
、船に戻ろうとした際、呼吸困難となり8時頃、船に上がったとこ
ろ、意識が遠のき視野が狭くなる感覚、頭痛、嘔吐及び両上肢・下
肢の痙攣が発生した。

5.当日の対応
 定置漁業の代表者より漁協・消防へ連絡後、船上にて応急処置を
行い(酸素供給はなし)、9時20分、最寄りの漁港へ入港し、救
車にて近隣の救急指定病院へ搬送。病院到着後は自覚症状がかなり
改善されていた。

 その後、頭部・胸腹部CT、心電図でも明らかな疾患を特定できな
かったが、年齢に比し低酸素症を認め、経過より潜水病の疑いがあ
るため、高気圧酸素治療第一種装置のある近隣の病院へ救急搬送。


 そこでの診断の結果、潜水病であることが判明し、下肢に痺れが
あることから高気圧酸素治療第一種装置で1 時間半程度の治療を行
った。

6.発症の8 日後の聞き取り
・現在の症状としては右手の握力がない(右手7kg、左手35kg)、
拳を握ろうとするとムズムズする感覚がある。腕を伸ばした状態で
拳を握ると力が入らないが、曲げた状態であれば多少力は入る。

  右足が突っ張っているような感覚があり、足のふくらはぎに力を
入れようとするとムズムズする感覚がある。階段の上り下りをした
時に右足に力が入りづらく(力を入れてもすぐ抜けてしまう)、ふ
くらはぎが突っ張るような違和感がある。右は足首を前に出すと、
力が入らなくなる。

 右足で片足立ちをすると、最初は力が入るが、途中で力が抜けて
、ふくらはぎが攣りそうになる。足の指先は動きはするが、足の指
で物を掴む動作をしてもそこまで力が入らない。
 吐き気、眩暈、耳鳴り、顔面の違和感はない。残尿感や排泄での
違和感は、入院中、水分も取っていたが、1日4~5 回で、その時思
えば出方が悪かったかもしれないが、便は問題なし。

・治療開始からこれまでの経過については、高気圧酸素治療第一種
装置のある病院での高気圧酸素治療の期間は発症当日~7日間。1
目の治療前は足が攣っていて動かせない、倦怠感で体が重い等の症
状があったが、1回目の治療後には手足の痺れの症状が緩和され、
車いすで移動するのも苦痛ではなくなっていた。2回目の治療後は
頭の痛み等が消え、3回目以降は全身のだるさも無くなり、体の調
子も良くなっていったが右足の攣りは治らず。

・最初に救急車で運ばれた病院で脳と肺のMRI 検査はしている。少
し時間が経って医師からは、脳にも気泡はなくきれいな状態だった
ということを言われた。

・当日の発症までを振り返ると、水中に入ってからレギュレーター
をくわえて泳いでいる段階ですぐに息切れを起こしており、大きく
吸って吐いたりしたものの、途中で足に力が入らなくなり、意識が
朦朧としてきた。

 船上にも自力で上がったのか助けてもらったのかも曖昧なところ
で、上がってからは少し嘔吐し、右手→左手の痺れ、右足→左足の
震え、右足→左足の痺れ、右足→左足の攣りの順で症状がでた。

 船に上がってから救急車に乗る港へ入港するまではすぐに着いた
ような感覚であった。


 潜水作業は水深2~3メートルで行っていたが、同じ水深にいるわ
けではなく何回か上がったり、下がったりはしていた。 記憶がは
っきりしなかったが、網揚げまでの記憶はある。船に戻る時に徐々
に力が入らなくなったことは覚えている。網揚げ作業終了後、通常
であれば水面に浮いている状態で待っていて、約10分は待ってい
と思う。


 以上が、当日及び発症8日目のご本人等からの聞き取りの情報を
元に、作成したものとなります。

最後になりますが、今回の詳細な情報をご提供いただいた上で、こ
の情報を開示することをご了承いただいた、ご本人、ご本人の所属
する事業所の代表者、漁協の関係者の皆様に心より感謝申し上げま
す。