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crazy moon

拙い小説家です。
主に気象系様のパロディ小説を書かせていただいております。


よろしくお願いします。

冷たい地下室の奥。
閉ざされて何もない部屋で水音だけが響いている。

「うぁぁぁぁ!」

突然悲鳴を上げる白い服を着た男。
そのまま気を失ったように動かなくなった。

…彼をそっとベッドに横たえさせる。

まるで牢獄のようだ。
あの方は何を考えていらっしゃるのだろうか。



彼を生かしているのも、またここで彼を殺しているのも、あの方の意志なのだ。


全く同じ顔をした異母兄弟が、このように歪んだ関係を続けていることに、私は顔を顰めた。


考え事をしていると無機質な電子音が地下室に響く。
燕尾服の内ポケットから鳴り響く携帯電話を取り出す。

「はい。…はい。解りました、すぐにお迎えにあがります。荒野様」

…電話を切ると眠っている彼を振り返る。
眦から一筋の雫を流していた。


「…この影山の力不足で申し訳御座いません、悟様」


雫を拭うとその場所を後にする。
何も出来ない自分が腹立たしかった。



車を運転しながら葉巻を取り出し火を付ける。
煙を燻らせながら物思いに耽る。


と、その時、ある方を思い出した。
自身が面通しを願った所で会えるとは思えないし、危ない橋を渡ることにもなりかねないが、あの方を頼る価値はあるだろう。



明日伺って見ることに決め、葉巻を消すと荒野様に指定された場所に向かった。


特徴的な歩き方の彼を遠目に確認すると車を降りてドアを開く。

「どうぞ。」


「ああ。…家に向かってくれ」

寝るから、と呟くと寝息を立て始めた。



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車で彼の自宅まで送り届けると、ある家に電話をかけた。


[はい、磯貝で御座います。]


相手の電話の主は同じ執事の磯貝翁だ。


「影山で御座います」

そうこちらも名乗ると

[やっとお電話頂けましたか…影山殿。]

朗らかに、然し何処かに咎める様な口調で告げる磯貝翁。

[判っておりますよ。“彼等”の件で旦那様への面通りで御座いますよね。]

何も言わずに全ての物事を見通していらっしゃる御方だ。

「…作用で御座います。磯貝殿」

翁はやはり、と朗らかに笑い、

[では、旦那様には伝えておきます故、“彼等”には気付かれぬように]

と釘を差して、通話を切ってしまった。


明日、何も起こらぬことを祈りながら携帯電話を仕舞うと懐中時計で時刻を確認して溜息を付いた。


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翌朝。
荒野様を学校まで送り届けると、とある家に向かった。


豪邸だと毎度思う。
自動扉を潜り抜け玄関に着くと磯貝翁が出迎えて下さった。


「よく来たな、影山」

荒野様や悟様とよく似た顔立ちの和装姿の男性が此方に気づくと声を掛けて下さる。
私は頭を下げ、黙って彼の次の言葉を待つ。


「そんな硬い表情をするな、影山」


彼は面白可笑しいと言うように一頻り笑うと、急に真剣な顔をして問い掛けてきた。


「“彼”の様子はどうだ」

「…芳しく御座いません。発狂する日々が続いております」


…あの様な部屋に閉じ込められれば発狂しても可笑しくないだろう。

我乍ら酷い事をしていると思う。
だが…

「…主人の命とあらば逆らう訳にもいかんだろう」

目の前の彼に苦笑され乍も真実を告げられる。
執事の宿命なのだ。
主人の命とあらば何でもするのが執事だ。

「託也様。どうなさいますか?」

磯貝翁は主人に問い掛ける。

御村家当主はスッと表情を冷徹なものに変え冷たく言い放った。


その命を受け、私は頭を下げ座敷から下がる。
主人は荒野様だが、真の主人は御村様なのだ。
単に派遣されているに過ぎない一介の執事である自身が御村様の直々の命を断る謂れもない。



車を運転し、彼が閉じ込められている彼の元に向かった。



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「うあっ…っ…うぁぁぁぁ!」

発狂している彼を見て主人の命が正しい事を思い知る。


「悟様。失礼致します。御無礼お許し下さいませ」


そう言って彼の後頭部に手刀を落とすと気を失った彼を背負い元来た道を引き返した。




…荒野様へのメッセージを残して。









ツヅク…