8月某日、朝。

 

キッチンに1人で立つ松潤。

 

そしてその手元にはグツグツと煮え滾る鍋。

 

 

「フフッ、フフフフッ」

 

 

松潤が鍋の中をかき混ぜながら、笑っている・・・。

 

 

 

 

 

俺がいるのはキッチンが見えるリビング。

 

今回は危ないから入ってくるなとキッチンの出入り禁になった俺。

 

本当は側にいたいけど、キッチンにいても役に立たないのはわかりきったことなので仕方なくリビングにいる。

 

松潤からは戻ってくるまでテレビを観て待つよう言われたけど・・。

 

でも画面には何で●ィズニーが流れているんだ?

 

これDVDだろ。

 

俺への松潤セレクトがこれ・・・。

 

何だろう、何か伝えたいことがこのなかにあるのか?

 

俺は画面を凝視する。

 

テレビ画面の中では、魔女が煮えた壺の中に主人公を捕まえて入れようとしている。

 

・・・まさか松潤も同じことを!?

 

くっ、なんて馬鹿なことを!!!

 

俺は電子機器だから旨味なんてほとんど出ないはずだ!!

 

しかし持ち主が望むならダシになるべきか?

 

煮えたぎっているから風呂感覚じゃないしな・・・。

 

でも松潤が望むなら・・・。

 

どうしたらいいのかグルグルと頭を悩ませる。

 

 

「翔さーん」

 

 

そこへ松潤から声がかかる。

 

 

「うぇい!!??」

 

 

考え込んでいたところだったから吃驚して変な返事をしてしまった。

 

口から心臓が出るかと思った!!

 

ちょードキドキしている。

 

そんな俺に松潤はテレビに集中していたと思ったようで

 

 

「ごめんね、テレビに集中してた?

いいところを邪魔しちゃったかな」

 

 

と謝ってきた。

 

テレビではいつの間にか違う話に変わっていてヒロインとヒーローがイチャつくシーンになっている。

 

●ィズニーアニメのイチャコラシーンを真剣に観ていたと思われたようだ。

 

いやいやいや、俺はそういう趣味の男ではない。

 

 

「ち、違っっっ」

 

 

焦って訂正しようとするが、まさか“出汁になろうか悩んでました”なんて言えるはずもない。