柿の木11月30日、「元気な食農倶楽部」主催により、奈良県五條市西吉野の「平井農園」さんで、柿もぎと干し柿作りの体験をさせていただきました。御世話いただいたのは、平井農園の平井満男さん、久美さんご夫婦と、ご両親、息子さんの御一家です。今年はもう柿の収穫作業は終わっているのですが、私たちの体験のために、平井農園さんでは、わざわざ大切に柿の実をおいていてくださいました。

11月の終わりにもなると、収穫後柿の樹の葉は落ちてしまうもので、山の斜面のある柿の樹々はみな葉が落ちて、残った柿の実がちらほらついている風景が続いているのですが、平井農園さんの果樹園の中で、私たちのためにも残しておいてくださった柿の木には葉がたくさんついていました。

「この樹は、みなさんにもいでいただこうと、実を残していました。柿の木は、葉っぱが光合成することで、養分を作ります。実を収穫した後は、役割を終えて葉っぱは落ちてしまうのですが、この樹の葉っぱは、こんな遅い時期まで、がんばって役割を果たしていたんです。柿の樹にも『がんばらなあかん』と意思をもっているんやなと感じます」と満男さん。

私たちが学ぶために、生業とされている柿を提供してくださった平井農園さん御一家の一員として、精一杯力を発揮してくれた柿の葉がとてもけなげだなと、感謝の気持ちで一杯になりました。


満男んさや満男さんのお父様にご指導いただきながら、一人20個も柿をもぎました。私は、樹になる果物を収穫するのは初体験。ヘタのところに親指をつけて、逆手にしてくるりと回すと、あらあらーっと、簡単にもぐことができます。あっと言う間に20個ゲット!

帰り道を歩きながら、満男さんに剪定の仕方等を教えていただきました。枝の節々が1年の成長になり、今年実のできた枝はもう実がならないので、根まで養分が回るように、来年また枝が伸びることをきちんと見極めて剪定されます。農家さんは、植物の生態を理解し、また毎年異なる気候条件も計算されて栽培されているんですね。

またどこまでも平坦な地形ではなく、山の斜面にそって栽培されているだけに、慣れているとはいえ、効率化を図るなんてことはできません。なにもかもが手作業です。近隣に野生のように剪定せずに実をつけているところもあったのですが、樹が高く成長して実も多ければ養分の分配も少なくなるわけで、おいしい柿に育てる=「栽培」する知恵や技術の重みを垣間見たように思います。

おにぎりお昼には、農家らしいお昼ご飯をと、ご用意いただいた食事をいただきました。奈良らしく、満男さんのお母様手づくりの柿の葉寿司と、おにぎり、お手製の御漬け物、そしてお母様が丹精された畑の野菜がたっぷり入った暖かい豚汁。おいしいワインなどもご用意いただいて、すっかり寛いでしまいました。

柿の葉ずし柿の葉ずしは、普通青い葉でまいていますが、このように紅葉した柿の葉でまくとまた風情がありますね。山に囲まれているので、昔は塩鯖や塩鮭ばかりで、こちらでもお寿司には塩鮭が使われていました。本当の柿の葉寿司はこんなお味だったんだろうと思います。空気を抜くように、ギュッとしめた感じがまたおいしいです。

平井夫婦食後は、満男さんや久美さんから柿や農家さんのお話を伺いました。平井農園さんを初めとする西吉野の生産地では、熟し具合など出荷する頃合いをたいへん緻密に管理されているそうです。大量に生産し販売するやり方では、なかなかそこまでの管理はできないものもあり、味わいに差が出ます。満男さんは、健康にもよいと言われる栄養素が豊富な果物、しかもおいしくて品質のよいものを、高価な贈答品としてではなく、毎日の食卓にのせて楽しんでもらいたい、それが農家の喜びであり、願いだとおっしゃいます。

けれどもこのように手をかけて、できるだけおいしい状態で食べてほしいとがんばっている生産者さんも、その値段を自分たちで決められないのが、今の日本の現状です。消費の仕方は、いろいろあるので、大きな流通を通すことも必要なのでしょうが、できるならこうして作り手の思いが肌で感じられるものを、正統な対価をお支払いして、大切にむだなくいただく。そんな消費者になりたいなと思います。

さて、食後は、干し柿体験に続きます。

柿と梨の平井農園