私の故郷は新潟県加茂市、歴史や地形も似てることから昔から越後の小京都と言われてきた。

 

・加茂川の流るる越後加茂村に生(あ)れにし吾は長明を恋う

 

学生時代の夏休み、最初の帰省で田舎に帰った時、理系の私は何故か苦手だった高校の古文・漢文の教科書を開いた。そのとき目にとまったのが「方丈記」「土佐日記」そして「江南の春」だった。私は一夏でそれらを暗記し、以来ずっと心に残している。

 

 

・柿の木に4尺背丈の幼き日こぶを足場に4尺のぼる

 

縁側から裏庭を観るといつもすぐ目にとまるのが柿の木だった。幼い頃、秋に葉が落ちたその木のこぶに足をかけ登りついた・・・自分の背丈までが精いっぱいだった。

 

 

・豪雪の留守まもる子ら愛おしく四駅歩きて屋根登る父

 

今は少なくなったが、昔は一階の屋根が埋もれるほどの雪が降った。屋根から雪を下ろすと言うよりは更に高く積み上げるのだ。父と母は仕事の関係で30キロほど離れた新潟市内に住んでいた。豪雪の年、山沿いの方は電車もバスも不通になった。父は4駅分を歩いて家に着くとそのまま屋根に上がって雪かきを始めた・・・うれしくて頼もしかった。